その後、本部では、、、
神捕獲隊が撤退してから、その日の夕方。
王都から遠く離れた山岳地帯。
巨大な岩山の内部に築かれた要塞。
そこが、**神を捕獲するぞ!!隊**の本部だった。
「隊長、お帰りなさい!」
「状況は!?」
「捕獲は成功しましたか!?」
次々と隊員が集まってくる。
しかし。
隊長は静かに首を横へ振った。
「失敗だ。」
一瞬で室内が静まり返る。
「まさか……。」
「あの隊長が?」
「対象は、それほどですか。」
隊長は会議室へ向かいながら答えた。
「それほど、ではない。」
「それ以上だ。」
---
円卓には幹部たちが集まっていた。
壁には歴代の捕獲対象の資料が並んでいる。
神獣。
古代竜。
精霊王。
どれも世界に名を残す存在ばかり。
隊長は一枚の紙を机へ置いた。
「新しい対象だ。」
表紙には大きく書かれている。
**捕獲対象 No.001**
**千羽千乃**
部屋中の視線が集まる。
「報告を始める。」
隊長は淡々と話し始めた。
「神格保持者。」
「飛行能力。」
「完全制御。」
「分身能力。」
「完全制御。」
「羽による遠距離攻撃。」
「完全制御。」
一人の幹部が眉をひそめる。
「羽とは?」
「翼から生成される無数の羽だ。」
「指の軌跡に従って飛翔する。」
「速度は極めて高い。」
「毒性あり。」
「ただし。」
隊長は続ける。
「敵意を持つ相手以外には使用しない。」
「……。」
幹部たちは顔を見合わせた。
「なるほど。」
「理性は保たれている。」
「むしろ。」
「かなり高い。」
---
隊長はさらに紙をめくる。
「続いて。」
「神龍。」
「召喚。」
「…………。」
誰かがペンを落とした。
「今、何と?」
「神龍だ。」
「純白の体。」
「真紅の瞳。」
「知性あり。」
「会話可能。」
「主を絶対的に守る。」
沈黙。
長い沈黙。
そして。
一人の老人が小さく呟いた。
「勝てるのか?」
誰も答えられなかった。
---
「結論を述べる。」
隊長は全員を見渡す。
「現在の戦力では。」
「捕獲成功率。」
「ゼロに近い。」
「では。」
「討伐を。」
その言葉が出た瞬間。
隊長の拳が机を叩いた。
ドンッ!
会議室が震える。
「討伐ではない!」
「我々の使命は何だ!」
全員が姿勢を正す。
隊長は静かに言う。
「神を暴走させないこと。」
「そして。」
「世界と共存することだ。」
「忘れるな。」
「神は敵ではない。」
---
その頃。
王都。
宿の庭。
「ミル!」
千乃が手を振る。
巨大だった神龍は、白い光に包まれた。
すると。
その身体はどんどん縮んでいき……。
「おお?」
ララが目を丸くする。
数秒後。
千乃の肩に乗れるくらいの、小さな神龍になっていた。
『これならば、人里でも問題あるまい。』
「かわいい!」
ララが飛びつこうとする。
『こら、急に抱きつくでない。』
「ごめーん!」
アイシィがくすっと笑う。
「私と同じですね。」
『ふむ。』
『大きい姿ばかりでは疲れるからな。』
真銀は苦笑した。
「お前も縮めるのか。」
『当然だ。』
『主と共に歩くなら、この姿の方が都合が良い。』
千乃はミルをそっと抱き上げる。
「これからよろしくね。」
『うむ。』
『我が主、千乃よ。』
そのやり取りを見ながら、ライは静かに呟いた。
「……また賑やかになりそうだ。」
宿には笑い声が広がる。
だが、その裏では。
教会、冒険者ギルド、恋愛ギルド、そして神を捕獲するぞ!!隊。
世界中の組織が、それぞれの思惑を胸に動き始めていた。
そして誰もまだ知らない。
神魔境界は、まだ始まったばかりだということを。




