最終決戦1
真紅の結界が、世界を包み続ける。
空も。
大地も。
街も。
森も。
奈落も。
すべてが柔らかな真紅の光に守られていた。
その代わり。
結界の中心に立つ千乃の腕には、少しずつ傷が増えていく。
ぽたり。
血が地面へ落ちた。
しかし、血が落ちた場所ですら結界に守られ、傷一つ付かなかった。
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「千乃。」
真銀が心配そうに声をかける。
「まだ大丈夫。」
千乃は笑う。
「結界は維持できる。」
「無理するな。」
「無理はしてる。」
「でも、無茶はしない。」
そう言って、ノートを開いた。
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世界修正体の王は静かに立っている。
その表情は相変わらず変わらない。
「戦闘開始。」
「対象。」
「千羽千乃。」
「夜坂真銀。」
「世界修正を実行する。」
その声と同時に。
王の足元から、黒い魔法陣が幾重にも広がった。
空間そのものが歪み始める。
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「来る!」
ライが叫ぶ。
直後。
何もない空間から無数の黒い刃が生まれた。
「真銀!」
「分かってる!」
真銀は地面を蹴る。
剣を振るい、黒い刃を次々と叩き落としていく。
だが。
一振りで十本。
二振りで二十本。
数が減らない。
「くっ……!」
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「ララ!」
「任せて!」
白い毛並みの小さなうさぎは一瞬で人間の姿へ変わる。
純白の髪。
青い瞳。
そして巨大な魔力。
「えいっ!」
ララが両手を前へ突き出す。
青白い結界が展開され、黒い刃を受け止めた。
衝撃で地面が揺れる。
しかし。
千乃の結界のおかげで、大地はひび一つ入らない。
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「アイシィ!」
「了解。」
巨大な氷竜が空へ舞い上がる。
翼を一振り。
何百本もの氷柱が生まれ、黒い刃を撃ち落としていく。
凄まじい轟音が響く。
それでも。
世界は傷つかない。
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王は静かに呟く。
「結界。」
「解析完了。」
「突破を開始。」
黒い魔力が一本の槍となって凝縮される。
今までとは比較にならない密度。
老人が青ざめた。
「まずい!」
「あれは結界を狙っておる!」
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千乃は一歩前へ出る。
「結界は壊させない。」
ノートが光る。
ページがめくられる。
「深淵蒼王無限刻崩絶対神罰連鎖消滅波」
真紅の巨大な斬撃が、一直線に放たれた。
王の黒い槍と正面から衝突する。
轟音。
閃光。
世界が白く染まる。
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光が消えた。
槍は消滅していた。
だが。
王は無傷。
「威力。」
「前回比、三・七倍。」
「成長を確認。」
淡々と分析するだけだった。
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「効いてない……。」
真銀が歯を食いしばる。
「いや。」
老人は王を見つめる。
「効いておる。」
「見ろ。」
王の外套。
裾がほんの少しだけ切れていた。
たったそれだけ。
しかし。
世界修正体の王が初めて受けた傷だった。
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王は切れた布を見つめる。
「損傷。」
「確認。」
そして。
ゆっくりと千乃を見る。
「評価を変更。」
「危険度。」
一瞬、間が空く。
「最大。」
その瞬間。
王の背後に、今まで一度も見せなかった巨大な黒い魔法陣が出現した。
何重にも重なった魔法陣は、空を覆い尽くし、奈落全体を影で包み込む。
老人の顔から血の気が引いた。
「本気じゃ……。」
「奴が、本気で千乃を消しに来るぞ……!」
真銀は剣を強く握り直す。
「だったら。」
「俺たちも、本気で行く。」
千乃は静かに頷いた。
結界を維持したまま、ノートを握る手に力を込める。
「絶対に。」
「この世界は、誰一人傷つけない。」
世界を守る結界の内側で。
最終決戦は、ついに本当の幕を開けた。




