28 不敬罪上等!?
子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ
皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル
公爵 /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン
皇太子妃候補 アリアナ・エグランティーヌ
「はあ?あんた、誰に向かって口きいてるか、わかってるの?」
「隣国の、第三王女様ですよね。言っておきますが私、ただの子爵令嬢なので。権力とかよくわかんないんです。ごめんなさい」
売られた喧嘩は、全力で買う主義だ。
「私は子爵令嬢ですが、こちらは公爵令息、わが国では王族の次に高い地位の方ですよ?その方に向かって、トロイなんて、ヒドイじゃありませんかっ!」
私の推しへの罵倒、謝れ、クソ王女。
とは言えないので、頑張って言葉を修正した。
「は?こんなちっぽけな国の公爵令息なんて、わが国の男爵以下、平民以下よっ!」
アリアナが、またまたヒドイことを言っている。
「そんなちっぽけな国の、皇太子妃候補なんですよね?」
「そうよ!第三王女だからって、こんなちっぽけな国に、嫁入りさせられるの。私の身にもなりなさいよっ!」
そう言ってまた、肩を押される。
どうやらアリアナは、望んでこの国に来たわけではないようだ。
「歓迎されるかと思ったら、婚約者には邪見にされるし、他の男どもも、全然私の言うこと聞いてくれないし。ほんっと、こんな国、最低っ!」
そう言って喚いている。
「婚約者って…?」
「アルフレッド殿下に決まってるでしょ?婚約者候補なんてウソ。初めから、私一択。出来レースなの」
そう言ってアリアナは笑った。
「でも、こいつも気に入ったから、私の愛人にしてあげる。なんとかっていう家の伯爵令嬢と結婚させて、私に仕えてもらえばいいんだから」
アリアナがそう言って、ジークハルトの頭を撫でている。
クロエが言っていたのは、本当だったということか。
「気に入ったって…好きになったってことですか?」
アルフレッドに愛されないから、他のところで愛を見つけたい。
そういうことなんだろうかと尋ねてみた。
「は?奴隷のこと、好きになる主人なんているの?」
アリアナにそう言われて、手が出そうになった。
自分の右手を左手で掴む。
相手は王族。
さすがに、暴力はいけない。
悔しくて悔しくて、涙が溢れる。
私の推しを、大切な人を、奴隷呼ばわりするなんて。
「…て、撤回してください」
怒りで声が震える。
「撤回?何を?」
アリアナが鼻で笑っている。
「我が国を馬鹿にしたことも、ジークハルト様を馬鹿にしてことも、全部ですっ」
そう言って叫んだら、アリアナに頬を叩かれた。
「するわけないでしょ。あなた、不敬罪で訴えるわよ?」
そう言われて唇を噛んだ。
しばらく睨みつけられていたけど、アリアナがふっと笑う。
「まあ、所詮、子爵令嬢ごときよね…勝手に吠えてればいいわ。彼は、私がもらってあげるから」
そう言って、ジークハルトの腕を掴んだ。
ジークハルトは私を見て、困っている顔をして「ごめん」と小さな声で私に言った。
腐っても、皇太子妃候補で隣国の王女。
そりゃあ、何も言えないよね。
そして私も、引きづられるように連れていかれるジークハルトを見送ることしかできなかった。




