27 小川のほとりで
子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ
皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル
公爵 /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン
伯爵 /攻略対象 リュカ・モンパルナス
伯爵 /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ
伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー
皇太子妃候補 アリアナ・エグランティーヌ
ジークハルトにつられて空を見上げた。
雨は降ってない。
「雨は…」
そこまで言って、戸惑う。
「傷が痛くて」
ジークハルトの顔色がとてもよくない。
「いったん、座りましょうか…あ、お水、持ってきてますか?」
糖分が足りてない?塩分か?
ジークハルトを座らせて、カバンに何か入ってないか探してみる。
と、手をとられた。
ジークハルトが私の手を顔の傷に当てる。
もしかしたら、本当に傷が痛むのかもしれない。
そっと撫でてみた。
「撫でると…和らぐんですよね」
何かを話していないと、変な気を起こしてしまいそうで。
もうランチは食べましたかとか、他の素材は集まりましたかとか。
聞かなくていいことを聞いてしまう。
顔色の悪いジークハルトが、私を抱きしめた。
どうしたんだろう。
もしかして、座ってるのもつらくなったんだろうか。
寝かせる?
ここで、寝かせる?
「だ、大丈夫ですか?ジークハルト様?…体、ツライですか?…あの、よかったら上着敷くんで、ここに横になって…」
私が上着を脱ごうとしてゴソゴソしていたら、ジークハルトと目が合った。
ツラそうな顔をして、どうしたんだろう?
「…今日は、早退されたほうがいいのではないですか?」
私がそう言うと、ジークハルトが「そうだね」と苦しそうに笑った。
「もう少しだけ、このままでいさせてくれる?公爵令息が弱ってるとこ、見られたくない」
ジークハルトがそう言って私に抱きついた。
「公爵令息が弱ってるところを見せても、人気が出るだけですよ。心配いりません」
そう言って、背中を擦ってみた。
少しでも体が楽になってくれるといいんだけど。
しばらくすると、私に抱きついていたジークハルトから寝息が聞こえてきた。
…疲れてたんだな。
どれくらいそうしていたのか、幸せな時間はあっという間に過ぎる。
「…ジークハルト様、そろそろ戻らないと。先生が心配しますから」
そう言うと、ジークハルトが瞼をパチパチとさせた。
「あ…俺、寝てた?」
目をこすりながらジークハルトが私から体をはなす。
「護衛のお役目でお疲れだったんですね。ぐっすりでしたよ」
そう言ってくすくすと笑うと、ジークハルトが真っ赤になった。
推し、可愛い。
「では、戻りましょうか」
私がそう言って立ち上がると、またジークハルトに抱きしめられた。
このまま、時間が止まればいいのに。
「…大丈夫ですか?ふらつくようなら、どなたか呼んできましょうか?」
そう言った私の問いに、ジークハルトからの返事がない。
本当なら、ちゃんと距離を置いてはなさなければいけない人なのに。
私から拒絶できない。
困っていると、少し先で声がした。
「あなたたち!何をしてるのっ!」
そう怒りながらこちらに歩いてくるのは、アリアナだった。
教室でのニコニコ顔ではなく、鬼の形相になってる。
「何してるの!いつまで私を待たせるの?光の花の1つくらい、とっとと摘んで、戻って来なさいよ!」
そう言って、ジークハルトを叩いた。
「え?ア、アリアナさん?」
暴力振るった?
今、男性相手にこの人、暴力振るいました?
「あんたも、何、人の男にチョッカイ出してるのよっ」
そう言って、アリアナが私の肩を押した。
今、『人の男』って言いました?
人の男って、ジークハルトのこと?
「あ…すみません。光の花は摘みましたから、戻りましょう」
ジークハルトがアリアナをなだめている。
「あんたがトロイから、私がここまでくることになったのよ?」
ジークハルトは謝ってるのに、アリアナはずっと怒っていた。
『相手は、隣国といえど、王族だよ?』と私に注意をしてくれたアルフレッドの顔が浮かぶ。
わかってるよ、相手は王族だもん。
我慢するところだよね。
でもね、私の推しがヒドイ扱いうけてるんだよ。
顔色が悪くなるまで、我儘に付き合わされてるんだよ。
どうして、我慢できようか。
「お待ちください、アリアナさん。その言い方は、あまりにもヒドイのではないですか?」
プチンっと切れた。




