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【完結】悪役令嬢の追放からの逆転スローライフ〜辺境公爵の『溺愛業務』を請け負います〜  作者: 木風


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第三十四話 夜会の帰り道、辺境へ戻るための作戦会議

カインは、ヘンリー王子とセレナ、そして茫然自失の貴族たちを背後に置き、リリアーナを連れて王城の夜会を後にした。

彼の強烈な独占欲と、リリアーナの冷静な幸福は、王都の社交界に『辺境からの逆転劇』を鮮烈に刻み込んだ。


馬車へ乗り込む直前、背後でセレナの小さな悲鳴が崩れるのが聞こえた。

リリアーナにとってそれは、過去のバッドエンドが、音を立てて消滅した合図だった。


――もう二度と、あの鎖に戻ることはない。


王城を離れた魔導馬車の中。

リリアーナは、当然のようにカインの膝の上に頭を乗せ、魔力ケアを受けていた。

外の喧騒は遠ざかり、車内は、カインの冷たい闇属性魔力と、リリアーナの身体から滲む生命魔力が静かに釣り合う、穏やかな均衡に満たされている。


「カイン様。業務、お疲れ様でした」


リリアーナは髪を撫でられながら、夜会の成果を淡々と整理した。

感情の報告ではない。結果の報告だ。


「貴方様の独占的な宣言は、ヘンリー殿下の政治的信用を完全に失墜させました。これで、彼らがわたくしへ直接干渉する可能性は、大幅に低下します」


古代遺跡探求プロジェクト――その『防御フェーズ』が、一段階完了した。

彼女の脳内では、夜会はすでにその位置づけになっている。


「貴女の分析は正確だ、リリアーナ」


カインは短く肯定し、視線を落とす。

指先が、彼女の首元のチョーカーをなぞった。

それは隠蔽と抑制の装置であり、同時に、彼女の所属を物理的に示す紋章でもある。


「ヘンリーは常に私を凌駕する権力を求めている。貴女の生命魔力の存在を知らずとも、その価値と、私の独占の深さだけは理解したはずだ」


淡々とした声の裏に、冷たい確信がある。


「貴女を奪うことは、アルテミス公爵家――王国最強の魔力を、完全に敵に回すことを意味する。彼は臆病者だ。そのリスクは取れない」


リリアーナは、膝枕のまま小さく息を吐いた。

王子が彼女を必要とした瞬間に、また義務を振りかざすだろう――そう予測していた。

だが、カインの算段は、それを『実行不能』にしていた。


「そして、セレナ嬢の感情的な暴走も計算通りだった」


カインは、冷淡に続ける。


「彼女の行動は、王子の判断力と、彼女自身の王妃としての資質に、決定的な疑問符を付けた。さらに――彼女の『光の聖女』としての能力は、噂ほどではない」


リリアーナは視線だけを動かした。

カインの言葉の選び方が巧妙だ、と理解する。

比較を持ち出すことで、何が優位かを周囲に刷り込む。


「貴女の生命魔力と比べれば、彼女の力は、回復魔法の域を出ない」


それは真の聖女の位置を、完全に塗り替える断定だった。

同時に、リリアーナが公に出てはいけない理由が、より鋭利になる。


「貴女は、完璧に業務を遂行した」


カインの指が、彼女の頬に触れる。

そして、短い口づけが落とされる。


「公爵夫人としての威厳と、私への献身を最大限に示した。……貴女が私に提供した『喜びの報酬』は、私が費やした労力に対する最大の対価だ」


言い回しは、相変わらず業務と契約で武装している。

けれど、その声には、隠しようのない渇望が混じっていた。

リリアーナは胸元へ顔を寄せ、しばし沈黙する。

王城で張り詰めていたものが、車内の均衡の中でほどけていく。


「カイン様」


やがて、彼女は小さく言った。


「わたくしにとって、貴方様と共に研究し、貴方様と『愛の物語』を演じることは……義務ではなく、純粋な喜びとなっています」


計算ではなかった。

理屈でもない。

ただ、その言葉が出た。


社畜だった頃。

能力は便利に使われ、正当な対価も安全も与えられなかった。

だが今、彼女の力は評価され、守られ、環境が最適化されている。

その中心にいるのが、カインだった。


リリアーナの素直な言葉は、カインの内部で何かを解かした。

闇属性の魔力が一瞬高揚し、車内の空気がわずかに震える。


「……リリアーナ」


カインは彼女の頭を抱き締める。

抱擁は強く、逃げ道を与えない形だ。


「貴女がそう言うなら、私の支配は貴女の幸福と永遠に結びつく。貴女が望む限り――私は貴女を、この世界で最も愛され、最も守られた存在として、囲い込み続ける」


そして、再び深いキス。

報酬ではない。

契約の形式でもない。

確認だ。所有の確認。


キスの合間、カインは決定事項を読み上げるように囁いた。


「我々は辺境に戻る。王都の愚か者たちの没落を傍観しながら、貴女の力と古代遺跡の叡智を統合する」


彼の声が少し低くなる。


「数年後に迫る魔族の侵攻に対し、貴女と私の力で、この世界を救う」


研究、戦略、生存――それらが今、彼の中で使命にまで昇華している。

そしてその使命の中心に、リリアーナを置く。

当然のように。絶対のように。


リリアーナは、強い抱擁の中で満足げに微笑んだ。

元・悪役令嬢として転生し、最強の生命魔力を得た。

そして、その力を『冷徹な公爵の愛と論理』という名の鎖で縛ることで、最高の形で守り抜く道を選んだ。


過去の清算は終わった。

ここからが本編だ。


彼らの契約は、最も合理的で、最も独占的な形で、未来へ続いていく。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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