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物語絵[イレギュラー]〜浮遊都市ルミナリアの何でも屋『星屑の軌跡』〜  作者: 蒼猫
9ページ目

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「星屑のシャッタ/未来の味」

 


「ブモオオオオオオオッ!!」



 自由になった『ガルガンチュア・ボア』が、大荒野の地響きと共に突進を再開する。



「エリア、もう一発何か足止めを!」



「わ、分かってるわよ! ――今度こそちゃんと泥沼をッ!」



 エリアが慌てて魔導書を開こうとした、その瞬間。隣にいたフィオナの頭上で、星の光がパチンと弾けた。



「ああっ! ルクスちゃん、お星さまがまた教えてくれた! 『エリアちゃんの魔法がゔぁーってなって、ガルムさんがドーンってなって、ノアちゃんがペンをシュッってやったら、全部上手くいく』って!」



「また失敗前提の予知かよ!?」



 ルクスが叫ぶが、もう止まらない。エリアが叫んだ呪文は、またしても大暴走を起こした。



「『泥濘の沼』――って、あれ!? 待って、出力が強すぎ――」



 ドゴォォォン!! とエリアを中心に巻き起こったのは、泥沼ではなく、荒野の激しい『砂嵐ダウンバースト』だった。



「うわあああ! 前が見えねえ!」



 荒れ狂う砂嵐ダウンバーストに視界を奪われ、ルクスたちが腕で顔を覆う。突進していた巨大イノシシも、猛烈な砂の壁に視界を遮られ、一瞬だけその巨体をよろめかせた。



「――お前たち、下がっていろ」



 その砂嵐ダウンバーストを割って歩み進み出たのは、これまで岩場で体が挟まり、ハチミツに夢中になり、新しいお菓子のレシピ作りに没頭していた巨漢、ガルムだった。



 彼の纏う空気が、一瞬で「甘党」から「元傭兵」のそれへと変貌する。その鋭い眼光に、ルクスたちは思わず息を呑んだ。

 ガルムは背中に背負っていた身の丈ほどもある大剣を、凄まじい風切り音と共に引き抜く。だが、その刃は魔獣を斬るためではなく、地面に向けて振り下ろされた。



「ハァァァァッ!!」



 ドッバァァァァン!!!



 ガルムが大剣を地面に全力で叩きつけると、大気が爆発したかのような衝撃波が走り、エリアの砂嵐ダウンバーストと完全に激突した。

 エリアの失敗した暴走魔術『砂嵐ダウンバースト』と、ガルムの超人的な身体能力による衝撃波。2つの規格外の力が噛み合った瞬間、奇跡の相乗効果が生まれる。砂嵐は一瞬にして魔獣を全方位から優しく包み込む「クッションのような乱気流」へと姿を変え、巨大イノシシの自由を傷つけることなく完全に奪い去ったのだ。



「ノア、今よ!」



 イリスが叫ぶ。すかさず、ノアの『沈黙の羅針盤コンパス』が光る。ノアはノートを開き、手にしたペンを空間に向けて「シュッ」と鋭く滑らせた。

 ノアの魔術によって、ガルムが作り出した乱気流の座標がノートにガチリと『記録こてい』される。

 風の檻に閉じ込められ、完全に身動きが取れなくなった巨大イノシシは、一本の毛すら傷つくことなく、大荒野の地面へとゴロリと横転した。捕獲、完全成功である。



「はぁ……。本当に、全員の失敗と実力が噛み合って成功しやがった……」



 ルクスがへたり込みながら、隣でドヤ顔をしているフィオナと、恥ずかしそうに魔導書で顔を隠すエリアを見て苦笑した。ガルムは大剣を背中に戻すと、「ふぅ、これでまたハチミツが採れるな」と早くも職人の顔に戻っている。



「いやいや、ガルムさん!ハチミツは砕けちゃいましたよ!でもそんなガルムさんが居てくれて助かりましたよ!ありがとうございます!」



「みんなみんな、大成功だよ♪ ねぇねぇ、せっかくだからみんなで写真撮ろうよ!」



 フィオナがルクスのカメラを指差してぴょんぴょん跳ねる。



「あ、いいなそれ。新メンバーも増えたことだしさ」



 ルクスは笑ってカメラを三脚に固定し、セルフタイマーをセットした。



「ほら、みんな集まって! エリアもノアもイリスも、ガルムさんも!」



 ハチミツと砂にまみれた6人が、大きなイノシシの前で肩を並べる。



「ちょっと、私が真ん中よ!」と威張るエリア、楽しそうに笑うイリス、ピースをするフィオナ、優しく微笑むガルム。ノアは少し照れくさそう。



 ――カシャ。 「ーーカシャ。」



 星屑のような光の粒子と共に、6人での初めての集合写真が、鮮明にカメラへと記録された。

 その、光が収まった静寂の一瞬だった。

 ルクスとエリアの視界の端に、あの『孔雀』の美しい尾羽が、陽炎のように一瞬だけ姿を現した。



「……っ!?」



 二人がハッとして目を凝らした瞬間には、『孔雀』の姿は風に溶けるように、影も形もなく消え去っていた。何かを見守るかのような、あるいは警告するかのような、奇妙な残像だけを残して。



「……ルクスちゃん、エリアちゃん? どうしたの?」



「いや……なんでもない。さぁ、街に帰ろう!」



 ……数時間後。ブルームタウンの何でも屋『星屑の軌跡』のホームへと、6人は帰ってきた。

 ノアは自室の机で、静かに今日の日記を綴っていた。

『本日、6人での初仕事。非常に非効率的で、けれど、……楽しかった』

 いつも淡々とした記録しか書かない彼のノートに、初めて刻まれた主観的な本音。書き終えたノアの口元に、本当に微かな、優しい笑顔が浮かぶ。



 ――カシャ。



「……!?」



 突然のシャッター音にノアが驚いて振り返ると、部屋の入り口からカメラを構えたルクスが、いたずらっぽく笑っていた。



「いい笑顔。それ、次の集合写真の横に貼っとくな!」



「……っ、消して……!」



 真っ赤になってノートで顔を隠すノアの部屋の向こうから、一階のロビーへと続く階段を通じて、ガハハという豪快な笑い声と、たまらなく香ばしいスパイスの香りが漂ってきた。



「お前たち! 6人での初任務の成功、おめでとう! 晩飯の準備はバッチリだぞ!」



 拠点の扉を開けると、エプロン姿の店長が大きな鍋を掲げて、最高の笑顔で6人を迎えた。



「今日の晩飯は、店長特製の元気もりもりカレーライスだーーー!!」



「「「「お星さまの予知、大正解ーーー!!♪」」」」



 フィオナが「ほらねっ♪」と大はしゃぎで万歳する横で、ガルムがさっそく「隠し味に、あの柑橘系ハチミツを入れてみよう」と鍋に近づいていく。

 トラブル続きで、ベタベタで、だけど最高に温かい。何でも屋『星屑の軌跡』の、賑やかな日常の夜が更けていくのだった。





「次のページへ」




遂にガルムの活躍シーンの登場回でもあり、フィオナの星占いによる未来予知の伏線回収がされ、暖かくて優しい。何でも屋『星屑の軌跡』の空気が伝わると嬉しいです!



「面白いと思ったら、ページ下部の【☆】で評価やブックマークをいただけると励みになります!」


引き続き

物語絵[イレギュラー]〜浮遊都市ルミナリアの何でも屋『星屑の軌跡』〜

を宜しくお願いします!

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