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魔力の味

 街道を歩きながら。


 ララはふと真銀を見上げた。


「そういえば。」


「真銀の魔力って、どんな味なんだろう?」


「味?」


 真銀は首をかしげる。


「気になる!」


 ララは目を輝かせる。


「千乃のはさっき食べたけど、真銀のはまだ!」


 アイシィも興味深そうに頷く。


「私も気になる。」


 ライも静かに口を開いた。


「契約者ではないが、少しなら問題ない。」


「へぇ。」


 真銀は苦笑する。


「そんなものなのか。」


---


「じゃあ。」


 真銀は右手を前へ出した。


「少しだけ。」


 黒い魔力が静かに溢れ始める。


 千乃の鮮やかな真紅とは正反対。


 夜のように深い、真っ黒な魔力だった。


「おぉ……。」


 千乃は思わず見とれる。


「黒い。」


「自分でも初めてちゃんと見た。」


 真銀も少し驚いていた。


---


 ララが恐る恐る近づく。


「いただきます……。」


 黒い魔力を少しだけ受け取る。


 もぐ。


「…………。」


 表情が止まった。


「どう?」


 真銀が尋ねる。


 ララは数秒考えてから。


「……お薬。」


「薬?」


「うん。」


「おいしくない。」


「率直だな。」


 真銀は苦笑した。


---


 アイシィも試してみる。


 黒い魔力をゆっくり取り込む。


「……。」


「どう?」


「苦い。」


「そして少し辛い。」


「食べ物じゃないけどね。」


 千乃が笑う。


---


 ライも最後に少量だけ受け取る。


「……なるほど。」


「味は良くない。」


「だが。」


 目を閉じる。


「体が軽い。」


「え?」


「筋力が一時的に上がる。」


「魔力が活性化している。」


「つまり。」


「強化系の効果がある。」


 真銀は目を丸くした。


「そんな効果まで分かるのか。」


 ライは頷く。


「従魔は魔力の性質を感じ取れる。」


---


 ララも腕をぶんぶん振る。


「あ!」


「ほんとだ!」


「元気いっぱい!」


「走れそう!」


 その場を勢いよく駆け回る。


「でも!」


 立ち止まって一言。


「やっぱりおいしくない!」


「そこは変わらないんだな。」


 真銀は肩をすくめた。


---


 千乃は少し気になった。


「じゃあ私の魔力って、そんなに違うの?」


「全然違う!」


 ララは即答した。


「千乃の魔力は甘くてあったかい!」


「食べると傷が治る感じ!」


 アイシィも続ける。


「安心する。」


「疲れも取れる。」


「力も湧いてくる。」


 ライも静かに分析する。


「治癒能力。」


「攻撃力上昇。」


「精神安定。」


「複数の補助効果が含まれている。」


「へぇ……。」


 千乃は自分の魔力を見つめた。


「そんな能力があったんだ。」


---


 その時。


 ララがおずおずと手を挙げる。


「……あの。」


「なに?」


「お口直し、していい?」


「お口直し?」


「真銀の魔力飲んだあとだから。」


「千乃の魔力ちょっとほしい!」


 真銀は思わず吹き出した。


「完全に苦い薬扱いじゃないか。」


「ご、ごめん!」


 ララは慌てて両手を振る。


「嫌いじゃないよ!」


「効くんだけど!」


「味がね!」


---


 千乃は笑いながら真紅の魔力をふわりと放つ。


「はい。」


「どうぞ。」


「わーい!」


 ララは嬉しそうに飛び込む。


「おいしいー!」


 アイシィも少しだけ受け取り、幸せそうに目を細める。


「落ち着く。」


 ライも一礼した。


「助かる。」


---


 その光景を見ていた真銀は、小さく笑う。


「俺の魔力は栄養ドリンク。」


「千乃の魔力は高級デザートってところか。」


「そんな感じ!」


 ララが元気よく頷く。


「真銀のは苦いけど元気になる!」


「千乃のはおいしくて元気にもなる!」


「ずるい!」


「なんで俺だけ苦いんだ……。」


 真銀は苦笑しながら頭をかく。


 その隣で千乃は笑いをこらえきれず、声を上げて笑っていた。


 こうして真銀の魔力は、従魔たちの間で「薬みたいだけど効き目は抜群」という、少し複雑な評価に落ち着いたのだった。

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