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恋愛ギルド 第二回査定

 ギルドへ帰還して数日後。


 千乃と真銀は、いつものように依頼を終えて受付へ向かっていた。


「これで終わりっと。」


「今日は平和だったな。」


 真銀が報酬袋を受け取る。


 その時だった。


 バァン!!


 ギルドの扉が勢いよく開いた。


「査定のお時間でぇぇぇぇぇす!!」


「あ。」


「嫌な予感。」


 千乃が額を押さえた。


---


 ピンク色の制服。


 胸にはハートのバッジ。


 恋愛ギルド一行だった。


 以前会った女性が、満面の笑みで近づいてくる。


「千羽千乃さん!」


「夜坂真銀さん!」


「定期査定に参りました!」


「そんなものあるの!?」


 千乃が叫ぶ。


「あります!」


 女性は胸を張った。


「恋愛ギルド会員は三か月に一度、関係性の変化を確認する義務があります!」


「義務だったの!?」


---


 受付嬢は苦笑する。


「……本当に来た。」


「受付さん知ってたの?」


「はい。」


「恋愛ギルドって、一度目を付けた相手は逃がしませんから。」


「怖い!」


---


「それでは査定開始!」


 女性が分厚い資料を開く。


「まず最初の質問です。」


「四か月離ればなれでしたね?」


「はい。」


「夜坂真銀さん。」


「はい。」


「奈落へ飛び込みましたね?」


「……はい。」


「理由は?」


「迎えに行くためです。」


 女性は何かを書き込む。


 カリカリ。


「命を懸けた救出行動。」


「評価、大幅加点。」


「加点されるんだ……。」


---


「続いて。」


「千羽千乃さん。」


「はい。」


「落下してくる真銀さんへ、巨大な魔力クッションを作りましたね?」


「うん。」


「普通に助けただけだけど。」


 女性は勢いよく丸を付ける。


「命を最優先。」


「相互信頼、最高評価。」


「えぇ……。」


---


「さらに。」


「奈落で従魔を三体獲得。」


「はい。」


「そして帰還後、一番最初に真銀さんへ笑顔を見せました。」


「……そうだった?」


「記録済みです。」


「記録されてる!」


---


 女性は真剣な顔になる。


「最重要項目です。」


「お互いが再会した際。」


「抱きつきませんでした。」


「……はい?」


「減点です。」


「なんでぇ!?」


 千乃が思わず机を叩く。


「普通抱きつくところです!」


「泣きながら!」


「いやいやいや!」


「頭なでてたよ!?」


「惜しいです。」


「惜しいんだ。」


---


 別の職員が資料を持ってくる。


「追加情報です。」


「従魔への接し方。」


「契約者への好感度。」


「生活態度。」


「全部確認しました。」


「何をどう確認したの!?」


 真銀がツッコむ。


---


「結果発表です!」


 全員が整列する。


 パンパカパーン。


 どこからともなくファンファーレが鳴った。


「千羽千乃さん!」


「天然指数。」


「SSSから。」


「SSS+へ昇格!」


「上がった!?」


「夜坂真銀さん!」


「鈍感指数。」


「SSS据え置きです!」


「据え置きなのか……。」


---


「そして!」


 女性は新しいカードを取り出した。


 二人のギルドカードが、光を放ちながら書き換わっていく。


 所属ギルド:恋愛ギルド


 会員名:千羽千乃


 相手:夜坂真銀


 天然指数:SSS+


 恋愛適性:SS


 距離感:ゼロ


 奈落救出イベント:達成


 告白予想時期:近づいています


「近づいてません!」


 千乃が即座に否定する。


---


 続いて真銀。


 所属ギルド:恋愛ギルド


 会員名:夜坂真銀


 相手:千羽千乃


 鈍感指数:SSS


 恋愛適性:SS


 奈落飛び込み実績:あり


 命懸け指数:測定不能


 告白成功率:99.97%


「上がってる!」


 真銀が叫ぶ。


「前より上がってるじゃないか!」


---


 ギルド中の冒険者たちがカードをのぞき込む。


「九九・九七%?」


「もう誤差だろ。」


「あと〇・〇三%は何なんだ?」


 恋愛ギルドの女性は真顔で答えた。


「本人たちの自覚です。」


「それが最大の壁です。」


「納得した。」


 冒険者全員が深く頷いた。


「「納得しないで!」」


 千乃と真銀の声が、今日も見事に重なる。


 その瞬間。


 恋愛ギルド一同は満足そうにうなずき、一斉にメモを取った。


「息ぴったり。」


「加点です。」


「まだ加点あるの!?」


 こうして二人は、帰還早々またしても恋愛ギルドのおもちゃにされるのだった。

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