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最終決戦2

 世界修正体の王が右手を掲げる。


 背後の巨大な黒い魔法陣が、ゆっくりと回転を始めた。


 ゴォォォォォ……


 空気そのものが震える。


 その圧力だけで普通の冒険者なら立っていることすらできない。


 だが。


「……あれ?」


 ララが自分の腕を見る。


「痛くない。」


 ライも自分の身体を見下ろす。


「攻撃の余波を受けているはずだが……。」


 アイシィが翼を広げる。


「傷が一つもない。」


---


 老人は結界へ目を向けた。


「そうか……!」


「この結界。」


「守るだけではない。」


「結界の内側にいる、千乃以外のすべてを"傷つかない存在"として固定しておる!」


 真銀は拳を握る。


「だからさっきから瓦礫も飛んでこないのか。」


「うむ。」


「建物も。」


「木も。」


「地面も。」


「魔物も。」


「お前さんたちも。」


「誰一人傷つかん。」


---


 その瞬間。


 王の魔法陣から、漆黒の光線が何百本も放たれた。


 一直線に真銀たちへ襲いかかる。


「真銀!」


「任せろ!」


 真銀は迷わず飛び込んだ。


 光線が全身へ直撃する。


 凄まじい爆発。


 土煙が舞う。


---


「真銀!」


 千乃が思わず叫ぶ。


 煙が晴れる。


 そこには。


「……。」


 真銀が立っていた。


 服は煤だらけ。


 髪も乱れている。


 しかし。


 かすり傷一つない。


「本当に傷つかないな。」


 真銀は肩を回した。


「衝撃はあるけど、痛くない。」


 老人は苦笑した。


「恐ろしい結界じゃ。」


---


「なら!」


 真銀は一気に駆け出した。


 今までなら避けるしかなかった攻撃。


 今は違う。


 真正面から突っ込める。


「うおおおおっ!」


 黒い光線を受けながら一直線に進む。


 王が初めて目を細めた。


「行動予測。」


「変更。」


---


 真銀は王の目前まで一瞬で距離を詰める。


「はあぁぁぁっ!」


 剣を振り抜く。


 金属音が響いた。


 王は片手で受け止めていた。


 それでも。


 その足は一歩、後ろへ滑る。


---


「押した!」


 ララが目を輝かせる。


 ライも驚きを隠せない。


「以前より、はるかに強い。」


 アイシィが静かに頷く。


「黒い魔力が完成し始めている。」


---


 王は真銀を見る。


「夜坂真銀。」


「成長率。」


「異常。」


「危険度。」


「再設定。」


「最大。」


「千羽千乃と同等。」


 真銀は思わず笑った。


「やっと同じ評価か。」


---


 その時だった。


「っ……!」


 千乃がふらつく。


 口元から赤い血がこぼれた。


「千乃!」


 真銀が振り返る。


「平気……。」


 そう言った直後。


 左腕に新たな亀裂が走る。


 服が赤く染まっていく。


---


「結界の反動だ。」


 老人が険しい顔になる。


「全員を無傷にする代償を、一人で受け続けておる。」


「解除しよう!」


 真銀が叫ぶ。


 しかし。


 千乃は笑って首を振った。


「嫌。」


「絶対に嫌。」


「でも!」


「真銀。」


 千乃は優しく笑う。


「みんなが無傷なんだから。」


「それで十分。」


---


 真銀は言葉を失う。


 ララは唇を噛み締めた。


 ライは拳を強く握る。


 アイシィは静かに千乃を見つめる。


 結界の中では、自分たちは決して傷つかない。


 その奇跡は。


 たった一人が、すべての痛みを引き受けているから成り立っていた。


---


 王はその姿を無表情で見つめる。


「理解不能。」


「なぜ。」


「そこまでする。」


 千乃はゆっくりとノートを開く。


「だって。」


「私は厨二病だから。」


「世界を守る結界なんて。」


「一回くらい張ってみたかったんだ。」


 真銀は思わず苦笑した。


「そんな理由で世界を守るやつ、千乃くらいだよ。」


「えへへ。」


 その笑顔とは裏腹に。


 千乃の足元へ、赤い雫がまた一滴、静かに落ちた。


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