彼女の歌
和也side
朝練後、朝礼
「あれ?日野さん?今日は欠席ですか?優木君何か知りませんか?」
と同じクラブの俺に訪ねる。
「すみません分からないです朝練は来ていたんですけど」
「そうですか…どうしましょうか…」
先生は困った表情を浮かべる。
先生は困ってる、俺は怒ってる…とりあえず探そう。
「先生!俺、探して来ます!」
「はっはい!」
勢いで教室を飛び出した。
「ひなたの馬鹿…!」
ひなたside
現在屋上で頭に腕を組んで仰向けで寝転がっています。授業をサボった。
一度でいいからサボってみたかった。
まぁ私らしくないなww
それに今日は晴れていて、風が気持ちいいなぁこのまま寝ちゃいそう…
きっと今頃和也が私のこと探してるだろうなぁ。見つかるのも時間の問題かなぁ。なんて考える私。
風に流れていく白い雲、右手を空へ向けて雲を握るような仕草をする。
「でも…届かないんだよね…」
歌おうかな?
いつも気晴らしによく歌う。
ちなみに3曲、じゃあまず一曲目。
「聴いてください。『翼をください』ってか誰もいないのになww」
でもこのとき…
「いまー私のー」
数十分後
「ふぅ…続いての曲は私にとってとても大切な思い出の曲。『夕日坂』」
「帰り道は、夕日を背に…」
はたまた数十分後
「ふぅ~」
和也side
ひなたが歌っていた。歌っているせいか、俺がいることに気がついていないようだ。
『翼をください』はとても楽しそうで明るい歌声だった。
『夕日坂』は思いのこもった優しい歌声だった。
しばらくして『夕日坂』が終わった後、ひなたに声をかけた。
「ひなた」
「あ…」マズイ…という表情を浮かべていた。
「授業をサボるとは…勝山先輩に何を言われるのか分かっているのか!?」こうして俺の説教が始まった。
ひなたside
数十分後
和也のお説教が終わった。
和也のお説教は意外に長くてうるさくてちょっと面倒だった。
顔には出してないけど…
「ったくもう…じゃあ戻るぞ」そう言って私の手首を引っ張る。
だけど…
「待って!」
「何?」
「お願い…最後に…一曲だけ…」
「…はぁ~仕方ないな…いいよ」
和也は呆れながらも歌うことを許してくれた。
「和也、ありがとう。この曲だけはどうしても歌いたかったの。
今から歌う曲はね。私が落ち込んでた時に慰めてくれた、私にとって…とても大切な曲なの。
水樹奈々さんの“Silent・Bible”
じゃあ歌うね。
泣かないで、傍にいるから…」
和也side
ひなたが歌っている。
でも、どうして?どうして?
どうして、悲しい表情でこんなに悲しく、寂しく、苦しそうな歌声で歌うんだ?
こんなのひなたらしくない。
俺の知っているひなたは、いつも太陽のように明るいひなただ。
悲しく、寂しく、苦しい表情で歌ってるひなたを俺は見たことがない。
ひなた…
何かあったんだな、俺には分かるよ。
何かがあったんだってことが。
「ふぅ~」
ひなたが歌い終わったのと同時に俺は声をかけた。
「どうして?」
「え?」
「どうしてそんなに悲しく、苦しく、寂しい歌声で歌うんだ?」
「っ…」
一瞬ひなたの表情が曇った。
「そんな風に見えたの?」
と言って笑顔で答えたが、おそらく作り笑いだ。
「あぁ。でもどうして?ひなたらしくない」
「私だよ?いつもの私日野ひなたですよっ!」
と笑うひなた。これは作り笑いだどうして…そんなことを…。
「…違う」
「何があった。何を隠している、俺には分かるよ。」
「…隠してなんかない」
ひなたの声色が変わった弱気になっていく。
「隠してる」
「隠してなんかないよ。」
絶対強がってる。
「なら、どうしてあんな表情で、あんな歌声で歌うんだ?」
と珍しくしつこくひなたに尋ねる。
「それはっ!」
でも表情を曇らせて何も言わなくなった。
「何があった」
「なんにもないよ!」
「嘘だ」
「…何にもないって言ってるでしょ!馬鹿!!」
と珍しく声を荒げてひなたは屋上から走って出て行った。
「やっぱり…何かあったんだな。なぁひなた、俺のこと…少しは頼ってよ力になりたいからさ」
ひなたには届かないのにどうか届いてくれと願う俺だった。
ひなたside
「泣いちゃダメ、泣いちゃダメ、泣いちゃダメ」
自分に言い聞かせるでも涙はボロボロと出る一方だ。
「ねぇ止まって…?止まってよ…!」
私は行く宛てもないまま走った。
そして、辿り着いた場所は…
校門近くの桜の木だった。
もう花は散っている。
さっきまで吹いていた心地よい風はやみ、晴れていた空は曇っていた。
この空、まるで私の心を映してるみたい…
「なんか…寂しいな…」
私はその場で崩れ落ち、子供のように泣きじゃくった。




