29 正式に婚約者が決まって
子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ
皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル
公爵 /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン
伯爵 /攻略対象 リュカ・モンパルナス
伯爵 /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ
伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー
皇太子妃候補 アリアナ・エグランティーヌ
あんなことがあった次の日だというのに、アリアナは聖女のように微笑んでいた。
「そんな…私なんか、たいしたことありません」
そう言って謙遜している。
実は、多重人格者か、そっくりの双子でもいて入れ替わってるんじゃないか。
そう思わせる変わりっぷりだ。
アリアナが言ったとおり、子爵令嬢ごときが何を言っても何かが変わることはない。
ただ1つだけ、公表されたことがあった。
王家が、アルフレッドの婚約者として、正式にアリアナを指名したのだ。
隣国はそれを受け入れた。
こうして、アリアナは通例よりもかなり早く、アルフレッドの正式な婚約者となった。
皇太子妃の地位を狙っていたクロエはお怒りである。
そのうえ、ジークハルトの婚約者候補に、クロエの名前があがった。
「っ!あの女より下なのが気に入らないっ゛!」
クロエがそう言って、さらに怒っている。
あの女というのは言うまでもなく、アリアナのことだろう。
私が知っているストーリーと詳細は少し違うけど、大きな流れは同じように進んでいた。
アリアナはアルフレッドルートに入ったんだ。
このあと、私が知っているゲームのストーリーならば、ジークハルトは闇落ちする。
そうして、クロエとともに王家滅亡を画策する。
優しいジークハルトがそんなことするとは思えないけど、クロエはやりそう。
クロエがジークハルトを巻き込んでしまったら、ジークハルトは処刑されてしまう。
それだけは阻止しないと。
なんとか、ジークハルトが闇落ちしないようにするしかない。
ただ、困ったことに、どうして闇落ちするのか思い出せない。
ストーリーがゲームのままなら、ジークハルトはアリアナに恋心をいだいていて。
アリアナをアルフレッドに取られちゃったから、闇落ち、ということなんだろうけど。
現在、ジークハルトがアリアナに恋をする要素が全くない。
奴隷扱いされて、顔色が悪くなるまでこき使われている。
アリアナへの怒りで闇落ちするんだろうか…
そうであるのだとしたら、ジークハルトが闇落ちしないためには、アリアナへの怒りを和らげるのが急務だ。
どうしたらいいか考える。
考えたけど…1つしか思いつかない。
本当はとても嫌だけど、これもジークハルトの幸せのためと、怒りを飲み込むことにした。
教室で生徒に囲まれるアリアナのところに行く。
ここなら、裏の顔は出せないはず。
「…あら、ニーナさん。どうしたんですか?」
そう言ったアリアナの眉がピクピクしている。
「…この間、少しキツイことを言ってしまったので謝りたくて」
私がそう言うと「そんな、気にしていませんわ」と微笑んで私の手を握る。
…痛い。
思いっきり爪を立てて、握られている。
「それで私、改心いたしましたの。だからこれからは、アリアナさんの侍女の代わりみたいにお傍にいさせてもらえないかなって思って」
そう言って、アリアナの手を握り返した。
アリアナが少し驚いた顔をする。
ジークハルトをアリアナへの怒りで闇落ちさせない方法。
それは、アリアナの我儘を私が代わりに引き受けること。
それしか思いつかなかった。




