表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
86/94

逃げろー!

「三。」


真銀が静かに数え始める。


恋愛ギルドの査定員たちは警戒し、一斉に身構えた。


「来ます!」


「包囲を狭めてください!」


「逃走経路を塞いで!」


ラブリー・スミスは腕を組み、自信満々に頷く。


「もう逃げられません!」


「二。」


真銀は小さく笑う。


千乃も口元を緩めた。


ララはぴょんぴょん跳ねながら準備運動。


ライは静かに地面を蹴る体勢に入る。


アイシィは小さな翼をぱたぱたと動かした。


「一。」


「今!」


その瞬間だった。


「散開!」


五人が一斉に別方向へ飛び出した。


「分かれたぁぁ!?」


「どっちを追えば!?」


「全部です!」


「無理です!」


王都のあちこちへ査定員が散っていく。


---


ララは人混みの中をぴょんぴょん跳ね回る。


「こっちだよー!」


「待ちなさい!」


「追いつけるかなー!」


楽しそうだ。


完全に遊んでいる。


---


ライは建物の影を音もなく駆け抜ける。


「右へ行ったぞ!」


「いや、左だ!」


「……違う。」


ライは屋根の上から静かに呟く。


私は、ここだ。(目、付いてるのか?)


「うわぁぁぁ!?」


査定員たちは完全に振り回されていた。


---


アイシィは空をふわふわ飛びながら、街の上をゆっくり旋回する。


「ドラゴンが上です!」


「誰か飛べませんか!」


「だから飛べません!」


「そうでした!」


「諦めるの早い!」


---


そして。


真銀は千乃の車椅子を押しながら裏道を駆けていた。


「あと少しだ。」


「うん!」


車輪が石畳を軽やかに転がる。


「今回は逃げ切れるかな?」


千乃が笑う。


「……いや。」


真銀は苦笑した。


「たぶん無理だ。」


「なんで?」


「勘。」


「真銀まで!?」


二人が笑った、その時だった。


「見つけましたぁぁぁぁぁっ!!」


「やっぱり!」


ラブリー・スミスが角から飛び出してきた。


「恋愛観測は!」


「止まりません!」


「どこから来るんですか!」


「愛です!」


「絶対違います!」


そのやり取りを見ていた通行人が吹き出した。


「あははっ!」


「また恋愛ギルドだ!」


「今度は何日ぶり?」


「八日だって!」


「早すぎるだろ!」


街中に笑いが広がる。


査定員たちまで苦笑していた。


「ギルド長……。」


「やっぱり早いですよ。」


「いいえ!」


ラブリーは胸を張る。


「恋愛に早すぎるということはありません!」


「でも査定は早すぎます!」


職員からツッコミが飛ぶ。


---


その様子を見ていた千乃は、小さく笑った。


「なんだか。」


「平和だね。」


真銀も周囲を見渡す。


世界修正体との死闘。


命懸けの戦い。


あの絶望を知っているからこそ。


こんな騒がしい日常が、少し愛おしく思えた。


「……そうだな。」


「平和だ。」


ララが戻ってきた。


「千乃ー!」


ライも静かに合流する。


「全員無事だ。」


アイシィもふわりと降りてくる。


「お待たせしました。」


五人が自然と並ぶ。


その姿を見たラブリーは、急に真剣な表情になった。


「……やっぱり。」


「この五人。」


「本当に素敵ですね。」


今までのような勢いはない。


静かに微笑みながら、ラブリーは続けた。


「恋人とか。」


「そういうものだけじゃありません。」


「仲間を信じること。」


「家族のように支え合うこと。」


「それも、大切な愛の形です。」


千乃は少し驚いたように目を瞬かせた。


「ラブリーさん……。」


「だから。」


ラブリーは、にっこり笑う。


「次の定期査定は!」


「三週間後です!」


「延びた!」


千乃が思わず声を上げる。


「八日じゃない!」


「職員のみんなに止められました!」


後ろでは査定員たちが一斉に頷いていた。


「さすがに八日は短すぎます!」


「ようやく説得できました!」


「ギルド長、お願いしますから予定は守ってください!」


ラブリーは照れくさそうに笑う。


「えへへ。」


その様子に、千乃たちも思わず笑ってしまう。


青空の下。


笑い声が王都に響いていた。


束の間の穏やかな日々は、まだしばらく続きそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ