「星占いは少女に未来を語る」
『光と紅が訪れる時、運命の出逢いを招きその出逢いは同時に災いをも招くだろう。』
天候は晴れ。浮遊都市ルミナリア。ルクス達の住む街フローラ地区ブルームタウンには今日も心地好い風が吹く。
「エリア!そっち行ったぞ!逃すなよ!!」
「任せなさい!『アレア・クィントゥス・ゲミナティオ』」
『アレア・クィントゥス・ゲミナティオ』完全なる運任せの5から成る分身。どんな効果をもつ分身なのかは術者エリアにも知る術は無い。
[エリアが魔法を唱え、ボコボコボコッ!と5人の分身が現れる]
「さぁ!私の美しき分身たち!そこらへんを優雅に飛んでる生意気な『孔雀』を捕まえるわよ!突撃ーーーっ!!」
1.エリア(だるだるモード)
「え〜、超絶メンドクサイ。動きたくな〜い。ていうか、本体の君がやりなよ〜。私、今から床でお昼寝するから……スヤァ」
2.エリア(反抗期モード)
「ハァ!? なんで私がアンタの命令を聞かなくちゃいけないわけ? 私は私よ! 今日から私が本体! アンタが孔雀を捕まえに行きなさいよ、この帽子泥棒!」
3.エリア(食いしん坊モード)
「お腹空いたぁ〜! ねぇ〜誰か何か食べる物持ってない!? 羊!? 十万匹の羊はどこ!? ジンギスカンにしたら美味しそうだったのにぃぃぃ!」
4.エリア(サイコゲラモード)
「あははははっ! ウケる! 誰も言う事聞かないね〜! チームワーク崩壊じゃん! あはははは、傑作、傑作ーっ!!」
5.エリア(無口モード)「・・・・・・・・・・・・・・・(スンッ……と佇んでいる)」
「ちょっとぉぉぉ!! お願いだから真面目にやってよ私の分身のみんな!! 目の前に今回の依頼のターゲット『孔雀』がいるのよ!?」
「おいおい、何やってんだ、こんな時に……。というか、エリアの精神状態どうなってんだよ……。あー、もう! なぁなぁ、そこのエリア達! 俺からも頼む! ちょっとだけでいいから、俺たちに手を貸してくれないか?」
「ちょっとルクス、無駄よ! 術者の私が言っても言う事を聞かないのよ? 術者でもないただの遅刻魔のあなたが言ったところで、聞くわけないじゃな――」
だが、世界の因果が、かすかに火花を散らした。
ルクスの声に引き寄せられ、ふと彼の顔を見つめた5人の分身エリアたち。その瞬間、彼女たちの魂の輪郭が、微かに、けれど激しく揺らぐ。
「(――何、この男の子。見たことある気がする。ううん、違う。別のどこかで、私、この人と……?)」
1.エリア:「……あれ? なんか、彼のためなら動いてもいいかなって気分になってきちゃった……(むくり)」
2.エリア:「べ、別にアンタのためじゃないんだからね!? でも、彼が困ってるなら……ちょっとだけ暴れてあげてもいいわよ!」
3.エリア:「彼に美味しいもの奢ってもらうために、私、頑張っちゃう!!」
4.エリア:「あははっ! いいね! おもしろそう! 彼のお手伝い、やっちゃおうよー!」
5.エリア:「(コクン……とルクスを見つめて深く頷く)」
「なんで私の言う事は無視したのに、ルクスの一言で全員ガチ協力体制に入ってんのよぉぉぉぉぉ!!? 私の威厳どこ行ったの!?」
「(エリア達の急な態度の変化に引き気味で)あ、あはは……。ま、まあ理由はともあれ、今は『孔雀』の捕獲が優先だ! 折角みんなが協力してくれるって言ってんだから、確実に捕獲するぞ!!」
(……分身エリアたちの協力によって、ついに孔雀を袋小路へ追い詰めるルクス)
「よし、そこだ……ガシッ!!捕まえたッ!!」
ルクスが意を決して飛び込み、その両手でしっかりと孔雀を抱きかかえた。捕獲成功だ。
だが、安堵したのも束の間。ルクスの腕の中で、孔雀の尾羽にある無数の『星の目』が一斉にギラリと銀色に明滅した。
バサァッ!!!
「うわっ!?」
眩い光が弾け、ルクスは思わず腕を緩めて目を瞑る。耳の奥で、「ーーカシャ。」というあの奇妙なシャッター音が響いた。
光が収まり目を開けると、すでに腕の中に鳥の感触はなかった。孔雀はまるで最初から幻だったかのように、光の粒子となって完全に消え去っていたのだ。
「……消えた? クソ、逃げられたか……!」
何でも屋としてのコンビでの初仕事はいきなりの失敗。ルクスがガックリと肩を落としたその時、石畳の上にハラリと、一枚の美しい羽が落ちてくるのが見えた。
夜空の深い青と、きらめく星図をそのまま形にしたような、孔雀の尾羽だ。
「これは……?」
ルクスが何気なくその羽に指先で触れた、その瞬間だった。
――ドクンッ!
激しい鼓動と共に、ルクスの脳裏へ凄まじい密度の『映像』が流れ込んできた。
血の滴るような赤い空。ボロボロに崩壊した見知らぬ街並み。そして、満身創痍になりながらも、一人で冷たい闇の奥へと歩いていく――自分とよく似た、けれど決定的に擦り切れた「孤独な男の背中」。
「はぁっ……、がはっ……!?」
息が詰まり、ルクスはその場に膝をついた。頭を抱え、荒い呼吸を繰り返す。
「今のは……何だ? 誰の記憶だ……?」
当然、19歳のルクスがそんな光景を知るはずもない。何が起こったのか全く理解できず、ルクスはただ呆然と、手の中にある冷たい羽を見つめることしかできなかった――。
お茶の香りが漂ういつもの事務所へと戻ったルクスとエリアは、店長に「捕獲失敗」を報告する。しかし、落ち込んでいる暇はなかった。
「ガハハ! 気にするな! 失敗は誰にでもあるさ! それよりルクス、エリア、戻って早々悪いが次の依頼だ!」
「えぇー! もう次の仕事ですか!?」
店長から渡された地図が指し示していたのは、Starglade。
『星の光が差し込む森の空き地』と呼ばれる、鬱蒼とした大森林の奥深くに存在する、隠された小さな小さな秘境だった。
「依頼内容は、そのスターグレイドの聖域にしか咲かない秘薬、『星涙草』の回収だ。なんでも、夜空の星が流した涙が固まって地上に芽吹いたと言われる、美しい瑠璃色の薬草さ。頼んだぞ、お二人共!」
深い木々に覆われたスターグレイドの森は、木漏れ日がまるで星屑のようにきらめく、幻想的で少し不気味な場所だった。
「ねぇルクス、なんだかこの森、誰かに見られてるような気がしない?」
「ああ、警戒して進もう。秘境ってくらいだから、何が起きるか……」
ルクスが身構え、エリアを背に庇うようにして深い茂みをかき分けた、その時だった。
まるで、二人がこの瞬間にここへやってくるのを、最初からずっと知っていたかのように――。
木々の隙間から差し込む一筋の星光に照らされて、その少女は静かに佇んでいた。
年齢は12、3歳ほどだろうか。
ふわふわとした桜色の長い髪を大きなリボンで結び、まるで星空をそのまま仕立て直したかのような、フリルいっぱいの可愛らしいドレスを身にまとっている。
片手には星の意匠があしらわれた小さなステッキ、もう片方の腕には、愛らしい白うさぎのぬいぐるみを大切そうに抱きかかえていた。
少女は驚く様子もなく、ただ天使のような純真無垢な笑顔をルクスたちへ向けると、鈴を転がすような愛らしい声で、嬉しそうに歌うように言った。
「――お星さまの予言通り♪ 待ってたよ、ルクスちゃん、エリアちゃん!」
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《Alea Quintus Geminatio》
(アレア・クィントゥス・ゲミナティオ)
について。
今回の分身は、それぞれが別の性格を宿したパターンでしたが、
他のパターンだと。
巨人化、小人化、性別反転、種族転生、‥‥‥など、他のパターンもあり得ましたが、エリアの今回の『イレギュラー』が繰り出したのは、別の性格を宿す分身だったみたいです!




