イツモミテルヨ?
「……ようやく帰った。」
真銀が深いため息をつく。
恋愛ギルドの一団は、最後まで「尊いです!」を連呼しながら去っていった。
その場に残ったのは、静けさだけ。
……いや。
「ねぇねぇ!」
静かじゃなかった。
ララがぴょん、と千乃の車椅子の前へ回り込む。
「結局、カードどうなったの?」
「あっ。」
千乃も思い出したように声を漏らす。
「そういえば更新されたんだよね。」
真銀は嫌な予感しかしなかった。
「……見なくていい。」
「えー!」
「気になる!」
ララはすでに千乃の手元にある二枚のカードを見つけている。
「ほらほら!」
「千乃のも真銀のもあるよ!」
「勝手に渡していったからな……。」
ライが苦笑する。
「ほんと、あのギルドらしい。」
アイシィも頷いた。
「帰る前に、いつの間にか車椅子のポケットへ入れていた。」
「気付かなかった……。」
千乃はカードを取り出す。
表面は淡いピンク色。
中央には小さなハートの紋章。
そして、魔力を流すと文字が浮かび上がった。
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**恋愛ギルドカード**
**登録番号**
特別観察対象 No.001
**氏名**
千羽 千乃
**恋愛適性**
★★★★★
**天然指数**
測定不能
**鈍感指数**
測定不能
**現在の進展率**
99.999999%
**告白成功率**
99.999999%
**信頼度**
上限突破(更新)
**夫婦オーラ**
計測器故障
**総合評価**
> 問題点……本人。
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「本人って何!?」
千乃が思わず叫ぶ。
ララは大笑いした。
「ほんとに書いてある!」
ライも吹き出しそうになるのを堪える。
「……容赦ないな。」
「本人たちは否定しています。」
アイシィが下の文字を読み上げる。
「なお、周囲からは夫婦として認識されています。」
「追い打ちだ。」
真銀は頭を抱えた。
「俺のも嫌な予感しかしねぇ……。」
恐る恐るカードへ魔力を流す。
文字がゆっくり浮かぶ。
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**恋愛ギルドカード**
**氏名**
夜坂 真銀
**恋愛適性**
★★★★★
**鈍感指数**
やや高め
**保護欲**
限界突破
**千乃優先度**
最優先
**危険時行動**
> 自身より千乃を優先。
**総合評価**
> 問題点……本人。
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「おい。」
真銀の声が低くなる。
「何でこんなことまで知ってんだ。」
ライが真面目な顔で答える。
「恋愛ギルド七不思議の一つだ。」
「答えになってねぇ。」
ララはカードを覗き込みながら笑う。
「『千乃優先度・最優先』だって!」
「そのまんまだね!」
「笑うな。」
「えへへ!」
アイシィはふとカードの下を見つめた。
「まだ続きがある。」
「え?」
全員が覗き込む。
カードの一番下。
小さな文字が、ゆっくり浮かび上がっていく。
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**次回定期査定予定日**
未定
※進展があった場合、即時査定を実施します。
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全員が固まった。
「……即時?」
千乃が小さく呟く。
ライも眉をひそめる。
「つまり。」
アイシィが静かに続ける。
「何かあるたびに来る。」
「えぇぇぇぇ!?」
ララが一番大きな声を上げた。
「じゃあ手を繋いだだけでも?」
その瞬間。
全員の背筋に寒気が走る。
どこからともなく、風が吹いた。
カサッ。
近くの植え込みが、わずかに揺れる。
「…………。」
真銀はゆっくり視線を向ける。
誰もいない。
……はずだった。
葉っぱの隙間から、ハート型のメガネが一瞬だけきらりと光る。
「……気のせいだよね?」
千乃が恐る恐る聞く。
真銀は真顔で答えた。
「いや。」
「絶対いる。」
その直後。
植え込みの向こうから、小さな声が聞こえた。
「……尊い。」
「「「いるーーーっ!!?」」」
街中に響いた悲鳴と笑い声は、しばらく止まらなかった。




