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落ち方がおかしい

 真銀はようやく落ち着きを取り戻し、深く息をついた。


「……本当に生きててよかった。」


「えへへ。」


 千乃は少し照れくさそうに笑う。


 だが。


 真銀はふと首をかしげた。


「……待て。」


「ん?」


「俺、一つ気になることがある。」


「なになに?」


 真銀は真剣な表情になった。


「俺。」


「千乃がクッションを作ってくれなかったら、確実に死んでた。」


「うん。」


「なのに。」


「気を失ってた千乃は。」


「クッションも何もない状態で奈落まで落ちたんだよな?」


「……うん。」


「なんで生きてる?」


「…………。」


 一瞬、空気が止まった。


「……あ。」


 千乃も今さら気付いた。


「そういえば。」


「なんで?」


---


 ララとライが顔を見合わせる。


「説明しようか?」


「お願い。」


 真銀が即答した。


---


「千乃が落ちてきた時ね。」


 ララは両手を広げる。


「すっごかったよ!」


「すっごかった?」


「うん!」


「空から。」


「ひゃわぁぁっっっっっっ!!」


「って叫び声が聞こえてきて。」


 千乃は顔を真っ赤にした。


「叫んでたんだ……私。」


「すっごく叫んでた!」


「千乃、意外とお前、叫び声かわいいな。」


---


 ライが続ける。


「その直後だった。」


「上空から一直線に落下。」


「加速し続け。」


「地面へ。」


 少し間を置く。


「激突。」


「…………。」


「その音が奈落中に響いた。」


---


 ララは身振り手振りで再現する。


「ドーーーーーン!!」


「って!」


「地面が揺れて!」


「砂煙がぶわぁーって!」


「そのあと。」


「ぽよん。」


「ぽよん。」


「ぽよん。」


「って。」


「……。」


「結構バウンドしてた。」


「え?」


 千乃は固まる。


「私?」


「うん!」


「三回くらい!」


「人ってバウンドするの!?」


---


 ライは真顔で頷いた。


「普通はしない。」


「だよね!?」


---


「そして。」


 ライは少し歩き始める。


「来い。」


「見せる。」


 三人はライの後ろを歩く。


 数分後。


「……ここだ。」


「え?」


 目の前には。


 巨大な穴があった。


 直径三十メートル近い。


 周囲には放射状に割れた岩盤。


 まるで巨大隕石でも落ちたような跡。


「…………。」


「これ。」


 ライが静かに言う。


「千乃が落ちた場所だ。」


「……え?」


 千乃は穴と自分を交互に見る。


「私?」


「そうだ。」


「ここへ激突した。」


---


 真銀は穴を見下ろした。


「……。」


「……。」


「これ。」


「完全にクレーターじゃないか。」


「うん。」


 ララは元気よく頷く。


「奈落のみんなね。」


「最初は新しい災害級が降ってきたと思ったんだよ!」


「そんな勘違いある!?」


---


 ライは腕を組む。


「実際。」


「災害級の魔物たちも様子を見に来ていた。」


「『何が落ちてきた』と。」


「そしたら。」


「クレーターの真ん中で。」


「千乃が。」


 ライは少し間を置いて。


 淡々と言った。


「気絶したまま。」


「『むにゃ……あと五分……。』」


「と言って寝返りを打った。」


「…………。」


 沈黙。


 真銀がゆっくり千乃を見る。


 千乃は視線を逸らした。


「……言った?」


「……たぶん。」


「覚えてない。」


---


 ララは笑いながら続ける。


「そのあと目が覚めて。」


「『生きてる!』」


「って言ってた!」


「うぅぅ……。」


 千乃はしゃがみ込んで頭を抱えた。


「全部見られてる……。」


---


 真銀はクレーターをもう一度見下ろく。


 そして。


「千乃。」


「な、なに?」


「お前。」


「人間だよな?」


「人間だよ!?」


「ほんとか?」


「ほんとだよ!」


「いや。」


 真銀はクレーターを指差す。


「普通の人間は。」


「ここまで綺麗なクレーター作らない。」


「否定できない……。」


 千乃は肩を落とした。


 ララはけらけら笑い。


 ライも珍しく口元を緩める。


 奈落に響く笑い声は、今日も絶えることがなかった。

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