んー!おいしいー!!
アイシィは力強く翼を羽ばたかせる。
奈落の冷たい風が後ろへ流れていく。
「すごい……。」
真銀は思わず下を見た。
落ちる時には終わりが見えなかった奈落。
だが、アイシィは迷うことなく一直線に上昇していく。
「アイシィ、道分かるの?」
千乃が尋ねる。
「うん。」
「奈落は何度も出入りしてる。」
「そうなんだ!」
「ご飯を探しに。」
「なるほど。」
食事目的だった。
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数十分後。
遠くに小さな光が見えた。
「見えた!」
ララが耳をぴんと立てる。
「出口!」
眩しい太陽の光。
長い間見ていなかった青空。
アイシィは最後に大きく羽ばたいた。
バサァァァッ!!
白い巨体が奈落の出口から飛び出す。
その瞬間。
「太陽だー!」
千乃が両手を広げた。
「久しぶり!」
暖かな日差し。
心地よい風。
四か月ぶりの地上だった。
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一方、その頃。
奈落周辺では今日も捜索隊が活動していた。
「異常なし!」
「今日も反応なし!」
そんな報告が飛び交う。
すると。
一人の冒険者が空を指差した。
「……あれ。」
「ドラゴン?」
全員が空を見上げる。
白い巨大なドラゴンがこちらへ向かって飛んできていた。
「アイスドラゴンだ!!」
「迎撃準備!」
「待ってください!」
隊長が叫ぶ。
「様子がおかしい!」
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ドラゴンはゆっくり高度を下げる。
そして。
背中に人影が見えた。
「……人?」
「まさか。」
「いや。」
「そんなはず。」
誰もが目を疑う。
ドラゴンが地面へ降り立つ。
ふわり、と土煙が舞う。
最初に飛び降りたのは。
「んーっ!」
大きく伸びをした少女。
「やっぱり地上の空気、おいしい!」
その声を聞いた瞬間。
捜索隊全員の動きが止まった。
「…………。」
「……。」
「……え?」
一人が震える声で呟く。
「千羽……千乃?」
「ただいま!」
満面の笑みだった。
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「生きてる……。」
「生きてるぞ!!」
「千乃ちゃんだぁぁぁ!!」
捜索隊は一斉に駆け寄る。
「本物!?」
「本物だよ!」
「うわあああ!!」
思わず泣き出す冒険者までいた。
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「真銀さんも!」
「帰ってきた!」
真銀も苦笑しながら手を振る。
「ただいま。」
「本当に帰ってきた……。」
四か月間、希望を捨てずに探し続けた仲間たち。
その努力が、ようやく報われた瞬間だった。
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「それで……。」
隊長がアイシィを見る。
「このドラゴンは?」
「あ、この子?」
千乃は嬉しそうに答える。
「私の従魔!」
「…………。」
沈黙。
「え?」
「奈落で仲良くなった!」
「肉あげたら懐いた!」
「…………。」
隊長は遠い目をした。
「肉で?」
「うん!」
「肉で。」
「……。」
「もう驚かないぞ。」
そう言った隊長だったが。
顔は十分驚いていた。
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ララとうさぎ姿のまま飛び降りる。
「こんにちはー!」
続いて、狼姿のライも降り立った。
「……。」
冒険者たちは二匹を見つめる。
「うさぎ。」
「狼。」
「かわいい。」
次の瞬間。
「待て。」
一人のベテラン冒険者が青ざめた。
「あの白いうさぎ……。」
「あの青銀の狼……。」
「まさか……。」
隊長も気付く。
「嘘だろ。」
「あれ。」
「奈落の災害級じゃないか!!」
「え?」
「そうなの?」
千乃がきょとんとする。
「知らなかった!」
ララは元気よく前足を上げた。
「今は千乃の従魔だよー!」
ライも静かに頭を下げる。
「敵意はない。」
冒険者たちは一斉に頭を抱えた。
「災害級を三体も従魔にしたのか……。」
「奈落へ行った四か月で何があったんだ……。」
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「とりあえず!」
千乃が笑顔で両手を上げる。
「帰ろっか!」
その一言で、緊張していた空気が一気に和らぐ。
「そうだな。」
真銀も笑う。
「みんなが待ってる。」
ギルドへ向かう道には、すでに知らせを受けた冒険者たちが駆けつけ始めていた。
四か月もの間、帰りを待ち続けた仲間たち。
その「おかえり」が、もうすぐ二人を包み込もうとしていた。




