16 告白からの失恋
子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ
皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル
公爵 /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン
伯爵 /攻略対象 リュカ・モンパルナス
伯爵 /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ
伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー
男爵令嬢/ヒロイン アリアナ・ロゼ
「お話…があるということでしょうか?」
ジークハルトが視線を逸らしてくれない。
なんだか私のほうが恥ずかしくなってしまって、視線を逸らした。
「俺、『極悪人のジーク』って呼ばれてるんだ」
知ってる。
「で、君も極悪人だと言われていると聞いて…」
聞かれていましたか。
「お、お似合いじゃないかなって…思うんだけど、どうだろう」
お似合いですね…ん?
驚いてジークハルトを見た。
「お似合い?ですか?」
怪訝な顔になっていたのかもしれない。
ジークハルトが慌てて否定した。
「いや!決して、君が、極悪人って意味じゃなくて。言われてる同士…その…ごめん」
ジークハルトが撃沈していく。
「ふふっ。そうですね。極悪人って言われているもの同士、これからも仲良くしてください」
撃沈したジークハルトがチワワになっていたから、助け舟をだした。
「仲良くじゃなくて、付き合ってほしいんだ」
ジークハルトが、そう言った。
時間が止まる。
「あ、いや。仲良く、付き合いたいけど…あれ?どこが間違ったんだろう」
ジークハルトがあたふたしている。
「す、すまない。その、こういう告白?というのをしたことがなくて…」
ジークハルトが、あたふた、している。
困った。
悪評のせいで心が弱っていたから。
素直に嬉しい。
なぜか理由はわからないけど、ジークハルトに付き合ってほしいって言われちゃった。
ぽろぽろと涙がこぼれる。
「いやっ!違うんだ!…、嫌だったか?泣かないでくれ。泣くほど嫌?…どうしたらいいか、わからないぃ…」
ジークハルトがおろおろしている。
嫌なわけがない。
すごく嬉しい。
でも、そう伝えていいのかがわからない。
淑女にあるまじきだけど、袖口で涙を拭く。
「ありがとうございます。すごく嬉しいです」
私がそう伝えると、ジークハルトに笑顔が戻る。
「でも、お付き合いはできません。どうか、友達として、仲良くしてください」
そう伝えた。
「今の私は、極悪人の子爵令嬢です。公爵家の方とお付き合いするなんてできません」
極悪人という悪評をのぞいても、子爵と公爵では爵位が違い過ぎる。
学園内だから、普通に話ができているだけなんだもん。
そっと、ジークハルトの傷を撫でる。
「私、ジークハルト様はアリアナさんとお似合いなんじゃないかなって思ってるんです」
心にもないことを言ってるからか、ぽろぽろ涙がこぼれる。
ジークハルトの傷を撫でながら、本当に癒されたいのは私の心だと感じた。
「ですから、どうか。幸せになってくださいね」
「…君が言ってることはめちゃくちゃだよ。子爵だから付き合えないって言いながら、男爵令嬢を勧めてくるなんて…俺のことが嫌いなら、そう言ってくれればいいのに」
ジークハルトがつらそうな顔をする。
こんな顔をさせたいわけじゃないのに。
でもこれが、ジークハルトのためになるはずだ。
「本当ですね。…私、極悪人なので、嘘も平気で言っちゃうんです。ごめんなさい」
ポロポロとこぼれていく涙が止まらない。
「そう…わかったよ」
ジークハルトが私の手をはなした。
雨が降る音がして、ジークハルトが走っていく足音がした。
追いかけたら、まだ間に合うかもしれない。
そう思ってしまう自分が、情けなかった。




