表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
36/94

んー!おいしいー!!

 アイシィは力強く翼を羽ばたかせる。


 奈落の冷たい風が後ろへ流れていく。


「すごい……。」


 真銀は思わず下を見た。


 落ちる時には終わりが見えなかった奈落。


 だが、アイシィは迷うことなく一直線に上昇していく。


「アイシィ、道分かるの?」


 千乃が尋ねる。


「うん。」


「奈落は何度も出入りしてる。」


「そうなんだ!」


「ご飯を探しに。」


「なるほど。」


 食事目的だった。


---


 数十分後。


 遠くに小さな光が見えた。


「見えた!」


 ララが耳をぴんと立てる。


「出口!」


 眩しい太陽の光。


 長い間見ていなかった青空。


 アイシィは最後に大きく羽ばたいた。


 バサァァァッ!!


 白い巨体が奈落の出口から飛び出す。


 その瞬間。


「太陽だー!」


 千乃が両手を広げた。


「久しぶり!」


 暖かな日差し。


 心地よい風。


 四か月ぶりの地上だった。


---


 一方、その頃。


 奈落周辺では今日も捜索隊が活動していた。


「異常なし!」


「今日も反応なし!」


 そんな報告が飛び交う。


 すると。


 一人の冒険者が空を指差した。


「……あれ。」


「ドラゴン?」


 全員が空を見上げる。


 白い巨大なドラゴンがこちらへ向かって飛んできていた。


「アイスドラゴンだ!!」


「迎撃準備!」


「待ってください!」


 隊長が叫ぶ。


「様子がおかしい!」


---


 ドラゴンはゆっくり高度を下げる。


 そして。


 背中に人影が見えた。


「……人?」


「まさか。」


「いや。」


「そんなはず。」


 誰もが目を疑う。


 ドラゴンが地面へ降り立つ。


 ふわり、と土煙が舞う。


 最初に飛び降りたのは。


「んーっ!」


 大きく伸びをした少女。


「やっぱり地上の空気、おいしい!」


 その声を聞いた瞬間。


 捜索隊全員の動きが止まった。


「…………。」


「……。」


「……え?」


 一人が震える声で呟く。


「千羽……千乃?」


「ただいま!」


 満面の笑みだった。


---


「生きてる……。」


「生きてるぞ!!」


「千乃ちゃんだぁぁぁ!!」


 捜索隊は一斉に駆け寄る。


「本物!?」


「本物だよ!」


「うわあああ!!」


 思わず泣き出す冒険者までいた。


---


「真銀さんも!」


「帰ってきた!」


 真銀も苦笑しながら手を振る。


「ただいま。」


「本当に帰ってきた……。」


 四か月間、希望を捨てずに探し続けた仲間たち。


 その努力が、ようやく報われた瞬間だった。


---


「それで……。」


 隊長がアイシィを見る。


「このドラゴンは?」


「あ、この子?」


 千乃は嬉しそうに答える。


「私の従魔!」


「…………。」


 沈黙。


「え?」


「奈落で仲良くなった!」


「肉あげたら懐いた!」


「…………。」


 隊長は遠い目をした。


「肉で?」


「うん!」


「肉で。」


「……。」


「もう驚かないぞ。」


 そう言った隊長だったが。


 顔は十分驚いていた。


---


 ララとうさぎ姿のまま飛び降りる。


「こんにちはー!」


 続いて、狼姿のライも降り立った。


「……。」


 冒険者たちは二匹を見つめる。


「うさぎ。」


「狼。」


「かわいい。」


 次の瞬間。


「待て。」


 一人のベテラン冒険者が青ざめた。


「あの白いうさぎ……。」


「あの青銀の狼……。」


「まさか……。」


 隊長も気付く。


「嘘だろ。」


「あれ。」


「奈落の災害級じゃないか!!」


「え?」


「そうなの?」


 千乃がきょとんとする。


「知らなかった!」


 ララは元気よく前足を上げた。


「今は千乃の従魔だよー!」


 ライも静かに頭を下げる。


「敵意はない。」


 冒険者たちは一斉に頭を抱えた。


「災害級を三体も従魔にしたのか……。」


「奈落へ行った四か月で何があったんだ……。」


---


「とりあえず!」


 千乃が笑顔で両手を上げる。


「帰ろっか!」


 その一言で、緊張していた空気が一気に和らぐ。


「そうだな。」


 真銀も笑う。


「みんなが待ってる。」


 ギルドへ向かう道には、すでに知らせを受けた冒険者たちが駆けつけ始めていた。


 四か月もの間、帰りを待ち続けた仲間たち。


 その「おかえり」が、もうすぐ二人を包み込もうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ