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神靴

「じゃあ。」


「今日は歩く練習の続きだな。」


翌朝。


王都の外れにある広い草原。


人通りも少なく、思い切り身体を動かせる場所へやって来ていた。


千乃は新しく作った魔道具を見下ろす。


真紅を基調としたロングブーツ。


**《終焉踏破神靴》**


今では、みんなから「神靴」と呼ばれている。


「準備はいい?」


真銀が尋ねる。


「うん!」


千乃は笑顔で頷いた。


「昨日より、もう少し速く歩いてみる。」


---


最初はゆっくり。


一歩。


また一歩。


まだ少しぎこちない。


それでも昨日とは違う。


身体が靴に馴染み始めている。


「いい感じだ。」


真銀が静かに言う。


「焦るなよ。」


「うん!」


千乃は歩幅を少し広げた。


コツ。


コツ。


コツコツ。


歩く音が軽くなる。


「……あれ?」


千乃は驚いた。


「昨日より軽い。」


「神靴が使用者に最適化してるんだろう。」


ライが冷静に分析する。


「魔力の流れが昨日より安定している。」


アイシィも頷いた。


「歩くほど馴染んでいるみたいですね。」


ララは嬉しそうに飛び跳ねる。


「すごーい!」


---


「少しだけ。」


千乃は真銀を見る。


「走ってみてもいい?」


真銀は少し考えた。


そして。


「無理はするな。」


「危ないと思ったら止まれ。」


「うん!」


千乃は深呼吸する。


右足を少し引き。


前を見る。


「いくよ!」


タンッ!


地面を蹴った。


「!」


一歩。


二歩。


三歩。


歩く。


いや。


もう走っていた。


「走れてる……!」


風が頬を撫でる。


髪が揺れる。


メタルピンクのゆるふわウェーブがふわりと広がる。


「すごい!」


ララが大喜びする。


「千乃が走ってる!」


真銀も思わず笑った。


「本当に走れたな。」


千乃は止まらない。


「楽しい!」


今まで感じたことのない感覚。


自分の足で。


風を切って進む。


それだけで胸がいっぱいになった。


---


「ねぇ!」


千乃が振り返る。


「ライ!」


「競走しよ!」


ライは少し驚いた。


「私と?」


「うん!」


「……。」


ライは真銀を見る。


真銀は肩をすくめた。


「付き合ってやれ。」


「了解した。」


ライは前へ出る。


「では。」


「本気では走らない。」


「えー!」


ララが笑う。


「ライ、手加減するんだ!」


「リハビリだからな。」


「当然だ。」


千乃は頬を膨らませた。


「それじゃ意味ないよ!」


「本気で来て!」


ライは少し困ったように笑う。


「……分かった。」


---


「よーい。」


ララが腕を上げる。


「スタート!」


二人が同時に飛び出した。


最初は。


ライが少し前。


さすが狼。


速い。


「千乃!」


真銀が叫ぶ。


「無理するな!」


「大丈夫!」


千乃は笑った。


その瞬間。


神靴の魔法陣が淡く輝く。


キィン……


真紅の魔力が足元を包む。


「え?」


ライが目を見開く。


「速い。」


一歩ごとに。


千乃の速度が上がっていく。


トン。


トン。


トンッ!


地面を蹴るたび。


身体が軽くなる。


風景が流れる。


「まさか……。」


ライも本気で加速する。


狼本来の脚力。


普通なら誰も追いつけない。


しかし。


千乃は止まらない。


さらに速く。


さらに前へ。


「うそ!?」


ララが叫ぶ。


「追いついた!」


次の瞬間。


ヒュンッ!


「……!」


ライの横を、千乃が駆け抜けた。


「えぇぇぇぇぇっ!?」


アイシィが目を丸くする。


真銀も思わず立ち上がる。


「ライを……。」


「抜いた?」


ライは全力で走る。


それでも。


距離は少しずつ開いていく。


「これは……。」


ライは苦笑した。


「負けだ。」


数百メートル先。


千乃はゆっくり止まり、振り返った。


少し息は上がっている。


でも。


表情は、とびきりの笑顔だった。


「走れた!」


「しかも!」


「すっごく速い!」


ララは勢いよく飛びつく。


「千乃、速すぎるー!」


アイシィも拍手する。


「神靴……すごいですね。」


ライは歩いて戻ってくると、小さく笑った。


「認めよう。」


「今の速度なら。」


「私より速い。」


「え?」


千乃が目を丸くする。


「本当に?」


「本当だ。」


ライは素直に頷いた。


「もう、この中で一番速いのは千乃だ。」


その言葉に。


千乃は少し照れながら神靴を見つめた。


「ありがとう。」


そっと靴を撫でる。


「これからも、一緒にいろんな景色を見ようね。」


真紅の神靴は、淡く光るように輝いていた。

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