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最終決戦3

 ぽたり。


 また一滴。


 千乃の血が地面へ落ちる。


 しかし、その血が触れた地面は一瞬真紅に輝き、何事もなかったかのように元へ戻った。


 世界は守られている。


 その代償は、すべて千乃一人が背負っていた。


---


 王は静かに目を閉じる。


「結論。」


「通常戦闘では。」


「勝率。」


「零・三一%。」


 真銀が眉をひそめる。


「諦めるのか?」


「否定。」


 王はゆっくりと両手を広げた。


「制限を解除する。」


---


 その瞬間だった。


 ドクン。


 世界が脈打った。


 空を覆う黒い魔法陣が一つ、また一つと増えていく。


 一枚。


 二枚。


 十枚。


 百枚。


 千枚。


 空一面が、黒い魔法陣だけで埋め尽くされた。


「なっ……!」


 老人の顔色が変わる。


「こんなの……五百年前にも見たことがない!」


---


 王の身体から、黒い光が溢れ始める。


 その姿は変わらない。


 だが、存在感だけが際限なく膨れ上がっていく。


 ララは思わず後ずさった。


「こ、怖い……。」


 ライがララの肩に手を置く。


「大丈夫だ。」


「俺たちは傷つかない。」


「……そうだった。」


 ララは小さく頷く。


---


「傷つくのは。」


 アイシィが静かに呟く。


「千乃だけ。」


 その言葉に全員が黙る。


---


 王は一歩踏み出した。


 その一歩だけで。


 世界中の空が黒く染まる。


 昼だった空が、夜へ変わる。


 星も月も消えた。


 残ったのは、王の黒い魔力だけ。


---


「これが。」


 老人が震える声で言う。


「世界修正体の王……。」


「本来の姿。」


---


「来るぞ!」


 真銀が叫ぶ。


 王は右手を軽く振った。


 ただ、それだけ。


 巨大な黒い衝撃波が世界を飲み込む。


 山を越え。


 森を越え。


 街を越え。


 すべてを消し飛ばす勢いで進む。


---


 しかし。


 真紅の結界へ触れた瞬間。


 ピタリ、と止まった。


 結界は揺らぐことなく、その衝撃を受け止める。


 街も。


 木々も。


 人々も。


 誰一人傷つかない。


---


「やっぱり……。」


 千乃は笑う。


「守れてる。」


 その直後。


「っ!」


 ドサッ。


 千乃が片膝をついた。


「千乃!」


 真銀が駆け寄る。


 右肩が裂けている。


 左腕も血で赤く染まっていた。


 それでも千乃はノートを離さない。


---


「まだ。」


「いける。」


「まだ結界は落ちない。」


 息は荒い。


 視界もぼやけ始めていた。


---


「千乃!」


 真銀が肩を支える。


「もう十分だ!」


「十分じゃない。」


 千乃は首を振る。


「まだ。」


「誰も傷ついてない。」


「それなら。」


「私は負けてない。」


---


 王は二人を見つめる。


 そして、初めてゆっくりと口を開いた。


「理解した。」


「千羽千乃。」


「君の弱点は。」


 王は静かに右手を向ける。


「君自身。」


 黒い魔力が一点へ集束していく。


 今までとは比べものにならないほど濃密な力。


 老人が叫んだ。


「真銀!」


「あれは受けるな!」


「千乃だけを狙っておる!」


---


 真銀は迷わなかった。


 千乃の前へ立つ。


「通さない。」


「無意味。」


 王は淡々と答える。


「結界は君を守る。」


「だが。」


「千羽千乃は守れない。」


 黒い光が放たれる。


 一直線に。


 千乃だけを狙って。


「千乃!」


 真銀は剣を構え、飛び出した。


 世界を守る少女と。


 その少女を守ろうとする少年。


 王の一撃が、二人へ迫る。

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