第65話 竜骨坑道へ(四)
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昨日、投稿予約時間間違えてました(´・ω・`)スマソ
「っ!」
サトはピッケルを抜いた。
間に合わない。
その前に、神威が飛び出した。
「神威!」
神威はラプトル型へ突っ込んだ。
攻撃ではない。
背中のパネルを一瞬だけ開き、強い忌避光を前方へ放つ。
ラプトル型の赤いセンサーが乱れた。
動きがわずかに逸れる。
その隙に、ドーラのハンマーが横から叩き込まれた。
がん、と重い音が坑道に響く。
ラプトル型は壁に叩きつけられ、火花を散らした。
「いい子だ!」
ドーラが叫んだ。
神威の尻尾が一瞬だけ揺れた。
二体目が床を走る。
ミネが杭を構えた。
「足止めします!」
通路に金属杭が打ち込まれる。
杭から細い線が伸び、床に青白い格子が走った。
二体目のラプトル型がその上を踏む。
脚が絡まる。
完全には止まらない。
だが速度が落ちた。
サトはピッケルを構え、先端から短いスタンパルスを撃つ。
大型には効かないだろう。
だが、この大きさなら一瞬は止まる。
ばちり、と青白い火花が走った。
ラプトル型の動きが乱れる。
「今!」
ドーラのハンマーが振り下ろされた。
床が揺れる。
二体目が沈黙した。
三体目は、奥へ逃げた。
いや、逃げたのではない。
誘導しているように見えた。
ツキハが目を細める。
「奥に、人間の反応があります。弱いです」
ドーラが叫んだ。
「急ぐよ!」
◇
第三下層の東側へ続く通路は、ひどい有様だった。
壁には爪痕。
床には焦げ跡。
通路の隅には、折れた観測棒と、血のついた布。
そして、封鎖扉の少し手前。
崩れた端末台の陰に、人がいた。
若い男だった。
片脚を押さえ、壁にもたれている。
顔は汗で濡れ、唇は白い。
その前を、一体のラプトル型狂機がうろついていた。
男は動けない。
声も出せない。
ラプトル型は、赤いセンサーを左右に動かしながら、ゆっくりと距離を詰めている。
紙一重だった。
「急ぐよ!」
ドーラが走り出そうとした。
だが、ツキハが手を上げる。
「待ってください」
「待てないよ!」
「今動けば、狂機が彼へ飛びます」
ツキハの声は静かだった。
だが、強かった。
サトは息を止める。
「ツキハ、どうする」
「一瞬だけ、視線をずらします」
月片が淡く光った。
ツキハの指先から、細い月光糸が伸びる。
攻撃ではない。
床に落ちていた割れた金属片を、ほんの少しだけ動かす。
かつん。
音がした。
ラプトル型がそちらへ向き、警戒するように近づく。
「神威!」
サトが叫ぶ。
神威はすでに走っていた。
低く、滑るように。
腹部パネルから弱い光が広がる。
今度は威嚇ではない。
負傷した男へ向けた、落ち着かせるための調整パルス。
男の震える手が、わずかに止まった。
ドーラがラプトル型の横へ踏み込む。
「邪魔だよ!」
ハンマーが振り抜かれた。
ラプトル型は吹き飛び、壁に叩きつけられる。
ミネがすぐに封鎖杭を打つ。
カドが男の肩を支える。
イリカが滑り込むように膝をついた。
「意識はありますか!」
男はかすかに目を開けた。
「……第三班、カシム……」
「しゃべらないでください」
「奥に……三人……」
サトは膝をつく。
「大型狂機の向こうか」
男、カシムは震える手で奥を指した。
「扉の先……崩落……ナギが、下敷きに……メルとジオが……俺を、逃がすため、囮に……」
「もういい。分かった」
サトは言った。
「よく戻った」
カシムの目が揺れた。
「戻れて、ない……まだ、あいつらが……」
「戻す」
ドーラが低く言った。
「全員、戻す」
その瞬間、坑道の奥から音がした。
低い。
重い。
地面そのものが唸るような音。
ぐおん。
ぐおん。
ぐおん。
封印扉の向こう。
大型の何かが、動いている。
壁が震えた。
天井から埃が落ちる。
神威が、低く鳴いた。
怯えではない。
警戒。
サトは奥を見た。
暗い通路の先に、巨大な封印扉があった。
その向こう側で、赤い光がゆっくりと動いた。
ひとつ。
ふたつ。
いや、目だ。
大きすぎる目。
サトの背筋が冷えた。
「……あれが」
ツキハが静かに言った。
「大型狂機です」
封印扉の向こうで、巨大な影が動いた。
そして、壊れた獣のような咆哮が、竜骨坑道の奥から響いた。




