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【完結】悪役令嬢の追放からの逆転スローライフ〜辺境公爵の『溺愛業務』を請け負います〜  作者: 木風


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第三十五話 聖女判定儀式――王室が仕掛けた最後の罠

リリアーナとカインが王城の夜会を去った後、王都は嵐の前の静けさに包まれた。

ヘンリー王子とセレナの威信は地に落ちた。だが彼らは、なお最後の抵抗を試みていた。


王子は、リリアーナが得た満ち足りた光が、単なる公爵夫人としての財力や衣装の効果ではないことを本能的に察していた。

夜会でカインが公然と口にした『生命魔力』という単語――あれが、王子の最後の望みを刺激したのだ。


その翌々日、王室から緊急の布告が出された。

神殿と王室の合同による、『聖女の資質を持つ者の公的判定儀式』を執り行うという。


名目は、魔族の脅威が増す中で国の守護者たる聖女の存在を国民に示すため。

実態は、セレナを『正式な聖女』として固定し、同時に――リリアーナという誤算の正体を測るための網だった。


布告を聞いたリリアーナは、カインの研究室で静かに笑った。冷笑に近い。


「聖女の判定……ヘンリー殿下の最後の賭けですね。セレナ様を聖女に認証し、その権威で国難を解決する。ついでに、わたくしの力を測る。あるいは――」


彼女は言葉を区切り、カインを見る。


「わたくしを神殿の所有物にするための儀式です」


カインはリリアーナの膝に頭を乗せ、魔力の波形を端末でチェックしていた。

その瞳が、氷のように冷たい。


「その通り。奴らは貴女の力がどれほどのものか、あるいは存在するのかさえ疑っている。仮に貴女が光の資質を示したとしても、セレナの前に跪き、神殿の管理下に置かれることを期待している」

「カイン様との契約を宗教的義務で上書きする……」


リリアーナは納得したように頷きながら、カインの銀髪を指で梳いた。


「論理は理解できます。ですが――この儀式は、私たちにとって最高の機会になり得ます」


カインが魔力調整を止め、顔を上げた。

探究心と、リリアーナへの信頼が、その青い瞳に宿っている。


「貴女の意図は?」

「セレナ様を、公的に失墜させます。そして聖女という地位を、愛や神殿の幻想ではなく、論理と契約で定義し直す。王子の支配から、完全に解放されるための最終業務です」


カインの口元に、わずかに笑みが浮かんだ。

それは愉悦ではなく、獲物を逃さない捕食者の確信に近い。


「いいだろう。参加を許可する。だが条件は一つだ」


カインの指が、リリアーナのチョーカーに触れた。

金属は冷たいのに、そこに流れる魔力は熱を帯びている。


「力を発現させるのは、私が許可した瞬間のみ。そして儀式の間、貴女は一秒たりとも私の傍から離れるな。貴女の力は誰にも渡さない。私の管理下にある、最も尊い宝だ」


翌日、王都の大神殿で儀式が執り行われた。

王族、有力貴族、神殿最高位の神官たちが揃う、厳粛な場。


中央には、古代の聖遺物『光の天秤』が置かれていた。

聖女の資質――純粋な光属性魔力を量り、公的に認証する装置。


リリアーナは最前列に立っていた。濃紺の魔導装甲ドレス、首元のチョーカー。

隣にはカイン。彼の闇属性の威圧が、神殿全体を静かに支配している。

誰も、アルテミス公爵に逆らえない。


ヘンリー王子とセレナは祭壇の前。

王子の顔は硬い。セレナは青白く、指先が震えている。

彼女の光は、夜会の頃より弱い。――恐怖と嫉妬は、魔力の質を濁す。


神殿長が宣言した。


「魔族の影が迫る今、我らが守護者たる聖女の力が必要である。最初に、光属性の才能を持つセレナ嬢。天秤にその身を捧げ、資質を示されよ」


セレナが祭壇に上がる。

目を閉じ、全身から光を放った。


温かい、優しい光。けれど――薄い。揺らぐ。

天秤はゆっくりと傾き、数値が表示される。


「光の魔力、確認。量は……」


神殿長は数値を見て、息を呑んだ。

その顔に浮かんだのは歓喜ではなく、微かな失望だった。


「中程度。癒やしの力を持つことは確かだ。しかし――古代の文献に記された聖女の資質には遠く及ばない」


会場がざわめく。

セレナの肩が震え、涙がこぼれた。


王子は、顔色をさらに悪くする。

そして次の瞬間、彼はセレナを顧みなかった。

視線はリリアーナへ――焦燥と欲望が剥き出しになる。


「次に、リリアーナ・アルヴァロ・アルテミス公爵夫人!貴女も聖女の資質を持つ可能性があると聞いている!直ちに天秤の前へ!」


カインの魔力が、一気に冷えた。

温度が下がる。空気が凍りつく。


「私の妻は、貴方の命令に従う義務はない」

「王命だ!国を救う鍵なら証明する義務がある!」

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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