13 バーガーで笑顔なランチタイム
子爵令嬢/生徒C ニーナ・ヴァロワ
皇太子 /攻略対象 アルフレッド・クロムウェル
公爵 /攻略対象 ジークハルト・ベルシュタイン
伯爵 /攻略対象 リュカ・モンパルナス
伯爵 /攻略対象 オスカー・ウィリアムズ
伯爵令嬢/悪役令嬢 クロエ・ラングレー
男爵令嬢/ヒロイン アリアナ・ロゼ
中庭の木漏れ日の下、静かなはずの推しとのランチタイムが、なぜか豪華メンバーになってしまった。
「ジークとこうやって食事をするのは…何年ぶりかな」
アルフレッドが突然、そう言った。
懐かしむような声音。
「子どもの時以来ですね」
ジークハルトが穏やかに答える。
「敬語はやめてくれよ。子どもの頃は兄弟みたいに育ったじゃないか」
2人の会話を聞くに、子どもの頃は仲の良い2人だったようだ。
そんな設定、あったかな?
記憶が曖昧なのがもどかしい。
「子どもの頃は、子どもの頃ですよ、殿下」
ジークハルトがそう言って、沈黙になってしまった。
空気が少しだけ重くなる。
ものすごく気まずい。
ここは、モブ力を発揮するしかない。
「あ…アルフレッド様のランチボックスは、ハンバーガーなんですね。淑女には難易度高めのランチボックスです。あはは…」
無理やり話題転換。
やや不自然。
でも沈黙よりマシ。
そう言うと、アルフレッドが「そうなの?」と言った。
本気で知らなそうな顔をしている。
その様子に、ジークハルトがふっと小さく笑った。
その笑顔を見られただけで、私は今日の努力すべてが報われた気がした。
やはり、推しの笑顔は世界を救う。
「っていうか、皇太子でも、大口でハンバーガー食べるんですね。ナイフとフォーク使うのかと思いました」
ふと、目の前で意外にも豪快にハンバーガーへかぶりつくアルフレッドを見ながら、素直すぎる感想が口をついて出た。
パンを押さえる手つきこそ上品だけれど、その食べ方は思いのほか庶民的で、きらきら皇太子のイメージとのギャップが激しい。
正直な感想を言うと、アルフレッドとジークハルトが「あはは」と笑った。
中庭の木漏れ日の下、二人の笑い声が重なる。
「そりゃあ、ハンバーガーくらい、食べるよ」
アルフレッドが肩をすくめながら笑う。
「ナイフとフォークって…どんなイメージだよ」
ジークハルトも呆れたように、それでも柔らかく笑っている。
2人が笑ってるの、なんかいいな。
その光景に、胸がじんわりと温かくなる。
食べ物のことで笑い合っている姿を見ると、ただ仲の良い友人同士のように見える。
この空気。
この雰囲気。
守りたい。
詳しくは聞けてないけど。
2人に距離ができたのは、たぶん、ジークハルトの顔の傷のせいだろう。
アルフレッドが言うように、子どもの頃は兄弟のように仲がよかったのなら。
またその頃みたいになれたらいいのに。
そうしたら…王家の滅亡なんて望まなくなるんじゃないか?
ジークハルトが闇落ちする可能性が減るのでは?
そこで、脳内に電流が走る。
「これだ!」
ニーナ、閃きました!
思わず立ち上がりそうになるほどの勢いで、私は自分の名案に震えた。
そうだ。
ヒロイン攻略より、幼なじみ修復ルートのほうが確実なのでは?
「…どうしたの、ニーナ嬢?」
突然声を上げた私に、ジークハルトが驚いた顔で私を見る。
少し目を丸くして、心配そうにしてくれるのが優しい。
「アルフレッド様、ジークハルト様、明日も、一緒にランチ、しませんか?」
ぐっと拳を握りしめながら提案する。
イベント発生である。
題して、ジークハルトとアルフレッドを仲良くさせよう作戦。
私が提案すると、ジークハルトが困った顔をした。
少し戸惑ってはいるけれど、断るほどじゃないし、みたいな微妙な表情。
「僕はいいよ。ニーナ嬢とのランチは楽しいからね」
アルフレッドがにこやかにそう言った。
その言い方は少し誤解を招きそうだからやめてほしい。
アルフレッドの返事を聞いて、ジークハルトを見る。
「あ…うん。そうだね。いいよ」
少し照れたように了承してくれた。
ジークハルトの言質、いただきました!




