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従魔³のお願い

城の案内が一通り終わると、ノエルたちはそれぞれの仕事へ戻っていった。


広いロビーには、千乃たちだけが残る。


「ふぅ……。」


千乃は車椅子に座ったまま、小さく息をつく。


「疲れた?」


真銀が隣で尋ねる。


「ううん。」


千乃は首を横に振った。


「ちょっと嬉しくて。」


「嬉しい?」


「みんながここを気に入ってくれたから。」


真銀は小さく笑った。


「そりゃ気に入るだろ。」


「こんな場所、普通ない。」


その時。


「千乃。」


ライが少し真面目な表情で口を開いた。


「一つ、話がある。」


「ん?」


ララもアイシィも、自然とライの隣へ並ぶ。


いつもの賑やかな雰囲気とは少し違う。


「どうしたの?」


千乃が不思議そうに尋ねる。


ライは一度だけララとアイシィを見ると、ゆっくり口を開いた。


「俺たちは、お前の従魔だ。」


「うん。」


「それは誇りに思っている。」


ライの声は真っ直ぐだった。


「奈落でも。」


「世界修正体との戦いでも。」


「これから先も変わらない。」


千乃は静かに頷く。


「ありがとう。」


「でもな。」


ライは少しだけ表情を緩めた。


「従魔だからこそ、言いたいことがある。」


「?」


「もっと頼ってくれ。」


その一言に。


千乃は目を丸くした。


「え……?」


ララも勢いよく頷く。


「そうそう!」


「千乃、何でも一人でやっちゃうんだもん!」


「この前だって!」


「結界で全部自分が受け止めちゃって!」


「私たち、何にもできなかった……。」


ララの声が少しだけ小さくなる。


いつも明るい彼女には珍しかった。


アイシィも静かに続ける。


「守ってもらえて、嬉しかった。」


「でも。」


「守れなかったのは、悔しかった。」


ロビーに静かな空気が流れる。


千乃は言葉を失っていた。


真銀も何も言わない。


ただ、従魔たちの話を聞いている。


ライが一歩前へ出た。


「俺たちは従魔だ。」


「命令には従う。」


「命も懸ける。」


「だから。」


「お前も、一人で全部背負うな。」


「少しは、俺たちにも背負わせろ。」


千乃は俯いた。


胸の奥が、少し熱い。


「……ごめん。」


ぽつりと漏れた言葉。


「そんな顔するな。」


ライは苦笑した。


「怒ってるわけじゃない。」


「お願いだ。」


ララもしゃがみ込んで、千乃の目線に合わせる。


「私たち、もっと強くなる!」


「だから!」


「今度は一緒に戦お!」


アイシィも優しく微笑む。


「今度は、一緒に傷つこう。」


「一人じゃなくて。」


その言葉に。


千乃の瞳が少し潤む。


「……うん。」


「約束する。」


「今度からは、ちゃんと頼る。」


その返事を聞いた瞬間。


ララが満面の笑みで飛びついた。


「やったぁー!」


「わっ!」


車椅子ごとぎゅっと抱きしめられ、千乃が慌てる。


「ラ、ララ、苦しいって!」


「えへへ!」


「約束だからね!」


ライはそんな二人を見て小さく笑い、アイシィも穏やかに目を細める。


真銀は腕を組んだまま、その様子を見つめていた。


そして、小さく呟く。


「……俺の言いたいことも、全部言われたな。」


千乃は照れくさそうに笑って真銀を見る。


「ごめん。」


「謝るな。」


真銀は軽く千乃の頭をぽんと叩いた。


「約束、忘れんな。」


「うん。」


その返事は、小さいけれど力強かった。


星の箱のロビーには、穏やかな笑い声が広がる。


それは戦いの後だからこそ生まれた、新しい約束の始まりだった。

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