うわぁぁぁぁぁ!目がぁっ!目がぁぁっっ!
星氷神城。
中庭でのライトボール実験が終わった翌日、千乃はふと思いついた。
「……メルト、これ」
「?」
目の前には、昨日まで普通だった中庭の一角。
「専用の部屋、作ろう」
「……!」
メルトの身体が、ぷるんっと揺れる。
「光る用の広い部屋!」
「ぷるっ!」
「たぶん、気に入ると思うよ」
千乃はさっそく魔法を使い、城の一角に広々とした部屋を増設した。
壁も床も天井も魔力を通しやすい素材で作られ、天井はかなり高い。
メルトが大きくなっても、分裂しても、ライトボールを大量に入れても大丈夫なように、妙に本格的な仕様になっている。
ライが部屋を見回す。
「……何だ、この部屋」
「メルト用」
「用途が限定されすぎている」
カミルも天井を見上げる。
「広いな」
「うん!」
千乃は満足そうに頷いた。
「ここなら思いっきり光れるよ!」
「ぷるぷるぷるぷるっ!」
メルトが嬉しそうに跳ねる。
その瞬間だった。
「……ん?」
メルトの身体が。
「ぽぽっ」
「……?」
「ぽぽぽっ」
さらに。
「ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポッ!!」
「増えた!?」
千乃が叫ぶ。
巨大なメルトが、部屋の中で次々と小さなメルトへ分裂していく。床いっぱいに、ぷるぷる、ぷるぷる、ぷるぷる。
「……」
真銀が無言になる。
「……」
ライも無言になる。
「……」
アイシィも無言になる。
ララだけが大喜びだった。
「メルトいっぱい!」
「ぷる!」
「いっぱい!」
「ぷるぷる!」
「もっと!」
「ぷるぷるぷる!」
千乃は目を輝かせた。
「……これ、全部にライトボール入れたらどうなるんだろう」
真銀が即座に振り返る。
「やめろ」
「え?」
「昨日ので学べ」
「昨日?」
「チカチカしていただろ」
「あれ面白かったじゃん」
「面白さと安全性は別だ」
しかし。
千乃の手には。
すでにライトボールがあった。
「一個ずつ入れてみよう!」
「聞いてないな!?」
まず一匹。
ぽんっ。
ライトボールをメルトの中へ。
ぷるん。
青。
「おお!」
二匹目。
ぽんっ。
緑。
「おおお!」
三匹目。
ぽんっ。
黄色。
「すごい!」
四匹目。
ぽんっ。
紫。
「きれい!」
五匹目。
ぽんっ。
赤。
六匹目。
ぽんっ。
水色。
七匹目。
ぽんっ。
白。
八匹目。
ぽんっ。
ピンク。
そして。
「もっと入れてみよう!」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
真銀の制止は。
当然。
間に合わなかった。
部屋中のメルトにライトボールが入る。
そして。
「……」
「……」
「……」
一瞬。
完全に静かになった。
次の瞬間。
チカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカ!!
青!
赤!
緑!
黄色!
紫!
ピンク!
水色!
白!
そして全部が一斉に変わる!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
千乃が叫んだ。
「きれ――」
「目がぁっ!!」
真銀が顔を覆う。
「目がぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっ!!」
ライも顔を背ける。
「これは……!」
アイシィまで片手で目を隠した。
「眩しすぎます……!」
カミルが。
「……」
静かに翼で顔を覆う。
「我にも刺激が強い」
「神龍まで!?」
ララは。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
目を輝かせている。
「きれい!」
「ララ、目を守れ!」
「大丈夫!」
「その台詞は信用できない!」
そしてメルトたちは。
「ぷるぷるぷるぷるぷるぷる!!」
嬉しそうに。
さらに激しく点滅する。
「待って!」
千乃が叫ぶ。
「もっとゆっくり!」
チカチカチカチカチカ!!
「速い!」
チカチカチカチカ!!
「もっとゆっくりって言ってるでしょ!」
チカチカチカチカチカチカ!!
「聞いてない!?」
真銀が。
「メルトに意思疎通を求めるな」
「でも!」
「今のところ、あいつらは自分たちが何をしているのか楽しんでいる」
「……」
千乃は。
大量の光るメルトを見る。
「……楽しそう」
「ぷるっ!」
「……」
「じゃあ」
千乃は。
ライトボールを一つ持ち上げた。
「もう一匹増やしてみようか」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
真銀の叫びが。
専用イルミネーションルームに響き渡った。
そしてメルトは今日も元気にチカチカしていた。
なお、この部屋は後日、城内で正式に。
「メルトの目に優しくない部屋」
と呼ばれるようになった。




