「調和の街ハルモニア」
ここからは、何でも屋としての依頼を受けながら、少しずつ世界の謎にも主人公たち『星屑の軌跡』とエデンの騎士団の面々は踏み込んでいくことになります!
※この世界の周期についての設定や登場キャラクターのプロフィールなどまとめた内容を投稿するのでお待ちください!!
北へ三日の街道を越えた先に、一つの街がある。
その街の名は、『ハルモニア』。
森と川に抱かれたその街には、人と人ならざる者が共に暮らしている。
・獣の耳を持つ者。
・尾を揺らす者。
・翼を広げ天を舞う者。
彼等は違いを隠さず、違いを恐れず、それぞれの暮らしを紡いできた。
市場には香辛料と果実の香りが流れ。
石畳には獣の足跡と、人の足跡が並び。
子供たちの笑い声は、種族など忘れて風に溶けていく。
誰もが、この街を『調和の街』と呼んだ。
だからこそ。
最近、この街で目撃されるようになった奇妙な『粒子』は、誰の胸にも小さな影を落としていた。
空気に溶ける白い欠片。
光なのか。灰なのか。
それとも世界そのものが零れ落ちているのか。
まだ、その答えを知る者はいない。
けれど。その『答え』を追う者たちが、今、まさに向かっていた。
……というのは、歴史の教科書か吟遊詩人の歌にでも出てきそうな、じつに格好のいい前置きだ。
現実の『答えを追う者たち』の状況はといえば、格好良さとは少しばかり遠い、いつも通りの賑やかさに包まれていた。
ガチャ……。騎士団からの直々の依頼を受け(国家転覆罪への酌量の余地)ルクスとエリアは隣街へ向かう準備をしていた。
今回の依頼は、『バグのような粒子』の調査だが、正直何処から手をつければ良いのか分からない。
なにも成果を得れなかったらと思うと、ルクスは不安で頭が痛くなった。
そんなルクスを他所にエリアはいつも通り元気で、今日もまた何かをやらかしそうな雰囲気。
「よし!準備出来たわね!今回は私の移動魔法ではなくて、この子に連れて行ってもらいまーす!えへへ!」
また以前のように転移したらそこは、地上ではなく空でした!みたいな事は、もう懲り懲り。
「俺、初めて乗るけど大丈夫なのか?」
「大丈夫よ!跨っていれば目的地まであっという間にひとっ飛びよ!えへへ!」
エリアの大丈夫は大丈夫ではない事をルクスは、これまでの経験を踏まえて、ため息がでる……はぁ〜。
「(どうか、どの神様でもいい。無事着きますように………。)」
そう心の中で願った。
風を切る音。「ヒュー」「ヒュンヒュン」「ビュー」あらゆる風を切る音がルクスの耳と体に刺さる。
「ちょっとルクス、そんなにしっかり掴まらなくても、シルフィーは絶対に落としたりしないわよ? えへへ♪やっぱりこの子は最高ね!!」
「いや、落ちるだろ普通!! 垂直の崖を音もなく全力疾走して、谷間を空中ジャンプで飛び越えるなんて聞いてないぞ!? カメラを庇う俺の身にもなってくれ!」
ルクスは必死の形相で、目の前の美しい白い背中にしがみついていた。
彼らが跨っているのは、この世界の高山に棲むという伝説的な聖獣――『霊峰の駿馬羊』シルフィード・アイベックスである。
細身で美しい体躯、無駄なく引き締まった長い四肢としなやかな首。シルクのように滑らかな純白の毛並みは風になびき、馬のような美しい「たてがみ」と「尾」が、背後へ流れる雲の中でキラキラと輝いている。天に向かって緩やかに湾曲する細い三日月型の角はゴールドに煌めき、聖なる魔力を宿すその瞳は、静かにすべてを見つめながら前進していた。
移動のスタイリッシュさは筆舌に尽くしがたい。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
「ほらほら、ちゃんと前を見て!」
「前見たら余計に怖いんだよ!」
「――カシャ。」
シルフィーは蹄に特殊な磁場や軽い風の魔法を纏わせ、眩い青光の軌跡を残しながら、垂直の崖を「まるで平地を駆け抜けるように」音もなく優雅に駆け上がっていく。さらに、深い谷間に差し掛かれば、跳躍の瞬間に空中を一歩だけ力強く蹴り、文字通り「空を駆ける」ようにして対岸へと着地するのだ。
そんな世界の神秘を体現したかのような走りの背中で、ルクスは必死に胸を押さえた。
「おいエリア……。ガルムさんたちもいない中、なんで俺たち二人だけでこの任務をやってるか分かってんのか? 本来なら国家転覆罪で牢獄行きだったんだぞ!」
目の前の魔女からは、反省の二文字があまり感じられない様子だ。
「ゼノ団長が『報酬無しの依頼』って形で酌量してくれなきゃ、今頃お前も俺も冷たい塀の中だったんだからな!?」
「えへへ、分かってるわよー。でも、ルクスは私の『相棒』だし、ゼノ団長だって『不自然なバグのような粒子』の調査せよって言ってたじゃない。それに、こうして格好いいシルフィーに乗って旅ができるんだから、結果オーライよ!」
「お前のせいで巻き込まれた身にもなれ! 団長たちには申し訳なさしかないよ……。はぁ、でも、確かにこのシルフィーのおかげで、普通なら馬車で三日かかる北への街道を、一日足らずで突破できそうだけどさ」
ルクスは少しだけ生きた心地を取り戻し、愛用のカメラをしっかりと抱え直しながら、流れるように過ぎ去る絶景を見渡した。
シルフィーの蹄が風を切り、山脈を越える。
その視線の先、緑豊かな森と清らかな川に抱かれた、ハルモニアの街の輪郭が、少しずつ大きく見え始めていた。
やがて、美しい白い聖獣は速度を落とし、緑豊かな森を抜けて『調和の街・ハルモニア』の入り口へと滑り込むように優雅に降り立った。
シルフィーから降り、街へと一歩足を踏み入れた二人は、思わず息を呑む。
そこは、自分たちの住むブルームタウンとは全く異なる、異国情緒と神秘の入り混じった独特の空気が流れていた。
頭上を鮮やかな翼を広げて飛び交う有翼人、すれ違いざまに器用に尾を揺らす獣人の商人たち。
まるでファンタジーの絵本の中に飛び込んでしまったかのような錯覚を覚える。
「すごい……本当にいろんな種族が一緒に暮らしてるんだな……」
「えへへ、素敵な街ね。さて、さっそくゼノ団長に言われた『バグみたいな粒子』について、街の人に話を聞いてみましょうか!」
ルクスがカメラのファインダーを覗きながら頷き、二人は情報収集を始めようと市場の広場へと歩き出す。
「……あれ?」
「どうしたの?」
そこには、市場にて二つの見覚えのある姿がそこには映っていた。
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物語絵[イレギュラー]〜浮遊都市ルミナリアの何でも屋『星屑の軌跡』〜
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