表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ令嬢に転生したので推し活していたら極悪令嬢に昇格しちゃいました  作者: 西園寺百合子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/50

02 席決めのイベントにて

子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ

皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル

公爵  /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン

伯爵  /攻略対象 リュカ・モンパルナス

伯爵  /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ

伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー

男爵令嬢/ヒロイン アリアナ・ロゼ

「はい、は~い。席を決めるから、くじを引いていってね」

教師が軽やかに箱を掲げ、生徒たちが次々と前へ進み出る。


信じられないことに、くじで席を決められる。

攻略対象との距離を左右する重要イベントが、なんとも運任せである。

ここはゲームでいうと、ガチャポイントなのだ。

アイテムを持っていれば不思議なことに、好きなキャラクターの隣になれる。

隣にならなくてもいいのだが、隣になったほうが好感度が上がりやすく、イベントが増えるという特典があった。


モブの私にはそんなラッキーアイテムはないが、ヒロインであるアリアナなら使えるはず。

さて、どうするんだろう。

期待と好奇心で胸を膨らませながら、そっと様子をうかがう。

チラチラっとアリアナを見ていたが、アイテムを使う様子はない。

運で行くのか。


アリアナを気にしながら、私もくじを引く。

なんと、後ろの端っこの席だった。

しかも窓際。

超ラッキーな席。

差し込む光、外の景色、そしてなにより目立たないポジション。

後ろからだったら、ジークハルトの姿、見放題じゃん。

推し観察席として完璧すぎる。

うっきうきとしていたら、なんと、隣の席がジークハルトだった。

超超ラッキー席だ。


じゃなくて。

近い。近すぎる。

アリアナを見ると、なんと、モブ男の隣の席だった。

くじ運、悪すぎだろ…

せめて、リュカかオスカーの隣になっててよ。

そう思ったけど、ジークハルトを幸せにしようの会、会長としては、黙っていられない。

ここで動かねば会長失格である。


「あの!先生!席を代わってほしいです!前の人の背が高くて黒板が見えません!」

勢いよく手を挙げ、教室中の注目を浴びながら立ち上がる。

前の方にいるアリアナと席を代わってほしいとお願いした。

我ながら自然な理由。

天才。


ジークハルトより前の席になるのは残念だけど。

これで、ジークハルトとアリアナがお隣同士。

完璧な推し活サポート計画である。

褒めてほしくてジークハルトを見ると、不思議な顔をしていた。

「…前の奴のせいで黒板見えないなら、俺が代わってやろうか?」

低く落ち着いた声が飛んできて固まる。

それでは意味がないのだよ、ジークハルトくん。


推し本人の優しさが、私の計画を壊す。

「そうね。それがいいわ」と先生が言って、終わってしまった。

「あ、なんか俺、余計なこと言った?」

がっくり肩を落とす私に、ジークハルトがそう言った。

少し気まずそうに眉を寄せるその姿すら尊い。

うん、言った。


「いえ。席を代わっていただいてありがとうございます」

そんなこと言えないから笑顔で答える。

お隣なんて、超ハッピーなのに、素直に喜べない。

推しが近い幸福と、計画失敗の悲しみが複雑に交差する。


むしろ、アリアナから席を遠ざけてしまって。

私のおばかさん…

そんなことを思っていたら、お昼休みになった。

鐘の音が鳴り、生徒たちが一斉に立ち上がる。

みんな、食堂に行ったり、外に食べに行ったりとパラパラと散っていく。

賑やかだった教室が少しずつ静かになっていった。


私は食堂でランチをテイクアウトして、中庭へ。

サンドイッチを抱えながら、足取り軽く目的地へ向かう。

中庭の隠れスポット、そこでジークハルトはお昼休みはお昼寝タイムなのだ。

攻略情報は頭に入っている。


木漏れ日が差し込む静かなベンチ、花壇の奥まった場所。

見つからないようにそっと覗き見る。

植え込みの陰から慎重に顔を出す。

リアルジークハルト!

生ジークハルト!

長い脚を投げ出し、木にもたれながら眠る姿は、絵画のように美しい。

最高のごはんのお供です…

尊さだけで白米がいけそうだった。


見守ることしかできないけど、こんなに近くで見守らせていただけるんだもん。

ありがたい…

手を合わせたい気持ちでいっぱいになる。

少し寝ていたジークハルトが起きて、もそもそとランチらしきものを食べて、また寝た。

無防備にパンをかじる姿すら破壊力抜群で、私は息を潜めながらその一挙一動を目に焼きつけた。

ああ、すぐ寝ると牛さんになっちゃうよって言いたいっ!

言ってあげたいっ!

木漏れ日の下、気持ちよさそうに再び目を閉じるジークハルトを見ながら、思わず心の中で叫ぶ。


でも、そんな気軽に話しかけられる立場じゃない。

ひとりでもだえて、楽しんで、そっと教室に戻った。

中庭を後にする足取りは軽く、スキップしたい気持ちを抑えるのが大変なくらいだった。

ゲームの画面で見ていたジークハルトを生で見てしまった。

オフショットと言っていいのか。

オフしてるけど、ゲームで見た場面だからオフじゃないのか。

そんなことを考えながら、ニマニマしてしまう。

冷たい「極悪人」なんて噂とは程遠い、無防備で穏やかな姿。

その秘密を独り占めできたようで、胸の奥がじんわり温かくなる。


ルンルンしながら教室に戻ると、アリアナに話しかけられた。

扉を開けた瞬間、待ち構えていたような彼女の姿に、思わず足が止まる。

「あの…さっき、どうして席を代わってほしいなんて言ったんですか?」

そう言われて笑顔が一瞬引きつる。

まさか、あなたとジークハルトをラブラブにするためです、とは言えない。

それを言ったら確実に不審者である。


「えっと…だから、前の人が…」

しどろもどろになりながら、苦しい言い訳を口にする。

「あなたも、あの極悪人のこと、嫌いなんでしょ?いい子ぶっちゃって。そういうの、モテませんよ?」

そう言われて、首を傾げる。

いい子ぶったわけじゃないけど…

むしろ本気で推してるんだけど。

いや、私のことはどうでもいいんだ。


『あの極悪人』って、もしかして、ジークハルトのこと?

その瞬間、心の中で何かがぷつんと切れた。

「あなた、皇太子様に言われたこと、もうお忘れになったの?人前で悪口を言うなんて、どういう教育を受けてこられたのかしら?さすが、男爵の位のご令嬢様ですわね。私とは受けた教育が違うみたいだわ」

怒りから、声が大きくなった。

教室中に響き渡るほど鋭い声に、自分でも少し驚く。

みんなの視線が集まっているのがわかる。


アリアナが顔を真っ赤にして教室から出ていった。

涙目になりながら駆け去るその背中を、私は呆然と見送った。

なんだ、あのヒロイン。

ヒロインって、みんなに優しくて、悪口なんて言わない、清い感じの人なんじゃないの?

私の知ってる乙女ゲームの主人公像と違いすぎて、頭が混乱する。


っていうか、悪役令嬢のクロエは何してんのよ?

こういうとき、なんか言うのは悪役令嬢の役目でしょうに。

腕を組みながら、脳内でシナリオ構成にツッコミを入れる。

皇太子が絡んでないから、悪役令嬢が出てこないのかしら?


そんなことを考えていると、ジークハルトが戻ってきたから、慌てて席に戻った。

長い脚で静かに教室へ入ってくるその姿に、さっきまでニマニマ見ていたのが申し訳なくなって視線を落とす。

窓のほうを見るとジークハルト。

逆光の中で横顔が浮かび上がり、傷跡すら神々しく見える。

眼福…

存在そのものがご褒美だった。


ふわふわしながら授業を受けたので、先生が言った内容は全く入ってこなかった。

黒板の文字より、隣の推しの横顔のほうが圧倒的に印象に残っている。

授業を受けながら、ジークハルトの設定を思い返していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ