25 わがまま王女様とジーク
子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ
皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル
公爵 /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン
伯爵 /攻略対象 リュカ・モンパルナス
伯爵 /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ
伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー
皇太子妃候補 アリアナ・エグランティーヌ
「ちょっと!あなた、これでいいの?」
そう話しかけられて、驚いて振り向く。
「あ…クロエ様。ごきげんよう…」
失恋したばかりの私は、悪役令嬢と話しをする気分じゃない。
「あなた、ジークハルト様をとられて、それでいいの?…どういうことなのよ。このままいけば、私がアルフレッド様の婚約者になるはずだったのに!」
クロエがそう言って地団駄を踏んでいる。
長々と話しを聞かされたけど、まとめるとアリアナの登場で、アルフレッドの婚約者の座が危うくなったということらしい。
アリアナ・エグランティーヌは、我が国の隣にある大国の第三王女らしい。
大国の王女との婚約は、わが国にとってメリットが多い。
それで、クロエが焦っているというわけだ。
「今日だって、アルフレッド様にべたべたしちゃって。ジークハルト様やリュカ様、オスカー様にもちょっかいを出しているのよ!」
クロエはご立腹だ。
ちょっかいを出すというか、ただ、おしゃべりをしているだけだったように見えたけど。
まあ、モブの私には関係がない。
「あなたが怒らないのが不思議で仕方ないわ?!」
クロエがそう言ってぷりぷり怒っている。
「あの、第三王女。アルフレッド様と結婚したら、ジークハルト様も囲う気なのよ?そのために、この私を、ジークハルト様の婚約者にするって話まで出てるんだから!」
そう言われて、ピクリと体が反応した。
「…ジークハルト様を囲うって、どういう意味ですか?」
クロエの言った意味がわからない。
「そのままよ。いい男をはべらせたいんですって。…あ、これ本当は話してはいけないって言われてることだから、他の人には内密にね」
あの聖女みたいなアリアナが、ジークハルト様を、はべらせたい?
クロエがなにか、勘違いをしているんじゃないだろうか。
そう思いながら、その場をあとにする。
なぜなら、話は聞けるけど、子爵令嬢ごときが何かをできるわけじゃない。
なにもできないけど、ジークハルトのことが気になって、ついつい目で追ってしまうようになった。
こっそりと中庭に行ってみたり、授業中もチラチラみてしまう。
アリアナはやっぱり、清楚で可愛い気がする。
攻略対象をはべらせたいと思っているようにはみえない。
ただ、ジークハルトは少し疲れているように見えた。
どうしたんだろう?
いつものように、中庭でウトウトしているジークハルトを遠くからこっそりと見る。
「…ストーカー復活だね」
後ろから声をかけられて、びくっとした。
「ア…アルフレッド様っ…ど、どうも」
ジークハルトとお別れをしてから、アルフレッドとも話す機会がなくなって。
お久しぶりな感じがして気まずい。
「疲れてるんだよ、ジーク。あの王女様、かなり我儘でね。彼が特に振り回されてるんだよ」
アルフレッドにそう言われて、首を傾げる。
「みんながいるところと、いないところでね、別人みたいなんだよね、彼女」
そう教えてもらった。
アルフレッドはもちろん、リュカやオスカーが相手にしないから、アリアナはジークハルトに我儘を言うらしい。
ジークハルトは優しいから…
「ごめんね。僕が王女様との婚約を断ることができればいいんだけど。大国との繋がりを切ることができなくてね」
アルフレッドがそう言った。
好意のあるなしじゃなくて、国の利益を考えないといけないんだな。
キラキラ皇太子はキラキラ皇太子で大変なんだろう。
そんな話をしていると、パタパタとアリアナがジークハルトに駆け寄ってきた。
「ジークハルト!何、寝てるの?早く、私のランチの準備をしてよっ!」
そう言って、ジークハルトを叩き起こしている。
通常なら侍女のやるお仕事なのだけれど、学園には連れてこれないから、誰かにやらせているんだろう。
それが、優しいジークハルトになったというところか。
一言、言ってやろうと思ったけど、アルフレッドに腕を掴まれて止められた。
「君も知ってるよね。学園内で爵位は関係ない、なんて、幻想。どこまでも階級制度なの。相手は、隣国といえど、王族だよ?」
そう言われて、唇を噛んだ。




