14 人の悪意を受け止めるのは大変
子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ
皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル
公爵 /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン
伯爵 /攻略対象 リュカ・モンパルナス
伯爵 /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ
伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー
男爵令嬢/ヒロイン アリアナ・ロゼ
伯爵令嬢のクロエ・ラングレーは、『禁断のロイヤル・アカデミー ~裏切りの王子たち~』の悪役令嬢だ。
ジークハルトがどれだけ不当な扱いを受けてきたかを述べてきたが。
実は、クロエもゲーム内でいい扱いをされていない。
ジークハルトルートのときは悪役令嬢としての存在感を発揮するわけだけど。
それ以外のルートでは、ジークハルトが闇落ちするというストーリーが大きく取り扱われる。
前半部分ではしっかり悪役令嬢なのに、後半、クロエはちょろっと出てくるだけになる。
それなのに、断罪されちゃう…はず。
今のままでいくと、アリアナはアルフレッドルートにはいるんだろう。
そのときの悪役令嬢の最後って…どんなんだっけ。
ジークハルトが処刑されちゃうショックが大きくて、記憶に残っていないのか。
なんとか思い出せないかなと、頭を振ってみたり、歩いてみたりする。
やっぱり思い出せなかった。
でも通常、悪役令嬢って修道院に送られるとか、国外追放されるとか。
そういう感じよね。
私がうっかりクロエの代わりに悪役令嬢になってしまっていたとしても、殺されることはない…はず。
田舎の両親には申し訳ないけどね。
実際には何もしてないのに、ざまぁされるのは、かなり気にくわないけど。
ストーリー的に、誰かが悪役にならなければいけないなら仕方ない。
どうせなら、ジークハルトの分の悪役も背負えないかな。
そう思ったけど、現実問題として、アルフレッドと対峙できるのは、公爵家のジークハルトならでは。
子爵令嬢ごときが、王家の滅亡を考えるとか、鼻で笑われる。
そうなると、やっぱりジークハルトとアルフレッドを仲良しにさせつつ、ストーリーを見守るしかなさそうだ。
「…せめて、伯爵令嬢だったら、何か手があったかもしれないのに」
寮の部屋でひとり頭をひねる。
最近は、ジークハルトの観察時以外、部屋から出なくなっていた。
たいした理由はない。
私が歩くだけで、悪評が広がるからだ。
これ以上、悪く言われることはないだろうと思っていたけど、想像を超えた悪評が広がる。
今や、小動物を無残に殺す、極悪人にされてしまっていた。
心臓に毛が生えている私でも、やや胸が痛む。
ジークハルトも、こんな悪評を立てられていたんだろうか。
極悪人のジークと呼ばれる彼のことを思うと、さらに胸が痛んだ。
ドアがノックされる。
悪評高い私の部屋を訪ねてくるなんて、よほどの急用だろうか?
不思議に思いながらドアを開けた。
バシャンっと音がして、何かをかけられた。
液体?何?
あまりにも突然のことに、大声をあげて飛びのく。
それと同時に、ドアが閉まった。
驚き過ぎて、何があったのか、しばらくわからなくて呆然とする。
冷静になってくると、どうやら水をかけられただけらしいとわかった。
私はよほど、誰かに嫌われたようだ。
「よいしょっ」
あえて、声を出して立ち上がる。
部屋が水びたしではいけないだろうと、タオルで床を拭く。
健康というだけで幸せじゃないか。
この世界に来たとき、そう思ったはずなのに。
つらい…
病室にいるときは、先生と看護師さんにしか会わなくて。
もっと色んな人と会いたいと思っていたけど。
色んな人に会うということは、色んな悪意にも会うということなんだ。
こんなことなら、自分の世界にだけいられる病室にいたほうが幸せだったんだろうか…
気がついたら、涙がこぼれていた。
ずっと部屋にいるから、気持ちが落ち込んだのかもしれない。
窓の外を見ると暗くなっていた。
もう、外を出歩いている人もいないはずだ。
気分転換を兼ねて、夜の散歩に出かけることにした。




