22 アルとジークとヤキモチ
子爵令嬢 ニーナ・ヴァロワ
皇太子 アルフレッド・クロムウェル
公爵 ジークハルト・ベルシュタイン
サロンでみんなに付き合ってる宣言をしてしまった次の日。
ジークハルトは髪型を変えた。
顔の傷を隠すように伸ばされた前髪が切られて、すっきりとした。
「…かっこいい」
神絵師様たちが「ジークハルトが髪型を変えたら」というお題で、今のジークハルトと同じような髪型の絵を描いてくださったことはあるけど。
実物の破壊力は半端ない。
だが、想定外の事態にもなった。
いままで、もっさりとしていたジークハルトが小綺麗になって、ファンが増えたのだ。
公爵という高爵位で、イケメン。
ほかっておくはずがないのはわかる。
でも、ひとこと言わせてほしい。
これまで、『極悪人のジーク』て言ってたの、どこのどいつだよ。
手のひら返しとは、まさにこのことだなと実感した。
人気者になったジークハルトは、なんだか、近寄りがたくなってしまった。
一応、恋人だし。
ジークハルトは優しいから私に気を遣ってくれるけど。
女子たちの視線が痛い。
子爵令嬢ごときが、公爵令息と付き合うなんて…という視線。
直接、言われることはないけどね。
まあ、おっしゃる通りですわ。
「なに?また、ストーカーにもどったの?」
物陰からジークハルトを観察していたら、後ろからアルフレッドに声を掛けられた。
「…観察してるだけです。推しの生体を観察するのは趣味なので」
「推し?」
アルフレッドが私の言葉に反応した。
「ジークハルト様が、伯爵令嬢様とお話中なので、お話が終わるの、待ってるんですよ」
推しの説明をするのが面倒だったから、そう伝えた。
学園内では、爵位は気にしないこと。
そう言われているけど、実際は学園内であろうが爵位制度は生きている。
学園から1歩でも外にでれば、爵位制度があるんだもの。
学園内だからって、なんでもかんでも無礼講というわけにはいかないのだ。
公爵子息と伯爵令嬢は、私よりずっと爵位は上。
その2人の会話を邪魔するなんてできない。
「しかたないな…」
アルフレッドが私の手を引っ張った。
なにするんだ、と思っていたら、アルフレッドが「おーい」とジークハルトに声を掛けた。
「ジーク!いつまで話してるの?早く、ランチに行こうよ~」
そう言って手を振っている。
ランチ?…なんの話?
おどおどしていると、ジークハルトが伯爵令嬢に何かを言って、こちらに小走りで走ってきた。
「…ありがとう、アル」
ジークハルトがそう言って苦笑いしている。
ん?
「今、アル…愛称で呼ばれました?」
いつの間に、そんなに仲良くなってたの?
「うん。ジーク、アル、と呼び合う仲だよ。僕たちのほうが、ラブラブじゃない?」
アルフレッドがそう言って、ジークハルトと肩を組む。
素直に羨ましいぞ、キラキラ皇太子。
でも、そうか。
2人、子どもの頃みたいに、仲良しに戻ったんだ。
「よかったですね。ジークハルト様みたいな素敵な親友ができて」
私がそう言うと、アルフレッドが「まあね」と言う。
「…どうして、アルとニーナ嬢は、そんなに仲がいいんだよ。ニーナ嬢は、お、俺の恋人なのっ」
ジークハルトがそう言って、私の手を握った。
決して、キラキラ皇太子と仲がいいわけじゃない。
相変わらず、嫌いじゃないけど苦手。
でもこれって、ヤキモチだよね。
私、推しにヤキモチ焼いてもらってます。




