01 私は生徒Cです
子爵令嬢(生徒C) ニーナ・ヴァロワ
皇太子 アルフレッド・クロムウェル
公爵 ジークハルト・ベルシュタイン
伯爵 リュカ・モンパルナス
伯爵 オスカー・ウィリアムズ
伯爵令嬢 クロエ・ラングレー
男爵令嬢 アリアナ・ロゼ
病弱で、ずっと病院のベッドの上で生活してきた。
唯一の楽しみが、乙女ゲームをすることだった。
そんな楽しみがありましたが、残念ながら、病院で死亡。
気がついたら、私が熱中していた乙女ゲームの世界に転生していた。
あんなに熱中してプレイしたゲームなのに、転生のときに頭でもぶつけたのか。
ところどころ、ゲームの記憶が抜けてしまったのだけれど。
転生したゲームは『禁断のロイヤル・アカデミー ~裏切りの王子たち~』。
アカデミーとあるとおり、中世時代を舞台にしたらしい全寮制学園ものの乙女ゲームになっている。
ヒロインはアリアナだ。
どんなキャラクターか忘れていたけど、男爵令嬢らしい。
このゲームで登場するキャラクターの中では1番身分が低い。
つまり、身分違いの恋。
攻略対象は、皇太子のアルフレッド、公爵のジークハルト、伯爵のリュカとオスカーだ。
悪役令嬢となるのが、伯爵令嬢のクロエ。
で、私は、ヒロインでもなければ、悪役令嬢でもない。
子爵令嬢のニーナという役柄だった。
『(生徒C)』という文字が透けて見えるようだ。
乙女ゲームの世界だからか、見た目は悪くない。
ただ、何もかも中途半端さがいなめないけどね。
いいんだ。
健康な体ってだけでありがたい。
3年学園で生活して、田舎に帰って、それなりの方とお見合いして結婚するのが私の人生らしい。
よきよき。
3年間は自由ってことだもん。
だったら、推し活しちゃおう!って気持ちを切り替えた。
私の推しは、公爵であるジークハルト。
他の人からは「極悪人のジーク」と呼ばれている。
そう呼ばれる理由は、ジークハルトの顔に大きな傷があるからだ。
でもこの傷、実は皇太子であるアルフレッドをかばったときにできた傷、という設定。
幼い頃、たまたま一緒にいたときにアルフレッドが襲われて、たまたまジークハルトが庇った。
そうして、たまたま、大きな傷ができた。
それをジークハルトは恨んでいる、という設定だったと思う。
皇太子をかばってできた傷なら、名誉の負傷なのに。
「皇太子を恨んでいるらしい」という噂が広がって、なぜか「極悪人」にされてしまった。
酷くない?
私の推しの待遇、酷すぎない?
頑張りが報われないのが、病気と闘っても改善されない自分と重なって、ジークハルトが苦境に立たされるたびに泣いたものだ。
だから、私の目的は。
ジークハルトのお姿を目に焼き付けつつ、ヒロインと幸せになれるように暗躍することだ。
入学式の最中にそう意気込んで、終わるとそろそろと教室に入った。
ゲームにまで少子化が影響しているのか、1クラスしかないから、自然とみんな同じクラスになる。
最初のイベントはたしか、席決めだった。
と、ヒロインであるアリアナが友達と話しているのが、チラッと聞こえてしまった。
「それにしても、『極悪人のジーク』、本当に極悪人顔だったわね」
「そうね。あんなおぞましい顔を晒すくらいなら、仮面でもつけて登校すればいいのに」
「あの顔を見ながら勉強なんて、できるのかしら」
…はあ?おぞましい?
「ちょっとよろしいかしら?!」
気がついたら、声を出していた。
ほかならぬ、ジークハルトを悪く言うのは許せない。
しかも、ヒロインが。
「あなた、男爵のご令嬢よね?男爵家のものが、侯爵家のジークハルト様のことを悪く言うのはいかがなものかしら?」
棘満載でそうアリアナにぶつけた。
アリアナは顔色を変えて「た、大変失礼しました」と言った。
謝るのは、私にじゃない。
「まあ、まあ。学園内では、身分は気にしないようにと言われているからね」
そう言って教室に入ってきたのは、皇太子のアルフレッドだった。
その通りなのだけど、それは表向きのルール。
食ってかかろうか悩んだが、開いては一応、皇太子だ。
「失礼しました」と頭を下げた。
「でも…あまり大きな声で悪口を言うのは、淑女としてはいただけないかもね」
皇太子がそうアリアナに囁いている。
キラキラ皇太子め。
ジークハルトを悪く言うアリアナは好きになれないけど。
彼には幸せになってほしい。
きっとアリアナはこれから、ジークハルトのいいところを知っていくはずだ。
そう信じて、暗躍にいそしむことにした。




