定期査定のお時間でぇぇぇぇす!!
「恋愛ギルド定期査定のお時間でぇぇぇぇす!!」
王都の大通り。
その声が響いた瞬間。
千乃たちは、全員同じ反応をした。
「……。」
「……。」
「……。」
沈黙。
真銀はゆっくり空を見上げる。
ララは耳をぺたんと伏せた。
ライは目を閉じる。
アイシィは小さく翼を畳んだ。
そして千乃。
「……あの。」
「ラブリーさん。」
「はい!」
元気よく返事。
金髪にピンクのメッシュ。
ハート型メガネ。
いつもの姿。
恋愛ギルド長、ラブリー・スミス。
「前回の査定って……。」
「確か。」
千乃は指を折る。
「えっと……。」
「八日前じゃなかったですか?」
「その通りです!」
ラブリーは笑顔で頷く。
「だから来ました!」
「なんで!?」
千乃のツッコミが響く。
「普通、数か月ごとじゃないんですか!?」
「普通ならそうです。」
ラブリーは胸を張る。
「ですが!」
「あなたたちは普通ではありません!」
「断言された……。」
真銀が呟く。
ラブリーはどこからともなく大量の書類を取り出した。
「前回査定から八日間。」
「世界修正体討伐後の精神状態。」
「神魔境界覚醒による関係変化。」
「突然の失踪事件。」
「三日間の捜索。」
「再会時の抱擁。」
「そして――」
一枚の紙を掲げる。
「本日のチンピラ撃退事件!」
千乃の顔が引きつる。
「そこまで記録してるんですか!?」
「もちろんです!」
「恋愛観測に不可能はありません!」
「それ恋愛関係あります!?」
ラブリーは真剣な顔で頷く。
「あります。」
「……。」
「心配する気持ち。」
「守りたいという想い。」
「再会した時の感情。」
「全て恋愛要素です。」
真銀が少し視線を逸らす。
「……。」
千乃も少し赤くなる。
「いや、その……。」
ララがぴょんと跳ねた。
「千乃、照れてる!」
「ララ!」
ライが静かに言う。
「事実だ。」
「ライまで!?」
アイシィは小さく笑った。
「仲が良いのは、良いことです。」
---
数分後。
臨時査定会場。
なぜか街の一角にテーブルが用意されていた。
そして。
千乃と真銀の前には。
恋愛ギルドカード。
ラブリーは眼鏡を直す。
「では。」
「第二回、特別観察対象No.001査定を開始します。」
真銀がため息をつく。
「本当にやるのか……。」
「もちろんです。」
ラブリーはカードを見る。
「まず。」
「好感度変化。」
ぺら。
「前回より上昇。」
「……。」
「信頼度。」
ぺら。
「限界突破。」
「……。」
「相性。」
ぺら。
「測定不能。」
「……。」
真銀が眉を寄せる。
「測定不能って前も言ってなかったか?」
「はい。」
ラブリーは頷く。
「ですが。」
「今回は理由が追加されました。」
「理由?」
ラブリーは新しい欄を見る。
そこには。
**世界を救った後も変わらない関係性**
と書かれていた。
「普通なら。」
「英雄になったり。」
「力を得たり。」
「立場が変わったり。」
「関係性にも変化が出ます。」
「しかし。」
ラブリーは千乃を見る。
「あなたたちは。」
「何も変わっていません。」
千乃は少し驚く。
「……。」
真銀も黙る。
「それが一番すごいことです。」
ラブリーは笑った。
「だから。」
「今回の査定結果。」
カードをめくる。
「発表します!」
千乃が少し身構える。
ララも興味津々。
ライも耳を動かす。
アイシィも覗き込む。
そして。
ラブリーが大声で叫んだ。
「特別観察対象No.001!」
「千羽千乃さん!」
「夜坂真銀さん!」
「進展率――」
間。
「前回より……」
「0.1%上昇!!」
「えっ!?」
千乃が驚く。
真銀も目を見開く。
「0.1だけ!?」
ラブリーは真剣な顔で頷いた。
「はい。」
「ですが。」
「重要な0.1%です。」
「なぜなら。」
「この二人の場合。」
「0.1%でも奇跡です。」
その場にいた全員が妙に納得してしまった。
そして。
ラブリーは最後に一枚の紙を取り出す。
「ちなみに。」
「今回の特別項目があります。」
「……嫌な予感がする。」
真銀が呟く。
紙には大きく書かれていた。
**神魔境界覚醒後も恋愛進展が遅い理由調査**
千乃は頭を抱えた。
「そこ調べるんですか!?」
王都の人々は笑う。
世界を救った少女。
世界を守った仲間たち。
そして。
彼女たちの日常は、今日も少しだけ騒がしい。




