「アストレア王国特務管理局 『エデン』」
アストレア王国を表す六つのシンボル。
『星』ールミナリアの夜空を導く光。民を導く王国の希望を表す。
『翼』ー自由と守護の象徴。民を優しく包み込む力を示す。
『王冠』ーアストレア王国の王の象徴。正義と責任を背負う証。
『城』ー王国と民の平和な暮らし。未来を築く礎を示す。
『剣』ー正義を貫く意志。光で闇を断つ力を示す。
『宝石』ールミナリアの大地が誇る宝。繁栄と誇りの象徴。
浮遊都市ルミナリアの上層界に位置し、『エデン』に城を構えるのが、この世界の唯一の国アストレア王国である。
アストレア王国によって、上層界、中層界、低層界の三層の国の繁栄と民の暮らしを見守り、この国の剣と盾となる王国最強の騎士団。
それが、王国特務管理局 『エデン』である。
「よし!フィオナの件もあるし、さっさとゼノさんの所に報告しに行こうぜ!!」
「そうね!早くしないと本当に牢獄に入れられちゃうわ!えへへ♪」
──と、勢いよくブルームタウンを飛び出したまでは良かったのだが。
「……ねぇ、ルクス。」
「ん?どうしたエリア?」
「貴方、その『エデン』って場所への行き方って知ってるの?」
「いや?全然分からない。ルミナリアの上層界にあるってこと以外は何も」
「ちょっとおおおおお!!??知らないで走ってたの?――俺について来い!!みたいな感じ出しておいて??」
「エリアだって知らないだろ!うーん。誰か行き方知ってる奴いないのか?」
ルクスが顎に手を掛け、どうしたものかと考えてると、胸元から何やら奇妙な音が聞こえてきた。
「――ニキ……――ニキ……」
胸元を辺りを触り、ルクスはハッと思い出す。
イヌガミから貰った、通信機能がついた『ルクス人形』の存在のことを。
服の中からそのルクス人形を取り出すと、スピーカーから大音量の声が響き渡った。
「――アニキ!――アニキ!」
「なんだ?俺に用か?」
「あっ!やっと出てくれやしたね!!アニキ何か困ってることがあるんじゃねぇですか?」
「(通信先の向こうで、手をさすりながら、ニヤニヤといやらしい顔をしてるのが、目に見えて想像がつくが、情報屋のイヌガミなら『エデン』への行き方を知ってるかもしれない……)」
「なぁ?上層界にある『エデン』への行き方って知ってるか?」
「アニキ!ワイら情報屋『星屑の裏庭』の情報量を舐めてもらっちゃ困りますぜ〜!勿論、知ってますぜ!」
エリアはルクスの隣で人形のスピーカーに耳を近づけ、フィオナは二人の後ろから恐る恐る覗き込んでる。
「で、情報を得るには情報と交換だったか?」
「へへへ、さすがアニキ、話が早くて助かりますぜぇ!ええ、タダより高いものはございやせんからね。ワイらがほしい情報は……ズバリ、アニキの奇妙な『能力』についての情報ですぜ!!」
その言葉にルクスは思わず「えっ?俺の情報?」と声を漏らさずにはいられなかった。
彼の最大の武器でもある謎の能力ーー『空へ落ちる重力反転』。
身をもって経験したことがあるイヌガミには、喉から手が出るほど欲しい情報の一つであった。
「今だに俺にも謎なところがあるけど、分かっていることなら話せるぜ!」
ルクスは人形に向かって、自身の能力の『法則』を淡々と語り始めた。
『能力の基本』――ルクス本人及び、能力の対象範囲に入った周囲にも影響を及ぼすが、範囲のコントロールが可能。今の最大範囲は街全体がすっぽり埋まる程の広範囲。
『発動した時の変化』――対象範囲の重力のベクトルの向きが逆さまになり、空へ向かって落ちる。落ちる速さは発動前の半分程度の速さ。
精密なコントロールによって空中で固定させることが可能だが、範囲が狭い。
『危険性』――能力がルクスの意思なく発動し、制御できなくなる可能性を秘めている。
「今、分かってるのはこんな感じだ!」
「こいつは特級品の情報ですぜぇ! ありがたくワイの裏庭にコレクションさせていただきやす!」
人形の向こうで、ペンを走らせるようなカサカサという音が響く。
「情報は渡したぜ。次はそっちの番だ。どうやって上層界の『エデン』へ行くんだ?」
「へへ、ではワイらの情報の開示と行きますぜ! アストレア王国の心臓部、上層界『エデン』へ昇るための唯一の方法……それはねぇ、アニキ──」
ゴクリと固唾を飲んで耳を澄ます。
「『エデン』と浮遊都市の中層界、低層界はですね、ワープポイントを潜って行き来出来ますぜ!なんでも、中層界と低層界で何かあった時にすぐに駆けつける為らしいですぜ!」
「ふーん。なるほど……。――って、ちょっと待て!!なんでお前そんな国家機密レベルの情報を知ってるんだよ!?」
「へへへ……情報提供者の事は余り話したくはないですが、アニキたちがこれから『エデン』に行くってんなら話してもいいかもしれませんね〜」
人形の向こうで、イヌガミはどこか遠い目をするようにして、その情報を得た時のことを話し始めた。
ハルモニアでいつものように情報屋をやっていた時のことですぜぇ。
獣の耳を生やし、腰には禍々しい二本の短剣――『双牙短剣』を携えた、明らかにこの街の住民とは違う危険な雰囲気を纏った女性が一人、雑路を歩いていやした。
溢れる好奇心と情報屋の勘から、ワイはつい声をかけたんですぜぇ!
「どうも!どうも!ワイはこの街で情報屋『星屑の裏庭』をやってるイヌガミってんだ!ただならぬ雰囲気を纏ってたんで、声掛けさせてもらいましたぜぇ!」
「なんだ?情報屋なんてこの街にあったか?」
「つい最近にオープンしたんですぜぇ」
「私に何か用か?――お腹が空いてるんだ。早めに頼む」
ワイは飯でもてなしたら、何か美味い情報が手に入ると思いましてね。
『お腹空いてるなら、ワイがオススメの店に案内しますぜぇ! 肉とかどうです?』って言ってみたんです。
そしたら……先ほどまでのクールな口調と雰囲気から、一転しちまいやして
「に、肉……だと。今、肉と言ったか? 肉肉肉肉にくぅぅぅぅ――! 早く早く!! 案内しろよー!!」
『!?』ってなりやしたよ。
あれは本当にびっくりしましたぜぇ、完全に別人になってやしたからね。
その話を聞いてか、ルクスとエリアが顔を合わせながら、「「アイツかー!!」」と意思疎通させるのであった。
……まぁ、その後は極上の肉料理でもてなして、彼女の気分が良くなったところで色々質問させてもらいやした!
まずは何者なのか?
「へへ、直球で聞いたら『騎士団の団員だ』と答えやした! あの若さで最強の騎士団の一員ってんだから驚きですぜ」
何故この街にいるのか?
「どうやら、この街が生まれ育った故郷らしいですぜぇ!近くまで来ていたから立ち寄ったって言ってやした!」
騎士団の団員はどうやって各層を行き来しているのか?
「これこそアニキたちの知りたい情報! 彼女曰く、『実は街の至る所に隠されたワープポイントがある』らしく、騎士団はそれを通って瞬時に移動しているみたいですぜ!」
「なるほどな……。因みにその女性誰か分かったぞ!そりゃ、ゼノ団長が頭を抱えるわけだ……。」
「騎士団のセキュリティ情報、ガバガバね!えへへ♪」
「もしかして、アニキ会ったことある人だったんですかい?だからあの時、「君さ、何処かで会わなかったけ?」って聞かれたんですなぁ〜謎が解けましたぜぇ!」
「ワープポイントの存在は分かった。で、その肝心のワープポイントは、このブルームタウンのどこにあるんだ?」
「それなら、『時計台の裏』にあるみたいですぜぇ!」
「分かった!助かった!またなにかあったらその時は頼む!」
「こちらこそ、アニキの力になれてよかったですぜぇ〜!情報屋『星屑の裏庭』をよろしくお願いしやす!へへっ」
プツ……。
小気味いい電子音と共に、ルクス人形からの通信が切れた。ルクスはそれを手際よく服の胸元へと仕舞い込む。
「よし、行き先は決まったな! ブルームタウンの時計台裏だ!」
「すっごく楽しみだわ!えへへ♪」
「フィオナも♪」
賑やかな雑踏をすり抜け、3人は街の中央広場にそびえ立つ古びた時計台へとたどり着いた。
普段は人通りの少ないその時計台の裏手へと回り込み、周囲を注意深く探索する。
すると、壁面に刻まれたアストレア王国の紋章――『星』と『翼』のデザインが施された、隠し扉のような不可思議な魔術回路が浮かび上がっていた。
「これね……。間違いないわ、空間転移の魔力が出てるわ!」
「よし、全員揃ってるな? フィオナ、ちょっと眩しくなるかもしれないから、しっかり俺たちの手を握ってろよ」
「うん♪」
エリアとルクスがフィオナの手をそれぞれの左右から優しく包み込む。
ルクスが紋章の中央へそっと手を触れると、カチリ、と世界の歯車が噛み合うような音が響き、視界が真っ白な光で埋め尽くされた。
浮遊感が身体を包み込んだのも束の間。
次に瞼を開けた瞬間、3人の眼前に広がっていたのは、ブルームタウンの景色とは一線を画す、圧倒的な光景だった。
大理石で美しく舗装された果てしない道。
そして、遙か天空にそびえ立つ、白銀の城。
そこは、世界の法と正義を司る、王国最強の騎士団の本拠地。
――アストレア王国特務管理局 『エデン』
「――カシャ」
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物語絵[イレギュラー]〜浮遊都市ルミナリアの何でも屋『星屑の軌跡』〜
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