一瞬だよ?え?うそ、3日?
眩しい光だった。
白い世界が、少しずつ遠ざかっていく。
身体がふわりと浮かぶような感覚。
「みんな……。」
その名前を口にした瞬間。
視界が真っ白に染まった。
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一方、その頃。
「まだ見つからないのか……。」
真銀はシリウスの手綱を握り締めたまま、小さく呟いた。
捜索が始まってから、もう三日。
街も。
森も。
湖も。
遺跡も。
王都周辺も。
考えられる場所はすべて探した。
それでも。
千乃はどこにもいなかった。
「真銀。」
ライが静かに近付く。
今は狼の姿だ。
蒼い瞳には疲労の色が浮かんでいる。
「冒険者ギルドから連絡だ。」
「北方面も異常なし。」
「……そうか。」
短い返事。
それ以上、言葉は出なかった。
ララは真っ白なうさぎの姿のまま、広場の隅で耳を垂らしている。
「千乃……。」
いつもの元気な声はない。
アイシィもミニサイズのアイスドラゴンの姿で空を見上げていた。
「どこにいるの……。」
恋愛ギルドも。
冒険者ギルドも。
王国騎士団までもが捜索に加わった。
それでも、成果はゼロ。
誰もが少しずつ希望を失い始めていた。
その時だった。
キィン……
空気が震える。
「あれ……?」
ララが耳をぴくりと動かした。
ライもすぐに顔を上げる。
「この魔力……。」
アイシィが翼を止める。
「……千乃?」
真銀も反射的に立ち上がった。
「どこだ!」
次の瞬間。
王都の空に。
巨大な真紅の魔法陣が、静かに浮かび上がる。
「なっ……!」
街中の人々が足を止める。
冒険者たちも。
恋愛ギルドの査定員たちも。
空を見上げた。
魔法陣は回転しながら、ゆっくりと光を放つ。
しかし。
その真紅の光の中に、一瞬だけ。
金色。
そして黒。
二つの光が混ざった。
ほんの一瞬。
誰も見間違いだと思うほど短い時間だった。
「今の……。」
ラブリー・スミスが目を見開く。
「金色と……黒?」
誰も答えられない。
魔法陣は静かに消えていく。
そして。
光の粒が一つ。
ゆっくりと地上へ降りてきた。
真銀は走る。
「千乃!!」
ララも。
ライも。
アイシィも。
全力で駆け出した。
光が地面へ触れる。
ふわり、と風が吹く。
そこに立っていたのは。
メタルピンクの長い髪。
金とピンクのオッドアイ。
見慣れた少女。
「……あれ?」
千乃はきょとんと辺りを見回した。
「みんな?」
その瞬間。
真銀は迷わなかった。
ぎゅっ。
勢いよく千乃を抱きしめる。
「えっ!?」
「ま、真銀!?」
「……。」
何も言わない。
ただ強く抱きしめたまま。
肩が小さく震えている。
「ど、どうしたの?」
「……。」
「真銀?」
ようやく聞こえた声は、かすれていた。
「……三日だ。」
「え?」
「お前が消えてから、三日経ってる。」
千乃の表情が固まる。
「……え?」
「うそ。」
「私、一瞬だったよ?」
その言葉に。
周囲が静まり返る。
ララは涙をぽろぽろこぼしながら飛びついた。
「千乃ぉぉぉぉぉぉ!!」
「ご、ごめん!」
「心配したんだからぁ!」
真っ白なもふもふが千乃へ抱きつく。
ライも静かに近付いた。
「……帰ってきてくれて、本当に良かった。」
その一言だけだった。
でも、その声には安堵が滲んでいた。
アイシィも小さな翼で千乃の肩へ降り立つ。
「おかえり。」
「うん。」
千乃は優しく微笑む。
「ただいま。」
その穏やかな笑顔を見た瞬間。
誰も気付かなかった。
千乃の胸元で、一瞬だけ。
黄金と漆黒が重なった小さな紋章が、淡く光って消えたことを。




