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スピカとシリウス

「お嬢様。」


翌朝。


ノエルの声で、千乃たちは城の玄関ホールへ集まっていた。


「本日は、星の箱内の案内をさせていただきます。」


「案内?」


千乃が首を傾げる。


「もうかなり見たと思うけど……。」


ノエルは小さく首を振った。


『まだ半分もご覧になっておりません。』


「半分も!?」


ララが驚く。


「広すぎない!?」


ライが静かに頷いた。


「昨日から思っていたが、本当に規模がおかしい。」


アイシィも城の天井を見上げる。


「小さな国みたい。」


千乃は苦笑する。


「昔、色々作ってたら……。」


「またその理由か。」


真銀が即座に突っ込んだ。


「便利な言葉だな、それ。」


「本当にそうなんだよ?」


「そこが一番怖い。」


そんな会話をしていると、ノエルが大きな扉を開いた。


その先には――


広い中庭。


そして。


二頭の美しい氷の馬がいた。


「……え?」


千乃が目を丸くする。


白銀の毛並み。


透き通るような氷のたてがみ。


足元には淡い光が流れている。


普通の馬ではない。


魔力で生み出された、星の箱専用の氷の幻獣。


「お嬢様専用の移動用魔獣です。」


ノエルが説明する。


『城内、城外、そして星の箱の外でも使用可能です。』


真銀が眉を上げる。


「外でも?」


『はい。』


『ゲートを通過できるよう調整しております。』


千乃は馬へ近づく。


一頭が優しく頭を下げる。


「かわいい……。」


触れると、冷たいはずの体が不思議なくらい温かい。


「名前は?」


千乃が聞くと、ノエルが答える。


『まだ決まっておりません。』


「じゃあ……。」


千乃は少し考える。


「この子は、スピカ。」


氷の馬が嬉しそうに鳴く。


「気に入ったみたい。」


ララが笑う。


「名前で分かるんだ。」


続いて真銀の前へ、もう一頭が歩いてくる。


こちらは少し力強い雰囲気。


真銀が手を伸ばすと、静かに鼻を寄せた。


「……。」


真銀は少し考える。


「シリウス。」


その瞬間、氷の馬が低く鳴いた。


「決まりだな。」


ライが頷く。


「相性が良さそうだ。」


ララが二頭を見る。


「二匹ともかっこいい!」


アイシィも微笑む。


「星の名前。」


千乃は頷く。


「星の箱だから。」


---


その後。


ノエルたちの案内で、城内を回る。


まず向かったのは、千乃と真銀の部屋。


「……。」


扉を開けた瞬間。


千乃が固まった。


以前より広い。


ベッドは大きく、柔らかな布。


机には魔法研究用の設備。


窓からは星の箱の景色が見える。


「お部屋を改良いたしました。」


ノエルが説明する。


『お嬢様のお身体の負担を考え、移動しやすい配置へ変更しております。』


『車椅子でも不自由なく生活できます。』


千乃は部屋を見回す。


「ありがとう。」


「すごく……過ごしやすい。」


真銀も静かに頷いた。


「これは助かるな。」


次に案内されたのは、それぞれの部屋。


ララの部屋。


白を基調にした、ふわふわの家具。


「最高!!」


入った瞬間、ララはベッドへ飛び込んだ。


「ふかふか!」


「……予想通り。」


ライが苦笑する。


次はライの部屋。


落ち着いた色合い。


本棚。


訓練用の空間。


「自分に合っている。」


ライは満足そうに頷いた。


アイシィの部屋は、氷の花が咲く静かな部屋。


「……落ち着く。」


アイシィは小さく笑った。


「ありがとう。」


最後に。


十体のゴーレムたちの部屋。


小さな部屋が十個。


それぞれ違う作りになっていた。


ノエルの部屋には管理記録。


フレアの部屋には料理道具。


クロムの部屋には工具。


ステラの部屋には本。


「ちゃんと自分たちの場所があるんだ。」


千乃が呟く。


『はい。』


ノエルが答える。


『我々も、この星の箱の住人ですから。』


その言葉に、千乃は嬉しそうに笑った。


そして。


最後に、ララがふと思い出したように聞く。


「そういえば!」


「私たちの従魔契約ってどうなるの?」


千乃が振り返る。


「え?」


ララは首を傾げる。


「ここ、星の箱だから。」


「私たち、普通に住んでいいの?」


その問いに。


千乃は少し笑った。


「もちろん。」


「みんなは従魔だけど。」


「それだけじゃないよ。」


「大切な仲間だから。」


ララがにっこり笑う。


ライも静かに頷く。


アイシィも目を細める。


星の箱。


ただの収納魔法ではない。


そこは少しずつ。


千乃と仲間たちの、新しい居場所になっていた。

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