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物語絵[イレギュラー]〜浮遊都市ルミナリアの何でも屋『星屑の軌跡』〜  作者: 蒼猫
4ページ目

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「何でも屋『星屑の軌跡』」

 ルクスとエリアに化け悪さを行う化け狸と化け狐の成敗に成功した。

 散らばった星涙草を丁寧に拾い集め、ルクスが「ふぅ、なんとかなったな……」と汗を拭う。

 その姿を、特等席で目を輝かせながら見つめていたフィオナが、嬉しそうにパタパタと駆け寄ってきた。



「すごーいっ♪ルクスちゃんもエリアちゃんもかっこよかったよ♪お星さまの予言の厄災ってこの事だったんだね♪うふふ♪」



「あはは、お待たせフィオナ。ちょっとドタバタしちゃったけど……これが俺たち、何でも屋『星屑の軌跡』さ!」



 ルクスは優しく微笑むと、手元に残った美しい瑠璃色の薬草を見つめた。

 初仕事『孔雀』は消え去って失敗してしまったけれど、そのおかげで、運命の糸を手繰りよせたかのように、この神秘的な森にやってくることができた。

 ルクスは、目の前で天使のように笑う少女の姿をしっかりとカメラのファインダーに収め、優しくシャッターを切った。



 ――カシャ。 



 ――桜色のふわふわとした長い髪に、大きなお花の髪飾り。星空を仕立て直したようなフリルいっぱいの可愛らしいドレスをまとい、白うさぎのぬいぐるみを大切そうに抱きかかえた、未来を予知する13歳の小さな女の子。

 この日、俺たちは、最高に愛おしい『新しい光』と出逢ったんだ。

 カメラを構えるルクスに、フィオナはそっと近づき、ドレスの裾をきゅっと握りしめる。



「あのね、ルクスちゃん、エリアちゃん。……フィオナね、この森の外の世界を、いっぱいいっぱいお星さまの占いで視てきたの」



 少女には一つ夢があった。それは外の世界に出ること。外の世界に触れること。簡単そうで少女にとっては、儚く星夢(ゆめ)を見ることだけしか出来なかった。



「綺麗な海や、賑やかな街、美味しそうなお菓子……。でもね、フィオナは一度も、この森の外に出たことがないの……。」



 衝撃的な発言を今、目の前の小さな少女が、触れたら壊れてしまうシャボン玉のような声で二人に訴える。



「え……? ずっと、この森の中にいたの?」



「うん。だからね……フィオナをお外の世界に連れ出して? 二人と一緒なら、お星さまが教えてくれたキラキラした世界に、本当に行けると思うんだ♪」



 少女の純粋な、けれど必死な願いの瞳。

 ルクスとエリアは顔を見合わせ、同時にニカッと笑う。



「断る理由がないよな!よし、決まりだ! 一緒に俺たちの街へ行こう、フィオナ!」



「そうよ! うちの店長に言えば『ガハハ! 任せとけ!』って大歓迎してくれるわ!私もつい、この間まで暇で退屈な日々を送ってたけれど、ルクスと出会って店長に誘われて、今、凄く楽しいのよ!」



 エリアの言葉に、フィオナの瞳がまるで本物の星が灯ったかのようにパァッと輝き出す。



「本当……!? うふふ♪ やったぁ♪ ルクスちゃん、エリアちゃん、ありがとう!」



 嬉しさのあまり、大切な白うさぎのぬいぐるみを抱きしめたまま、フィオナがルクスとエリアの周りをぴょんぴょんとお上品に跳ね回る。    

 その純粋無垢な笑顔は、先ほどまでの大森林での出来事を一瞬で忘れさせるほど眩しかった。



「よし、そうと決まれば善は急げだ。『星涙草』も無事にカバンに収まったことだし、俺たちの『ホーム』へ帰ろうぜ!」



 ルクスがそう言って、フィオナに優しく手を差し伸べると、フィオナはその小さな手で、ルクスの大きな手のひらをきゅっと ―― 壊れ物を扱うように、けれど絶対に離さないという強い意志を込めて握り返した。



「うん♪ フィオナの新しいお星さまの物語絵、ここからスタートだね♪」



 二人の歩幅に合わせ、トコトコと嬉しそうに歩き出すフィオナ。

 その小さな背中を見つめながら、エリアは少しだけ誇らしげに胸を張ってルクスに耳打ちした。



「ねえルクス。私たちの魔法や能力はちょっと変で上手くいかないことばかりだけど……今日のこの出逢いだけは、100%大成功のご利益(星占い)だったと思わない?」



「ああ、全くだな……。でも今日は珍しく魔法失敗しなかったな!普段は肝心な時に出鱈目な事になるほうが多いけど、最後の6人で放った魔法は正直度肝を抜かれたし、素直にすげぇ!って思ったよ!」



 ルクスの言葉に嬉しそうに誇らしげな顔つきでエリアが笑みを浮かべる。



「ふん!私だってやる時はやるんだから!伊達に三百年も生きてないわ!えへへ!」



 彼女からすれば変わり映えのない人生に新しい道を共に歩む『光』が舞い込み、フィオナと同じように自分の世界全てが輝き出したのだということ――それを………ルクスはまだ知らない。



 ルクス達は何でも屋の拠点がある街『ブルームタウン』へと帰ってきた。

 フィオナは初めて目の当たりにする景色や香り、食べ物、行き交う人々など、全てを視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚、の五感で堪能した。

 外の世界へ出た事がないフィオナからしてみれば夜空に溶け出す銀の魔粉の輝きと同じくらい、何もかもがキラキラと輝いて見えた。



「わぁ〜凄い凄い♪楽しいな〜♪何もかもが初めてで、森の外の世界はこんなにもキラキラしてるなんて森を出なかったら分からなかったな♪改めてありがとうね♪ルクスちゃんエリアちゃん♪」



 歩みを進めてると、聞き馴染みのある野太い声が拡散器を使ってるのかと疑ってしまうほどの圧倒的な音量で響き渡った。



「ルクス!!エリア!!どうだ、『星涙草』の収穫は上手くいったか?ガハハ!」



「はい!『星涙草』が咲く聖域で、俺たちに化けて森の聖域を荒らし、『星涙草』を乱獲していたマモノに遭遇しましたが、なんとかエリアと共にマモノを成敗して、無事に収穫する事ができました!」



 太陽のような笑顔で、ルクスたちの報告を嬉しそうに聞く店長。



「それと……。その森で出逢った女の子の『外の世界に連れ出して欲しい』という願いを叶える為その女の子も一緒に連れてきたんです!」



 フィオナは風に吹かれふわふわと舞う花の精の様な足取りに、満面の笑みで店長のもとへと駆け寄り、自分の名前を告げた。



「私、フィオナ♪ 森で出逢ったルクスちゃんとエリアちゃんに外の世界を知りたくて森から連れ出してもらったの♪

 店長さん……フィオナもここでみんなと一緒にお仕事のお手伝いしたらダメかな?」



「店長。俺からも頼むよ!」



「私からもお願いするわ!それにフィオナは未来予知が出来るのよ!仕事にも役立つに決まってるわ!だからお願いします!」



 二人の必死な願いを聞き、店長は豪快に胸を叩いた。



「なぁ、ルクス。エリア。ウチの何でも屋の座右の銘は『困ってるヤツがいたらそれはもう仕事だ』、そして『人を笑顔にする』のがオレら何でも屋の仕事だろ?お前達はお嬢ちゃんの願いを叶えてやった。それは立派な何でも屋の仕事の一つだ!」



 店長の熱弁でルクスとエリアも心を動かされる。



「つまりだ、お嬢ちゃんを連れ出したなら、最後まで面倒を見るのも仕事なんじゃないか?そしてそれは、お前達の店長でもあるこのオレの仕事でもあるという事だ!ガハハハ!」



 店長はフィオナの頭に優しく手を置き、満面の笑みを浮かべる。



「力仕事から探索、護衛、運搬、修理、その他、依頼されれば何でもやる!何でも屋『星屑の軌跡』へようこそ!フィオナ!ガハハハハ!」



 嬉しそうに笑うフィオナを優しい眼差しで見つめるエリア、更に賑やかになって上機嫌な店長。

 ルクスはこの愛おしい瞬間を永遠に忘れないように、構えたカメラのシャッターを、全員が写ってるのを確認して静かに押し込んだ。




 ――カシャ。



「――カシャ。」 



 シャッター音が、静かに2度鳴った。



「あれ?まただ…おかしいなぁ〜。この間もそうだったけど、切ってるのは一枚だけなんだよな……。

 今度、カメラのメンテナンスをしっかりした方が良さそうだな!」




 首を傾げるルクスの頭上で、今日も月は天より地を覗き、満天の夜空から碧金の光が遍く照らし、ただそこに佇み続け、明日も、また天より地を覗き続ける。





 [次のページへ]


今回の話は、フィオナが何でも屋『星屑の軌跡』のファミリーになるまでの話でした!

更に賑やかになった、何でも屋のメンバーが活躍していく姿を楽しみにして、『物語絵』を楽しんで欲しいです!  シロ。


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