神捕獲隊vs神
静寂。
王都の外れ。
宿を囲むように立つ二十人の冒険者。
対するのは。
たった一人。
いや。
正確には。
その背後に立つ四人の仲間。
そして。
六枚の光の翼を広げた少女。
千乃だった。
「……。」
神捕獲隊の隊長は、静かに千乃を見る。
「最後に確認する。」
「我々は、お前を傷つけるつもりはない。」
千乃は黙っている。
「ただし。」
老人の目が鋭くなる。
「抵抗するならば、相応の対応をする。」
その言葉に。
真銀の表情が変わった。
「相応の対応?」
低い声。
「捕まえると言っておいて、武器を構えて囲んでいる時点で……。」
「それはもう敵対行動だろ。」
千乃の翼が、わずかに揺れる。
「真銀。」
「大丈夫。」
千乃が静かに言う。
いつもの声とは少し違う。
冷静で。
感情の波が少ない。
「私が対応する。」
真銀は一瞬黙った。
「……千乃。」
「無理はするな。」
「うん。」
短い返事。
でも。
その目には迷いがない。
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最初に動いたのは、神捕獲隊側だった。
「第一班。」
「拘束術式。」
魔導師たちが杖を掲げる。
地面に巨大な魔法陣が広がる。
「神格存在用の拘束魔法か。」
ライが呟く。
「古代式だ。」
アイシィが少し驚く。
「普通の魔物相手ではありませんね。」
ララが拳を握る。
「千乃、大丈夫かな……。」
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魔法陣が完成する。
「発動。」
ズンッ。
空間そのものが重くなる。
普通の生物なら、立つことすら困難な圧力。
しかし。
千乃は。
ゆっくり空へ浮かび上がった。
「……。」
拘束魔法の影響を受けていない。
魔導師の顔色が変わる。
「効いていない?」
「そんな……。」
千乃は自分の手を見る。
「なるほど。」
「こういう感じなんだ。」
神化してから。
千乃は少しずつ能力の感覚を理解していた。
魔力の流れ。
空間の変化。
相手の力。
全部が以前より鮮明に感じる。
「でも。」
千乃は隊員たちを見る。
「捕まる気はないよ。」
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次の瞬間。
千乃の姿が消えた。
「!?」
一瞬。
誰も反応できない。
シュンッ。
気付いた時には。
千乃は空中にいた。
「飛行能力……。」
隊員が呟く。
だが。
「速い。」
追えない。
神靴。
神格。
翼。
すべてが噛み合っている。
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「ならば!」
大盾を持った大男が前へ出る。
「俺が止める!」
巨大な盾を構え、跳躍する。
「神でも!」
「進む道を塞げば止まる!」
千乃は彼を見る。
敵意。強い。
でも、殺意ではない。
だから。
「……。」
羽を一枚だけ浮かべる。
「一枚?」
男が笑う。
「舐められたか!」
千乃は指を横へ払った。
ヒュン。
一閃。
真紅の羽が走る。
男の盾の横をすり抜け。
背後の地面へ突き刺さった。
ドンッ。
衝撃。
男は目を見開く。
「……。」
次の瞬間。
盾を持つ腕から力が抜けた。
「なぜ……。」
千乃は答える。
「動きを止めただけ。」
「毒の効果も、最低限。」
羽は相手の内部へ干渉する。
だが。
千乃は調整していた。
倒すためではない。
止めるため。
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隊長の目が細くなる。
「制御している……?」
「神の力を。」
「完全ではない。」
「だが。」
「危険すぎる。」
千乃の周囲に、さらに羽が浮かぶ。
ヒュン。
ヒュン。
ヒュン。
静かな音。
しかし。
二十人全員が理解した。
一枚一枚が。
自分たちを狙える。
「……。」
隊長は剣を抜く。
「全員」
「——本気でいくぞ。」
空気が変わった。
神捕獲隊。
世界最強クラスの冒険者たちが。
初めて、本気で神格保持者へ向き合う。
その瞬間。
千乃の背後に、巨大な魔法陣が浮かび上がった。
真紅。
そして。
純白。
「……?」
真銀が目を見開く。
「千乃?」
千乃自身も驚く。
「え?」
魔法陣の奥から。
大きな瞳が覗く。
純白の鱗。
真紅の目。
世界でも数少ない存在、”神龍”。
「……ミル?」
千乃が呟いた。
次の瞬間。
空を震わせる咆哮が響いた。
「グォォォォォォォォ!!」
神龍カミル。
愛称、ミル。
召喚。
神捕獲隊の全員が。
初めて。
表情を崩した。




