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恋愛ギルドの定期査察

 世界修正体との戦いがない、珍しく平和な昼下がり。


 ギルドの中は依頼を終えた冒険者たちで賑わっていた。


「今日は平和だね。」


 千乃はジュースを飲みながら笑う。


「ああ。毎日こうなら助かる。」


 真銀も報酬袋をしまいながら頷いた。


 そのときだった。


 バァン!!


 ギルドの扉が勢いよく開く。


「恋愛ギルドです!」


「定期査察に参りました!」


「また来た!」


 千乃が思わず立ち上がる。


 前回と同じ、ピンク色の制服。


 胸元のハート型バッジ。


 そして先頭には、あの女性。


「会員番号一二七番、千羽千乃さん。」


「会員番号一二八番、夜坂真銀さん。」


「恋愛ギルド定期査察を開始します!」


「だから会員じゃないって!」


 二人の声がぴったり重なる。


「カードを発行した時点で正式会員です。」


「そんなルール聞いてない!」


---


 女性は小さな手帳を開いた。


「それでは質問です。」


「質問するんだ……。」


「最近、一緒に依頼へ行きましたか?」


「行ったけど。」


 カリカリ。


「はい、加点。」


「加点って何!?」


「命を預け合いましたか?」


「まぁ……。」


「加点。」


「えぇ……。」


「一緒に食事をしましたか?」


「した。」


「加点。」


「宿は?」


「隣の部屋。」


「加点。」


「だから何の点数なの!?」


---


「続いて。」


 女性は真顔で読み上げる。


「相手が怪我をした場合、心配しますか?」


「する。」


「するよ。」


 二人が同時に答えた。


 女性は満足そうに頷く。


「同時回答。」


「特別加点。」


「そんなのあるの!?」


---


「では次。」


「相手が三日間いなくなったら探しますか?」


「探す。」


「もちろん。」


「特別加点。」


「いや、普通じゃない!?」


 千乃が叫ぶ。


 周りの冒険者たちはうんうんと頷いていた。


「普通だな。」


「そりゃ探すだろ。」


「だから付き合ってるんじゃ……。」


「付き合ってない!」


 二人の声がまた重なった。


---


 女性は何かを思い出したようにページをめくる。


「あ、そうでした。」


「先日の報告ですが。」


「お互いの日記を読んでしまった件。」


「記録済みです。」


「なんで!?」


 千乃が机を叩く。


 真銀も思わず一歩引いた。


「恋愛ギルドの情報網を甘く見ないでください。」


「怖いって!」


---


「では査定結果を発表します。」


 女性は一枚の紙を取り出した。


 恋愛ギルド査定結果


 恋人度   98%


 信頼度   測定不能


 本人自覚率 3%


 周囲認識率 100%


 将来性   Sランク


 結婚予想  A+


「ちょっと待って!」


 千乃が紙を奪い取る。


「本人自覚率三%って何!?」


「残り九十七%は?」


「自覚してください。」


「無茶言わないで!」


---


 真銀も紙を覗き込む。


「信頼度、測定不能って。」


「測定器が壊れました。」


「そんなことある?」


「ありました。」


 女性は真顔だった。


---


「以上です。」


「今月の査察は終了しました。」


「来月も伺います。」


「毎月来るの!?」


「もちろんです。」


「恋愛は継続観察が重要ですから。」


「いらないその観察!」


---


 恋愛ギルド一同は満足そうに頷く。


「では皆さん。」


「ご唱和ください。」


 職員たちが一斉に振り返る。


「せーの!」


「「「お幸せに!」」」


「だから違うってー!!」


 ギルド中に笑い声が響く。


 受付嬢は苦笑しながら報酬袋を差し出した。


「……お二人とも、来月も頑張ってくださいね。」


「受付さんまで!?」


 千乃は頭を抱えた。


 真銀はため息をつきながら、小さく笑う。


「もう否定するのも疲れてきたな。」


「疲れちゃダメだから!」


 その日もまた、二人は世界修正体との戦いよりも、恋愛ギルドとの戦いのほうが疲れるのだった。

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