26 2回目の校外学習
子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ
皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル
公爵 /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン
伯爵 /攻略対象 リュカ・モンパルナス
伯爵 /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ
伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー
皇太子妃候補 アリアナ・エグランティーヌ
「さすが、アリアナさんですね。私たちも見習わないと」
アリアナの周りに生徒たちが集まっている。
「そんな…私は当然のことをしただけですから」
裏では我儘しほうだいの王女様だけど、学園のみんなからの評価は高い。
アリアナのことはどうでもいい。
その隣で、疲れた顔をしているジークハルトが気になる。
「まあ!教室を自分のものだと思ってるのかしら!」
クロエが生徒たちをかき分けるようにアリアナの前に行く。
「アルフレッド様も、お困りですよね?」
そう言って、クロエがアルフレッドを見た。
うん、悪役令嬢してる。
すっかり、『禁断のロイヤル・アカデミー ~裏切りの王子たち~』の世界になっていた。
つまり私は、モブオフモブ。
アルフレッドとクロエが何かを話して、アリアナが困った顔をして、周りの生徒がアリアナに同情している。
リュカとオスカーは我関せずという顔をしていた。
興奮するクロエを、ジークハルトがなだめているようだ。
…どこまで人がいいんだろう。
こんなことがたびたびあって、ヒロインのアリアナ、悪役令嬢のクロエという印象が強くなっていった。
そんなことをしているうちに、校外学習の時期になる。
校外学習のジークハルトのグループは、アルフレッドとアリアナ、そしてクロエ。
私はモブグループに入っていた。
どこまでいっても、ジークハルトと接点がない。
そりゃそうだ。
モブと攻略対象だもん。
「ニーナさん、ここからは別行動にしましょうか?」
モブ令嬢さんに言われて「そうですね」と答えた。
誰も私たちのチームに期待してないし、誰からも気にかけてもらってない。
だから、薬草や聖水だけ無理せず集めようということになり、バラバラで素材を探すことにした。
きょろきょろとあたりを見たけど、ジークハルトのグループはいなかった。
彼らは学園でも注目されてるグループだし。
きっと光の花を探しにいったんだろう。
去年、ジークハルトと見た光の花、ちゃんと増えたかな。
少しだけ見てこようと思って、記憶を頼りにその場所に行ってみた。
1度来たことがある場所だしきっと行けるだろう。
そんな甘い考えできてしまったけど、たどり着けるものだ。
小川のほとりに、光の花が咲いていた。
一面の花畑、というわけではなかったけど、去年より増えてる。
「よかった。たくさん…種?が、落ちたのかな」
植物のことはよくわからないけど、これだけ増えたのなら、ジークハルトが摘まなかったのは正解だったということだろう。
ジークハルトの優しさが増えたような気がして、ほっこりした。
「あ…、ニーナ嬢」
そう声がして、慌てて振り返る。
この声を聞き間違えるわけがない。
「あ、ジークハルト様…その…ごきげんよう」
なんとなく気まずい。
「光の花、増えましたね…で、では」
何を話していいかわからなくて、そう言って立ち去ろうとした。
「これって…」
私が1歩踏み出すと、ジークハルトに話しかけられた。
「これって、摘んでも大丈夫かな?」
ジークハルトが私の腕を掴んでいる。
「え…っと、どうでしょう?…」
何を尋ねられているのかわからない。
「あ…その。アリアナ嬢が、どうしても光の花が欲しいっていうから。この場所のことを思い出したんだけど。1輪くらいなら摘んでも、大丈夫かな。来年も、咲いてくれたらいいなって、思って」
ジークハルトがそう言って頭を掻く。
傷を隠そうとするクセ、治ってないんだ。
「大丈夫ですよ。去年、我慢した分、1輪だけ、わけていただきましょう」
そう言って微笑んでみた。
しばらく見つけ合って、ハっとした。
こんなところを誰かに見られたら大変だ。
「ジークハルト様、早く、お役目に戻られないと。アリアナさんも心配されますよ」
そう伝えると、ジークハルトの顔が曇った。
そんな顔、しないでほしいのに。
ジークハルトには笑っていてほしい。
「アリアナさんと…何か、ありましたか?」
恐る恐る、尋ねてみる。
ゲームでジークハルトルートに入っているなら、そろそろアリアナといい雰囲気になっているはずだ。
「よくわからないんだけど…夜の散歩に誘われる」
そう言って、ジークハルトが私の腕を掴む手に力をいれた。
少し痛い…
「なんだか、嫌なんだ。その…王女にこんなこと言うのは変だけど。言い寄ってくるご令嬢に似ていて…」
ジークハルトが言葉を選んでいる。
「そうなんですね。アリアナさんと、しっかりお話されてみてはいかがでしょう?お互い、誤解をしているところがあるのかもしれません」
アリアナがどのルートに入っているのかわからないけど、ジークハルトに言い寄ってるのが本当なら、ジークハルトルートの可能性もある。
「…雨が」
ジークハルトがぼそっと呟く。
「雨が、降ってる」
そう言って空を見た。




