「空中からのファーストジョブ」
>「ガハハ! アイツらの遠征も今終わったところだったんだよ!」
拠点の奥から店長が豪快な笑い声を響かせる中、ガルムお手製の焼き菓子と紅茶が大きなテーブルに並べられる。
香ばしいバターとアーモンドの香りが、あらゆる依頼をやり遂げ駆け抜けてきたルクスたちの疲れをじんわりと溶かしていった。
テーブルを囲み、温かい紅茶を啜りながら自己紹介が始まる。
>「私はエリアよ! 歳は300歳ぐらいかしら! ここに入ったのはね、私がちょっと魔法を失敗しちゃった時に、ルクスと出逢って一緒に解決したのがキッカケなの。そこで店長にスカウトされて、一員になったってわけ!これからよろしくね!」
(あれをちょっとの失敗として片付けちゃうところが普通ではないけどな〜巻き込まれた、俺としてはツッコミたい所ではある……。)
>「フィオナだよ♪ フィオナはね、お星さまがこれから起きる予知を教えてくれたから、スターグレイドの森でずーっとルクスちゃんとエリアちゃんを待ってたの! そしたらね、ホントに二人が来てくれたんだよ! 途中で化けたニセモノの二人が現れてビックリしちゃったけど……ルクスちゃん達がやっつけて、フィオナを外の広い世界に連れ出してくれたの♪ だからお星さまの予知は、いっつも大正解なんだよ♪」
>「俺の名前はガルムだ!まぁ〜とにかく甘い物が好きだ!趣味は見ての通りお菓子を作ることだ。新しいメンバーも増えて俺の腕が更になるぜ!アハハ!宜しくなエリアにフィオナ!」
>「初めまして、エリアちゃん、さん? フィオナちゃん。僕は、ノア……。」
そう短く呟いてノートを閉じると、それ以上は言葉を続けず、少し恥ずかしそうに視線を落としてしまった。
すかさず、その傍らでふわりと浮遊する四季の妖精が、羽をパタパタと輝かせながら身を乗り出す。
>「わたしは四季の妖精イリスよ♪ この子はノア! ちょっと口下手で人見知りだけど、『可愛い女の子が二人も増えて凄く嬉しいな、よろしくね』って今、心が叫んでるわよ♪」
>「……! いっ、イリス、余計なこと言わなくて、いい……」
ノアは顔を真っ赤にして、相棒の妖精――イリスの口を慌てて小さな手で塞ごうとする。
ガルムが「オレの菓子、口に合うといいが」と渋い重重低音を響かせる横で、イリスはクスクスと笑った。
予知の通り、お姉さんのように優しい妖精イリスの姿にフィオナは目を輝かせ、ガルム特製の焼き菓子を頬張って「おいし〜い♪」と顔を綻ばせる。エリアも「な、なかなかやるじゃない」と上から目線で吹かせようとするが、ガルムのデカさとノアたちの不思議な関係性に少し気圧されているのが微笑ましい。
新旧メンバーの心が温かいお茶を介して一つになった、まさにその時だった。
バァン!! と音を立てて、拠点の奥の扉が開く。
>「お前たち! 団欒のところ悪いが、緊急の仕事だ!」
手配書をひらつかせながら、店長が血相を変えて飛び込んできた。
>「ブルームタウンの裏山に、別領地から逃げ出した中型の魔獣が紛れ込んだ! 街に降りてくる前に捕獲してほしい。遠征帰りのガルムたちと今さっき帰ってきたばかりのルクスたちにも悪いが……全員揃った初の任務だ。6人で行ってこい!!」
ルクス、エリア、フィオナ。そしてガルム、ノア、イリス。
初めて全員の視線が交差し、火花が散る。ノアは静かにコクリと頷き、その瞳に静かな闘志を宿した。
>「よし、任せて! 6人最初の初仕事、私の最高の魔術で、一瞬で現場まで連れて行ってあげるわ!」
エリアがふんぞり返り、自慢の『魔導書』をバサリと開いた。ガルムが「おお、頼もしいな」と感心する横で、イリスが「ノアも『すっごくワクワクする!』って言ってるわ!」と代弁する。みんなの期待の視線を一身に浴び、エリアは不敵に微笑んだ。
>「いくわよ! ――『CoronaCoccinea』」
エリアが地面を思い切りドォン!と踏み抜く。
刹那、彼女を中心に、床一面へ幾何学模様の魔法陣が爆発的に広がった。それはまるで、燃え盛る太陽の王冠のような、目も眩むほどの眩い緋色の光輪。部屋中の空気がビリビリと震え、大魔術の奔流が6人を包み込んで、世界をぐにゃりと歪ませる――。
これ以上ないほど完璧な、至高の転移魔術。
そのハズだった………。
次の瞬間、ブルームタウンの拠点の空気は消え去り――。
「え?」
最初に声を漏らしたのはルクスだった。
頬を打つのは、凄まじい突風。
眼下に広がるのは、見渡す限りの大荒野。そして、遥か十メートル下に見える地面。
エリアの瞬間移動魔法は見事に発動したが、転送された位置は、目的地の『真上(上空十メートル)』という最悪の空中だった。重力に従い、全員が悲鳴を上げて真っ逆さまに落下していく。
ノアは声も出ずに目を丸くしているが、イリスが「ノアが『エリアのバカ魔女おおお!』って絶叫してるわ!」と空中で代わりに叫んだ。
ガルムは大人の余裕を見せるかのように「全員!舌を噛むの気をつけろ!」と笑いながら告げる。
>「エリア、お前またやったなあああ!!」
ルクスは猛烈な風に煽られながらも、冷静に空中で鋭く息を吐いた。
彼が指先を鋭く払う。
――その、瞬間だった。
「 ――カシャ。 」
突風が吹き荒れる空中に、場違いなほど鮮明な、カメラのシャッター音が響き渡る。
それが誰の手によるものか、確かめる猶予などなかった。
ルクスが念じた瞬間、落下していた全員の『重力ベクトル』だけが、ピンポイントで真上へと反転した。
ドスンという衝撃の代わりに、全員の体がふわりと空中で静止する。ルクスの精密なコントロールのおかげで、まるで透明な空中床の上に立っているかのように、安全に浮遊した状態を作り出したのだ。
>「ふぅ……。おいエリア、せめて着地くらいは地面にしてくれよな」
ルクスがやれやれと額の汗をぬぐった、その時だった。
>「ル、ルクスちゃん……! 大変、お星さまが、お星さまが何か教えてくれてる!」
隣で空中浮遊していたフィオナが、突然パニックを起こしてルクスの腕にがっしりとしがみついてきた。彼女の頭上には、淡い光を放つ星がポップに弾け、明滅している。
>「えっ、フィオナ!? 今それどころじゃ……いや待て、もしかして魔獣の居場所か!?」
この窮地を脱する決定的な予言か。それとも……。ルクスがゴクリと唾を呑んだ瞬間、フィオナは深刻な顔で言い放った。
>「ち、違うの! ……今日の店長の晩御飯は、カレーライスだって!」
余りにも予想外すぎる発言につい
>「知るかそんなことーーー!! うわっとっと!? しまっ——」
腕を激しく引っ張られた拍子に、ルクスの集中力が一瞬だけ途切れてしまった。
完璧だったはずの局所的な重力反転が、強制的に解除される。
「 「 「 「あ」 」 」 」
次の瞬間、反転していた重力を失った六人は、今度こそ一寸の猶予もなく、上空十メートルの高さから大荒野の地面へと、派手に墜落していったのだった。
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団欒の中、緊急の依頼で初めて6人での仕事に向かうが、やはり彼女はいつも通りでした!見た目と使う呪文はカッコいいんだけどな〜なんて思ったり!
まぁ、なんとかなるでしょ!なんとかなるよね?ルクス!
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