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世界が気づいた存在

星の箱の外。


遠い山脈の奥深く。


誰も近付かない古代遺跡。


そこには、長い年月眠り続けていた巨大な魔法石があった。


ひび割れた石碑。


消えかけた古代文字。


そして中央に置かれた透明な結晶。


本来なら、もう動くことはないはずのもの。


しかし。


その日。


ピキッ。


小さな音が響いた。


結晶に、一本の光が走る。


金色。


そして。


黒。


二つの色が絡み合いながら、ゆっくりと広がっていく。


「……ありえない。」


石碑の前にいた老人が、震える声を漏らした。


長い白髭。


古代魔法を研究し続けてきた賢者。


彼は震える手で、浮かび上がった文字を読む。


「神でもない。」


「魔王でもない。」


「その狭間……。」


「神魔境界。」


その言葉を口にした瞬間。


老人の顔から血の気が引いた。


「まさか……。」


「本当に存在していたのか。」


---


同じ頃。


魔族領。


暗い玉座の間。


一人の魔族が空を見上げていた。


「……。」


黒い霧のような魔力が、ゆっくりと揺れる。


「妙な気配だ。」


側にいた部下が尋ねる。


「何かございましたか?」


魔族は目を細めた。


「魔の力ではない。」


「だが。」


「神の力でもない。」


「では……?」


少しの沈黙。


そして。


「境界の者だ。」


その言葉に、周囲がざわめく。


「まさか。」


「伝説の……?」


魔族は静かに頷いた。


「神魔境界。」


「そんな存在が、まだ残っていたとはな。」


---


さらに。


人間側。


教会本部。


巨大な聖堂。


中央に置かれた神像が、突然光り始めた。


「司祭様!」


「神像が……!」


慌てた司祭が駆け寄る。


普段なら優しく輝くはずの聖なる光。


しかし。


今回は違った。


光の中に。


一瞬だけ。


黒い影が混ざった。


「……。」


司祭は言葉を失う。


「聖なる光に。」


「魔の影……?」


それは、本来ありえない現象だった。


「調査を。」


「すぐに。」


---


そして。


星の箱。


そんな世界中の騒ぎを知らない千乃は。


「うーん……。」


机の前で悩んでいた。


「どっちがいいかな。」


真銀が横を見る。


「何が?」


千乃は真剣な顔で二つの紙を見る。


「新しい魔法の名前。」


「……。」


真銀は少し嫌な予感がした。


「またノートか?」


「うん。」


千乃は笑う。


「昔書いた技、まだいっぱいあるから。」


ララが横から覗き込む。


「またすごいやつ?」


「たぶん。」


ライがため息をつく。


「たぶん、で済ませる規模ではない気がする。」


アイシィも小さく頷いた。


「千乃の“普通”は、少し危険です。」


「えぇ……。」


千乃が困った顔をする。


その時。


星の箱の管理核が、再び淡く光った。


ピロン。


新しい通知。


ノエルが確認する。


『お知らせがあります。』


『世界各地より、複数の高位存在が反応を確認しました。』


真銀の表情が変わる。


「高位存在?」


『はい。』


『お嬢様の存在を認識したものと思われます。』


千乃は首を傾げる。


「私、何かした?」


全員が一瞬黙る。


そして。


真銀が小さく言った。


「……たぶん。」


「存在してるだけで。」


千乃は目を丸くする。


「え?」


その瞬間。


星の箱の外。


世界中で。


一つの名前が、少しずつ広がり始めていた。


**千羽千乃。**


世界を救った少女。


そして。


神にも魔王にもならなかった。


未知の存在。

**神魔境界の者。**

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