世界と周りの視線
星の箱の外。
千乃が帰還してから、世界は少しずつ変化していた。
表向きは、平和。
魔物の大規模侵攻もない。
国同士の争いもない。
しかし。
人々の間では、一つの話題が広がっていた。
「千羽千乃。」
その名前。
世界修正体を倒した少女。
仲間を守り続けた少女。
そして。
神でも魔王でもない、新たな存在。
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王都。
冒険者ギルド本部。
普段なら依頼の声や、武器の音で騒がしい場所。
しかし、その日は違った。
「本当に本人なのか?」
「間違いない。」
「世界修正体を倒したあの子だ。」
冒険者たちが話している。
受付の前には大量の報告書。
千乃に関する情報。
捜索時の記録。
戦闘記録。
そして、謎の魔力反応。
ギルド長は資料を読みながら、深く息を吐いた。
「……規格外にもほどがある。」
隣の職員が苦笑する。
「以前からそうでは?」
「いや。」
ギルド長は首を振る。
「強い冒険者なら何人も見てきた。」
「だが、これは違う。」
「力だけじゃない。」
机の上の一枚の報告書を見る。
そこには。
世界修正体との戦いの記録。
そして。
仲間を守るため、自身だけが傷を負ったこと。
「この少女は。」
「自分が傷付くことを選んだ。」
「だからこそ、世界が反応したのかもしれん。」
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同じ頃。
恋愛ギルド本部。
「緊急会議です!」
「資料を追加してください!」
「千羽千乃・夜坂真銀専用ファイル、第三冊目を!」
「もう三冊目!?」
職員たちは慌ただしく動いていた。
部屋の中央。
ラブリー・スミスは、真剣な表情で資料を見る。
「……。」
いつもの明るい雰囲気は少ない。
「ギルド長。」
「どうされました?」
ラブリーは静かに眼鏡を直す。
「この二人。」
「以前から特別でした。」
職員が頷く。
「はい。」
「命を預け合う関係。」
「互いを最優先する関係。」
「ですが。」
ラブリーは新しいページを見る。
そこには。
神魔境界の文字。
「今は。」
「世界規模で特別になりました。」
一瞬の沈黙。
そして。
いつもの笑顔が戻る。
「ということで!」
「定期査定です!」
「早いです!!」
職員が叫ぶ。
「まだ前回から数日ですよ!?」
「関係ありません!」
ラブリーは拳を握る。
「恋の進展に、時間は関係ないのです!」
「いや、そこに世界規模の存在設定を混ぜないでください!」
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その頃。
王都の街道。
千乃たちは歩いていた。
正確には。
千乃は車椅子。
真銀が横を歩き。
ララ、ライ、アイシィは魔物の姿で同行している。
周囲の人々が、少しずつ気付く。
「あれ……。」
「もしかして。」
「千羽千乃?」
声が広がる。
千乃は少し困った顔になる。
「やっぱり目立ってる?」
真銀が答える。
「世界を救ったんだ。」
「今さらだろ。」
「うぅ……。」
ララがぴょんと跳ねる。
「千乃、有名人!」
ライは周囲を見る。
「警戒は必要だ。」
アイシィも小さく頷く。
「良い意味だけとは限りません。」
その言葉の通り。
遠くの建物の屋根。
一人の人物が千乃を見ていた。
「……見つけた。」
「神でも魔王でもない存在。」
「一体、何者なのか。」
風が吹く。
千乃はまだ気付かない。
世界中が。
彼女を見始めていることに。




