眩しっ!!
その日の午後。
中庭では、クオンとレオン、シオンがメルトと遊んでいた。
「メルトー!」
「ぷる!」
メルトは三メートルほどの身体をぷるぷる揺らしながら、三人の動きに合わせて形を変えている。トランポリンになったり、柔らかい壁になったり、時には巨大な滑り台になったりと、もはや災害級スライムというより万能遊具だった。
そこへ千乃がやってくる。
「楽しそうだね!」
「お姉ちゃん!」
クオンが手を振る。
「メルト、すごいよ!」
「ぷる!」
「今日は何してるの?」
「跳ねてる!」
「なるほど」
千乃は少し考えてから、ふと思いついたように手を上げた。
「じゃあ、これ入れてみようかな」
「何?」
真銀が尋ねる。
「ライトボール」
千乃の手のひらに、淡い光の球が浮かぶ。
魔法で作った小さな光球だ。普通なら周囲を照らすだけの簡単な魔法なのだが、千乃はメルトの前へ持っていくと、ふと思いついた。
「メルト、この中に入れてみる?」
「ぷる?」
「大丈夫。危なくないよ」
メルトが少しだけ近づく。
そして。
ぷるん。
身体の中に、ライトボールが入った。
「……」
「……」
「……」
最初は何も起こらなかった。
「?」
クオンが首を傾げる。
「失敗?」
レオンも覗き込む。
「ぷる……?」
メルト自身も不思議そうに揺れている。
ところが。
次の瞬間。
「……!」
メルトの身体が。
ぱっ。
青く光った。
「おお!」
シオンが声を上げる。
そして。
青。
紫。
緑。
黄色。
赤。
桃色。
白。
黒。
次々と色が変わっていく。
「すごい!」
クオンが目を輝かせる。
「メルト、色がいっぱい!」
「ぷる!」
メルトも楽しそうに身体を揺らす。
すると。
チカ。
チカチカ。
チカチカチカ。
チカチカチカチカ。
「……」
千乃。
「……」
真銀。
「……」
ライ。
「……」
アイシィ。
「……」
カミル。
全員が、だんだん無言になる。
なぜなら。
メルトの色の変化が。
明らかに速くなっていた。
青!
紫!
緑!
赤!
黄色!
水色!
桃色!
白!
紫!
青!
赤!
チカチカチカチカチカチカ。
「……」
ララが。
「メルト!」
「ぷる!」
「きれー!」
「ぷるぷる!」
「もっと!」
「ぷる!」
さらに光る。
チカチカチカチカ。
チカチカチカチカ。
「……」
ライが。
「……何だ、これ」
真銀。
「分からん」
アイシィ。
「少し眩しいですね……」
カミル。
「我の目にも少々刺激が強い」
千乃は。
「……」
じっとメルトを見る。
そして。
「……これ」
真銀。
「何だ?」
「ライトボール」
「うん」
「入れない方がよかった?」
「……」
「……」
「……たぶん」
「たぶん!?」
千乃が笑う。
しかしメルトは完全に楽しくなっていた。
「ぷるぷるぷるぷる!」
チカチカチカチカチカチカ!!
「うわぁぁぁぁぁ!?」
クオンが笑い出す。
「きれい!」
「レオン!」
「うん!」
「シオン!」
「うん!」
三人もメルトの周りを走り始める。
それに反応して、周囲の魔力まで変化する。
青。
紫。
赤。
緑。
桃。
白。
黄色。
そして。
チカチカチカチカチカチカチカ。
完全に中庭が、謎の光るスライムステージになった。
「メルト!」
千乃が笑いながら呼ぶ。
「ぷる!」
「楽しい?」
「ぷるぷる!」
「じゃあ、もう少しだけ!」
真銀が。
「千乃」
「なに?」
「それ、止める気あるのか?」
「……」
千乃。
「ない!」
「即答か」
ライがため息をつく。
「今日の中庭は諦めよう」
アイシィ。
「そうですね」
カミル。
「我も賛成だ」
ララは。
「もっと光らせよう!」
「ララまで!?」
そして。
メルトが。
ぷるん!
と大きく揺れた。
チカチカチカチカチカチカチカチカ!!
「わぁぁぁぁぁぁ!」
「きれー!」
「すごい!」
「ぷるぷる!」
中庭が。
光で埋め尽くされる。
その様子を見ながら、千乃は楽しそうに笑った。
「……メルト」
「ぷる?」
「ライトボール入れたら」
「ぷる」
「めちゃくちゃ面白いね」
「ぷる!」
こうして。
災害級スライム・メルトには、新たな遊び方が発見された。
――ライトボールを入れて、魔力を変化させると。
チカチカチカチカ。
ひたすら色が変わる。
なお。
その日の夜。
ライは真顔で言った。
「明日から中庭に」
「『メルトの光量制限』を作るべきだと思う」
千乃。
「えー」
ララ。
「反対!」
クオン。
「僕も!」
レオン。
「もっと見たい!」
シオン。
「綺麗だった!」
メルト。
「ぷるぷる!」
真銀。
「……」
アイシィ。
「……」
カミル。
「……」
三人とも。
「賛成する気がないな?」
千乃。
「だって」
にっこり。
「面白いから!」
その瞬間。
「ぷるっ!」
メルトがまた光り始めた。
チカチカチカチカチカチカ。
「始まったぁぁぁぁぁぁ!?」
ライの悲鳴が、中庭に響いた。




