招かれざる客
音が聞こえた、確かに。単調だが、段々とその音は大きくなる。 すぐにたき火を消し、ローズマリーはまとめてあった装備をつけて岩陰に入る。
モーターボートのエンジン音が止まった。
夜明けの薄闇の中、軽い波音だけが彼の耳に届く。
通信機を取り上げ、まずマヤラに連絡。
「誰か上陸しようとしている。多分三人以上、隠れていられるか?」
返事がない。寝入ってしまったのか、連絡もできないほど弱っているのか。
彼の所を見に行きたいが、持ち場を離れることはできない。
つぎにサンライズに連絡する。彼はすぐに出た。が、声が変だった。
「マヤラに言ったか」
「先に連絡した。返事はなかったが」
「ならいい、どうせテントは見つかるから、見つかったら正直に話し合うしかないな。マヤラの事だけ黙っていろよ。どんな連中か分かるまでこちらは二人だと思わせておこう」
「了解」
ゴムボートが近づいてきた。五人。一人は医療用キットのようなものを持っている。
この島で何が行われようとしているか、少なくも知っている者たちだろう。研究者仲間なのか?
しかし顔つきをみて、あまり期待をしないことにした。
少なくとも二人は、銃を持っていた。
今度はサンライズに直接、見た物を伝える。
間もなく、ベースの前をボートが滑るように横切っていった。彼らは少し離れた所から様子をうかがっているらしい。ボートはそのまま、南側の入江に消えていった。
タイミングが良いのか悪いのか、ちょうど西日本支部から連絡が入った。
「コウダ博士のラボに資料を取りに来たヤツらがいた。オレたちの少し前に。CDC(米疾病予防対策センター)を名乗ったらしいが、怪しい。気をつけろ」
「そう言うコトは早めに教えてくれ」すでに追いつかれてしまった。
「銃まで持ってたぞ。何者だ? 目的は」
「ボスはフランス訛りだったらしいがね。日本人もいる。ウィルスが欲しいらしい。ラボには残してなかったから」
結局捜し出されるだろうから、無理して岩陰にいるのはやめた。
ローズマリーはテントに戻った。たき火の近くに座り、もう一度火をおこし直す。
少し冷え込んでくる時間だった。
日が昇り始めた頃、南の崖伝いに黒い影が二つ、こちらを目指して近づいてきた。
「おはようございます」向こうから、声をかけてきた、日本語だった。銃は構えていない。
一日が始まっちまったな、ローズマリーはゆらりと立ち上がった。




