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掃除機はどうかな!?

 翌日。


 千乃は、昨日からずっと気になっていた。


 メルトは洗濯物を洗える。乾燥もできる。しかも、頼んでもいないのに綺麗に畳んでくれる。災害級スライムという肩書きが完全に家事能力へ変換されている気がするが、便利なのだから仕方がない。


「……というわけで」


 千乃は中庭にメルトを連れてきていた。


「今日は掃除機になってもらいます!」


「ぷる?」


 メルトが首を傾げる。


 その横で、ライが嫌な予感しかしない顔をしていた。


「やめておけ」


「まだ何もしてないよ?」


「昨日もそう言っていた」


「昨日は成功したじゃん!」


「だから余計に危険なんだ」


 千乃は気にせず、床に落ちていた小さな葉っぱを指差した。


「メルト、この辺のゴミを吸ってみて!」


「ぷる!」


 メルトが元気よく返事をする。


 そして。


 身体の中央が、ぐにゃりとへこんだ。


「お?」


「ぷるるるるる……」


 風が起きる。


 葉っぱが。


 ふわっ。


「おお!」


 千乃の目が輝いた。


「いけるじゃん!」


 葉っぱがメルトへ吸い込まれていく。


「ぷるぷる!」


「すごい!」


 クオンも嬉しそうに近づく。


「メルト、掃除できる!」


「ぷる!」


 ところが。


 次の瞬間。


「……?」


 メルトの身体が。


 ぶるっ。


「……?」


 さらに。


 ぶるぶるぶるぶる。


「メルト?」


 そして。


「ぷるっ!!」


 ぼふぁっ!!


「うわあああああああ!?」


 吸い込んだはずの葉っぱが。


 全部。


 千乃たちへ向かって吹き飛んできた。


「げほっ!」


「うわっ!」


「葉っぱが!」


 ララが葉っぱまみれになりながら叫ぶ。


「メルト!」


「ぷる……」


 メルトが少し申し訳なさそうに縮む。


「……」


 千乃は。


 髪についた葉っぱを取った。


「……吸ったよね?」


「ぷる」


「そのあと吐いたよね?」


「ぷる……」


「掃除機じゃなくて」


「……」


「ブロワーになってない?」


「ぷる!」


 メルトは元気よく返事をした。


「認めた!?」


 ライがため息をつく。


「掃除機としては失敗だな」


「でも!」


 千乃はまだ諦めない。


「一回だけだよ!」


「もう一回やるのか」


「今度は弱く!」


「ぷる!」


 メルトが再び身体をへこませる。


「ぷるるる……」


 今度は弱い風。


 葉っぱが。


 ひらひら。


 と舞い上がる。


「お?」


 千乃が期待する。


 しかし。


 葉っぱはメルトへ入らず。


 千乃の頭へ。


「……」


「……」


「……」


 千乃の頭の上に。


 葉っぱが三枚。


 ちょこん。


「……」


 真銀が。


「似合ってる」


「そこ褒めるところ!?」


 ララが笑う。


「主、葉っぱ!」


「分かってるよ!」


 千乃は葉っぱを取りながら、メルトを見る。


「……掃除機は無理かぁ」


「ぷる……」


 メルトがしょんぼりする。


 するとクオンが。


「でも」


「ん?」


「メルト、洗濯はすごいよ」


 レオンも。


「服、ぴかぴか!」


 シオンも。


「畳むのも上手!」


「ぷる!」


 メルトの身体が嬉しそうに揺れる。


 アイシィも頷いた。


「洗濯機としては、非常に優秀です」


 ライが続ける。


「乾燥までできる」


 真銀。


「しかも畳める」


 ララ。


「ララの服も綺麗になった!」


 カミル。


「我の衣服も問題なく洗えた」


 千乃は。


「……」


 改めてメルトを見る。


「洗濯できる」


「ぷる」


「乾燥できる」


「ぷる」


「畳める」


「ぷる!」


「掃除機は……」


「……」


 メルトが目に見えてしょんぼりする。


 千乃は少し考えて。


「……いいや」


「ぷる?」


「掃除機は普通のやつ使えばいい」


「……!」


 メルトの身体が。


 ぱぁっと明るい色に変わった。


「メルトは」


 千乃が笑う。


「洗濯機として十分すごいよ」


「ぷるぷるぷる!」


 クオンが。


「よかったね、メルト!」


「ぷる!」


 レオン。


「洗濯!」


 シオン。


「乾燥!」


 ララ。


「畳む!」


 メルト。


「ぷる!」


 ライが呟く。


「……役割が完全に家電だな」


 真銀。


「災害級スライムなのにな」


 千乃。


「いいじゃん」


「便利だし」


「ぷる!」


 こうして。


 メルトの掃除機化計画は、わずか数分で終了した。


 吸い込んだゴミを盛大に吹き飛ばすという、掃除機としては致命的な結果だったが、洗濯、乾燥、そして畳むところまで一気にできる能力は誰もが認めるところだった。


 つまり。


「メルトは」


 千乃が。


「洗濯機で十分!」


「ぷるー!」


 メルトも満足そうに揺れる。


 そして、その日の午後から。


「メルトー! 洗濯物お願い!」


「ぷる!」


 城のあちこちから洗濯物が集まり始めた。


 災害級スライム。


 メルト。


 掃除機にはなれなかった。


 しかし洗濯機としては星氷神城で完全になくてはならない存在になっていた。


「……」


 ライが山積みの洗濯物を見る。


「これ、全部メルトに任せて大丈夫なのか?」


 千乃。


「大丈夫!」


「ぷる!」


 メルトが胸を張るようにぷるんと揺れた。


 次の瞬間。


 洗濯物が。


 ぽいぽいぽいぽいっ。


 全部メルトの中へ吸い込まれる。


「……」


 ライ。


「……」


 真銀。


「……」


 アイシィ。


「……」


 カミル。


「……」


 そして千乃。


「……やっぱり便利!」


「ぷる!」


 星氷神城の洗濯担当。


 災害級スライム・メルト。


 今日も元気に。


 ぷるぷるしていた。

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