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物語絵[イレギュラー]〜浮遊都市ルミナリアの何でも屋『星屑の軌跡』〜  作者: 蒼猫
11ページ目

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「日頃の感謝を込めて」


 『エデン』からGATEを通って中層界と低層界へ帰る時は、行き先の出口を選択することができ、低層界のGATEが五つに対して中層界には7つのGATEがあるのだとか。俺は中層界なんて行ったことがないから、住んでる人や、街や地形がどうなってるのか気になるなと思ったり……。


 低層界と中層界は、丁度中心に位置する「境界ノきょうかいのみなと」から飛行船が飛んでいて、自由に行き来できるようになってはいる。だけど、俺たちのいる浮遊都市ルミナリアの低層界はとんでもなく広大な土地面積があり、太陽の光が当たらない区域もあれば、逆に太陽ばかりが差し込む区域もある。

 さっきゼノさんが言っていた低層界にある五つのGATEのうち二つは、この2区域にある街なんだろう。もちろん、今まで一度も行ったことないから分からないのだけれど。


(何でも屋『星屑の軌跡』の活動範囲も少しずつ広がってきてはいるけど……まだまだ、もっと頑張らないといけないな)


「皆さん準備は宜しいですか?GATEを通ります」


「よし!帰ったら飯を食おう!!それに、ガルムさん達も帰ってきてるかも! 」

「わたしもお腹ぺこぺこーー!」

「店長さん、今日はなに作ってるかな?」


 カイルさんの促しで、俺たちは光のGATEへと足を踏み入れた。



――ビュン――ビュン――ビュン――


……『ルクス・ヴェイン生体記録完了』

……『エリア・ノクス生体記録不能』

……『フィオナ・ルース生体記録完了』

……『対象者エリア・ノクスを除き――二名の新規生体プログラム登録完了――』





「到着しました。ここがブルームタウンのGATEです。次『エデン』へお越しになる場合はコチラのGATEからお通りください。本日はお疲れ様でした」


「あらっ!?思ってたより井戸の中って広いのね! 」


 エリアが驚いた声を上げた通り、井戸の中は家具を置いても生活できるぐらいの広さがあった。こんな使われていない古びた井戸の中に、『エデン本部』へと繋がるGATEがあることを街の住人は誰も知らないだろう。けど、次からの『エデン』への正規ルートでの行き方を知れたのは、これから先のゼノさん率いる騎士団との付き合いを考えると、とても大きい収穫だ。俺はここまで送ってくれたカイルさんに感謝をしつつ幾つかの気になっていた質問を投げかけてみた。


「カイルさん!ここまで送ってくれてありがとうございます!」


「私は団長から頼まれた仕事をこなしただけですから」


「あの、送ってもらって申し訳ないですけど……幾つかカイルさんに聞きたいことがあるので、質問しても大丈夫ですか?」


「国家機密情報以外なら、答えれる質問には答えられますよ」


「ありがとうございます!質問は三つです! 」


 まず一つ「カイルさんはゼノさんとの付き合いは長いのですか?」二つ目「カイルさんはどうして騎士団に入隊したのですか?」最後の三つ目「『空白戦争』について教えてください」一番聞きたいのは三つ目の質問だが、俺の質問に対し、カイルさんは淡々とした口調で答え始めた。


「一つ目の質問ですが、私とゼノ団長は一年前に初めてお会いしました。二つ目の質問に繋がるのですが、私は元々騎士団に配属される予定のない王宮の清掃担当でした。ゼノ団長が王宮で、淡々と清掃をこなす『普通』な私の姿を見て騎士団の団員にスカウトしたと聞きました」


「えっ!ゼノさんの直接スカウトだったんですか!?」


「ええ。その理由は明白でした。問題ばかりの起こす団員に頭を悩まされる日々を、少しでも解消する為の『精神安定剤』として、スカウトされたのが二つ目の質問への答えです」


(そういえば、以前ゼノさんと初めて話した時に「王国の天才たちだけど規律という言葉を知らない」って頭を抱えてたもんな……。スカウトの理由が精神安定剤ってのは驚きだけど、なんとなくゼノさんの気持ちが少し分かっちまうな)


 一呼吸おいて、俺は本命である三つ目の質問へと切り出した。


「……カイルさん。『空白戦争』って一体なんですか?さっきゼノさんに調査報告をした時に出た『空白戦争』ってワードを聞いた時の様子が明らかにおかしかったんです」


 カイルさんがほんの数秒間の沈黙の後、『空白戦争』について静かに口を開いた。


「『空白戦争』とは、その名の通り『空白』のように記録が消え去った戦争のことです……。貴方達が知らなくてもおかしくはありません。何故なら、私自身も『空白戦争』については深くは知りませんし、戦争の記録が殆ど残ってないのです。知っていることがあるならば……騎士団の一般兵には戦争の被害にあった遺族の方が多数所属していること。そして、ゼノ団長はその戦争で生き残った兵の一人だった、ということくらいです……」


(ゼノさんが戦争で生き残った兵の一人で、記録が殆ど残っていない戦争……。ゼノさんに『空白戦争』のことを聞くのはやめておいた方が良さそうだな……)


「すみません、貴重なお時間をお借りしてしまいました!ありがとうございます!!」


「では、私は本部へ戻ります。お疲れ様でした」


 カイルさんは再びGATEを通って『エデン』へと帰還していった。

 さて、俺たちも我が家へ帰ろう。店長も俺たちが帰ってくるのを待ってるだろうし、それにさっきから横の二人が眠そうに目を擦っている。


「二人とも帰るぞ!! 」

「やっと帰れるわ――! 」

「フィオナ、お腹ぺこぺこ……」


 井戸の外へ出ると、すっかり陽がおちており、街灯が灯す光が街の賑やかさに同調するように明るく照らしていた。街の飲食店から漂う胃袋を刺激する香りに、俺の食欲スイッチが完全に押し切られる。気づけば俺は早足になりながらも、事務所のドアノブに手をかけ扉を開いた。玄関に入った瞬間、更に食欲を刺激するスパイスの香りと、バチバチバチッとキッチンの方から揚げ物の音が聞こえてくる。


「店長!ただいま戻りました!! 」

「いい香りね!今日の晩御飯はなにかしら?」

「店長さん♪ただいま! 」


 店長がキッチンの方から顔を覗かせながら「おう!おかえり!今日の晩御飯は揚げ物パーティーだ!ガハハ!! 」と、相変わらずの豪快な野太い声で迎えてくれた。


「いぇーい!揚げ物パーティーだ――!」

「フィオナ、パーティーって言葉好き!!」


 俺たちがガヤガヤと盛り上がってると、背後のドアの開く音が聞こえた。


――ガチャ。


「おう!?なんだなんだ!賑やかだな――! 」

「みんな!ただいま!!」

「……ただいま。皆さん、お久しぶりです……」


「ガルムさん!ノアにイリスもお帰りなさい!!依頼帰りですか?」

「そうだよ!緊急依頼で行ってきたの!! 」

「その依頼についてだが……少し話しておきたいことがある」


 ガルムさんが普段見せたことのない少し険しい表情を浮かべた。


「まあ、この話は飯を食いながらでも話そう。それはそうと、今日のデザートはパフェだぞ!!楽しみにしておけ! 」


 ガルムさんはそう言って「店長!今帰ったぞ!キッチン少し貸してくれ!」って言いながらキッチンの奥の方へと消えていった。


「今日のデザート、パフェだって!楽しみね!」


「お前たち!できたぞ!!」


 店長が巨大なお皿に、てんこ盛りに積まれた揚げ物の山をドンッ!とテーブルの真ん中に置く。みんなでテーブルを囲み、手を合わせた。


「まずは、日頃から真面目に仕事に励んでくれてありがとう!そのお陰で徐々にだが、何でも屋の名が街を越えて広がっているのを実感している。今日は久しぶりにみんな揃っての晩御飯だ!沢山食べてくれ!ガハハ! 」


「「「いただきます!!」」」


 こうして、何でも屋『星屑の軌跡』の賑やかな揚げ物パーティーが始まったのだった。



「――カシャ」



[次のページへ]




 


 


久しぶりに何でも屋のみんなが揃う会です!!

基本的に別々で依頼をこなすので、一緒になる場面が少ないですが、揃った時の賑やかさはいいですね!

次回のお話で萌星が一区切りを迎えます。

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