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火曜日は存在しない

作者:ぽむぽむ
最新エピソード掲載日:2026/11/07
朝霧市には、火曜日が存在しない。

正確には、この町の人間は毎週、火曜日に起きたことだけを水曜日になると忘れてしまう。店は火曜定休、重要な予定も入れない。それはいつしか、誰も疑わない町の常識になっていた。

市立図書館に勤める船山一花、31歳。ただ1人、彼女だけは火曜日の記憶を失わない。毎週火曜日、誰も来ない「おはなし会」のために6脚の椅子を並べ、同じ絵本を読み続ける。なぜ自分だけ覚えているのか。なぜ6脚なのか。一花自身にも分からなかった。

そんなある夜、一花は「水曜日になっても、僕のことを忘れないで」と訴える12歳の少年・水原忠信と出会う。ところが翌朝、忠信の存在は住民記録からも学校の名簿からも消え、母親さえ「子どもはいない」と言う。そして忠信が残した紙には、一花自身の筆跡で、恐ろしい一文が記されていた。

「次の火曜日、あなたは私を殺す。」

同じ頃、北陵新聞の記者・柏木隼人も、覚えのない自分の筆跡に導かれ、一花とともに町の秘密を追い始める。やがて浮かび上がる、7年前の研究所火災、町中の人々が署名した「同意書」、そして記憶に霧をかける装置「MIST」。6脚の椅子、6つの白いパン、毎週15時15分に北の山へ祈る住民たち。そのすべてが、忘れ去られた1つの火曜日へとつながっていく。

そして、一花に残された火曜日は、あと8回。

忘れることは救いなのか。それとも、忘れないことこそ償いなのか。
町全体が封印した7年前の罪と、一花自身の失われた人生をめぐる、記憶と贖罪のSFミステリー。
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