らぶらぶ、らぶりぃ・すみすぅっっっっっっ!
「それでは!」
ラブリー・スミスが勢いよく手を挙げる。
「本日の恋愛査定、第二段階へ移りますっ!!」
「まだあんのか。」
真銀は思わず頭を抱えた。
「もちろんです!」
「恋愛は観察だけでは終わりません!」
「進展を確認してこそ恋愛ギルド!」
「いや、進展も何も──」
「では査定開始です!」
人の話を聞いていない。
後ろにいた査定員たちが、一斉に手帳を開いた。
「チェック項目その一!」
「自然な距離感!」
「そんな項目あるのか……。」
ライがぼそっと呟く。
「あります!」
査定員が即答した。
「恋愛ギルドでは重要項目です!」
真銀は深いため息をつきながら、車椅子を押し始める。
「ほら、千乃。」
「行くぞ。」
「うん。」
ゆっくりと歩き出す。
その後ろを、ララたちと恋愛ギルドの一団がぞろぞろ付いてくる。
どう見ても目立つ。
「あっ!」
ララがパン屋を見つける。
「焼きたて!」
「さっき朝飯食べたろ。」
「デザート!」
「パンはデザートじゃない。」
ライの冷静なツッコミに、アイシィがくすっと笑う。
「楽しそう。」
その様子を査定員たちは必死に書き込んでいた。
「従魔との関係も良好!」
「家族のような空気!」
「加点!」
「だから何の点数なんだ……。」
真銀が呆れる。
その時だった。
「失礼します!」
一人の査定員が真銀の前に立つ。
「質問です!」
「嫌な予感しかしねぇ。」
「千乃さんが倒れた時、一番最初に何を思いましたか!」
「は?」
突然すぎる質問に、真銀は固まる。
「答えてください!」
「答えない。」
「では別の質問!」
「勝手に変えるな。」
「千乃さんが目を覚ました時、安心しましたか?」
「……。」
真銀は言葉を詰まらせる。
「…………した。」
小さく答える。
その瞬間。
査定員たちの羽ペンが爆速で動いた。
「素直!!」
「高得点!」
「記録更新!」
「本人自覚なし!」
「加点!」
「だから何なんだその点数は!」
街中に真銀のツッコミが響く。
千乃は思わず吹き出した。
「ふふっ。」
ラブリー・スミスはその笑顔を見逃さない。
「笑顔確認!」
「真銀さんの発言に対する自然な笑顔!」
「相互安心反応!」
「尊いですっ!!」
「尊いって言うな!」
「言います!」
「仕事なので!」
「そんな仕事あるか!」
「あります!」
ラブリーは胸を張る。
「恋愛ギルドですから!」
ララは楽しそうにその様子を見ていた。
「真銀、完全に遊ばれてるね。」
「笑い事じゃねぇ。」
ライは苦笑する。
「まあ……。」
「相手が悪かったな。」
アイシィもゆっくり頷いた。
「恋愛ギルドは、一度目を付けると諦めない。」
「知ってる……。」
真銀が遠い目をする。
その時。
ラブリー・スミスがふと真剣な表情になった。
「ところで。」
「千乃さん。」
「はい?」
「今日は、まだ魔法は使っていませんね?」
真銀の眉がぴくりと動く。
「……おい。」
千乃も一瞬だけ目を逸らした。
「つ、使ってないよ?」
「本当に?」
「……。」
ララが、何気なく首をかしげる。
「でも朝、真銀に『癒光』使ってたよね?」
しまった。
全員が固まる。
「……ララ。」
ライが額に手を当てる。
「また言った。」
「え?」
ララ本人だけが、きょとんとしている。
真銀はゆっくり千乃を見る。
「……やっぱりか。」
「いや、その……。」
「ちょっとだけだったし。」
「昨日も同じこと聞いた。」
「うっ。」
ラブリー・スミスは感動したように胸の前で手を組む。
「自分ではなく、まず相手を癒やす……。」
「究極の献身……!」
査定員たちも一斉に頷く。
「尊いです!!」
「加点です!!」
「夫婦点が……!」
「その点数を増やすなぁぁぁ!!」
真銀の叫びが、再び街中へ響き渡った。
その声に驚いた鳥たちが、一斉に空へ飛び立つ。
それを見上げながら、千乃は声を上げて笑った。
その笑顔を見た真銀は、結局怒り切れず、小さくため息をつく。
「……ほんと、お前には敵わねぇ。」
その一言に、恋愛ギルドの羽ペンがまた一斉に走った。
「**発言確認! "敵わない" 発言! 特別加点!!**」
「だから加点するなぁぁぁ!!」
笑い声とツッコミが響く街は、今日も平和だった。




