恋愛ギルド包囲網ver.2
「では!」
「これより第二部!」
ラブリー・スミスが勢いよく指を鳴らした。
パンッ!
「……まだあるんですか。」
真銀が思わず呟く。
「もちろんです!」
「査定だけで終わる恋愛ギルドではありません!」
その瞬間。
建物の角や路地裏、屋根の上から次々と人影が飛び出してきた。
「第一班、配置完了!」
「第二班、包囲完了!」
「第三班、逃走経路封鎖しました!」
「第四班、恋愛相談ブース設置完了です!」
「第五班、記録係準備完了!」
「第六班、告白タイミング予測開始!」
「第七班、尊さ観測中!」
「いや、多すぎません!?」
千乃のツッコミが王都に響く。
ざっと見ただけでも二十人以上。
全員、恋愛ギルドの制服を着ている。
ラブリーは両手を広げ、高らかに宣言した。
「恋愛ギルド総勢二十七名!」
「本日の目的は!」
「特別観察対象No.001の進展確認です!!」
「そんな大人数で確認することですか!?」
「します!」
即答だった。
---
「では質問です!」
ラブリーがノートを開く。
「最近、お二人で手を繋ぎましたか?」
「繋いでません!」
千乃が即答する。
「では、お姫様抱っこは?」
真銀が咳払いをする。
「……必要だったからだ。」
「はい、記録!」
「必要なお姫様抱っこ確認!」
カリカリカリ……
記録係が猛スピードで書き始める。
「いや、そこ書くんですか!?」
「もちろんです!」
ラブリーは満面の笑みだ。
「命を守るためのお姫様抱っこ。」
「非常に重要な恋愛要素です!」
真銀は頭を抱えた。
「頼むから、その発想をやめてくれ……。」
---
その時だった。
「ギルド長!!」
一人の査定員が駆け込んでくる。
「新しいデータです!」
「何ですか!」
「世界修正体との戦闘記録を分析したところ!」
「千乃さん!」
「真銀さんを守ろうとした回数!」
「三百四十七回!」
「真銀さん!」
「千乃さんを守ろうとした回数!」
「三百五十二回!」
周囲が静まり返る。
「……。」
「……。」
ラブリーが震え始めた。
「尊い……。」
「ギルド長!?」
「尊すぎます……。」
ハンカチを取り出し、目元を押さえる。
「お互いが、お互いを守ろうとしているなんて……。」
「理想です……!」
千乃は恥ずかしくなって俯いた。
「数えてたの……?」
ライがぼそっと呟く。
「数える方も大したものだ。」
アイシィも苦笑する。
「恋愛ギルドらしいですね。」
---
「というわけで!」
ラブリーが突然、大きく手を振り上げた。
「全員!」
「包囲開始!!」
「えぇぇぇ!?」
二十七人の査定員が一斉に動く。
「「「「「逃がしません!」」」」」
「「「「「今日こそ進展を!」」」」」
「「「「「二人きりで話してください!」」」」」
「ちょっと待ってください!」
千乃は慌てて車椅子の車輪を動かす。
「真銀!」
「分かってる!」
真銀は苦笑しながら千乃の車椅子を押し始めた。
ララが前へ飛び出す。
「逃げるよー!えいえいおー!」
ライが周囲を確認する。
「右は塞がれている。」
アイシィが空を見上げた。
「上なら空いています。」
真銀は千乃を見る。
「千乃、どうする?」
千乃は一瞬考えて。
にやり、と笑った。
「……逃げよう。」
「うっす。」
恋愛ギルド二十七人。
対するは。
世界を救った少女と、その仲間たち。
王都の街を巻き込んだ、またしても大逃走劇が始まろうとしていた。




