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便利なメルトくん

 数日後。


 星氷神城《アストラルグレイシア》では、メルトの新しい使い道が発見されようとしていた。


 きっかけは、洗濯物だった。


「……多い」


 アイシィが洗濯籠を見下ろす。


「今日、こんなにありましたっけ?」


「昨日みんなで奈落行ったからじゃない?」


 千乃が答える。


「土で汚れた服とか、汗かいた服とか、いっぱいあるよ」


 ララが。


「ララのも!」


 どんっ。


 自分の服を籠へ入れる。


 ライが。


「雑に入れるな」


「洗えば同じ!」


「そういう問題じゃない」


 その横では、クオンやレオン、シオンの服もまとめられている。


 さらに。


「カイルさんの分もありますよ」


 柚乃が籠へ入れる。


「……」


 カイルが固まった。


「俺の服まである……」


「洗濯物だからね?」


「いや、なんか……」


「何?」


「柚乃が俺の服を……」


「はい?」


「……なんでもない」


 耳まで赤くなったカイルを見て、千乃は少しだけ笑った。


「はいはい、洗濯するよ」


 そして。


 洗濯場へ向かおうとした、その時だった。


「……」


 メルトが。


 のそのそ。


 と近づいてきた。


「ぷる?」


「メルト?」


「ぷるぷる」


 メルトが洗濯籠を見る。


 そして。


 洗濯物を見る。


 さらに。


 洗濯場を見る。


「……」


 千乃。


「どうしたの?」


「ぷる……」


 メルトが。


 少し考えるように。


 ぷるぷる。


 そして。


 突然。


「ぷるっ!」


 ぼよんっ。


 メルトの身体が。


 大きく膨らんだ。


「……?」


 次の瞬間。


 洗濯籠が。


 ふわっ。


「え?」


 千乃が目を丸くする。


 洗濯物が。


 全部。


 メルトの中へ。


 ぽいぽいぽいっ。


「ちょっと!?」


 ララ。


「メルトが服食べた!」


「食べてないよ!」


 メルトは。


 洗濯物を包み込んだまま。


「ぷるぷるぷるぷるぷるぷる……」


 ぐるぐる。


 ぐるぐる。


 中で。


 洗濯物が回り始めた。


「……」


 アイシィ。


「……」


 ライ。


「……」


 真銀。


「……」


 千乃。


「……」


 カイル。


「……」


 柚乃。


「……」


 そして。


「……洗濯機?」


 千乃が呟いた。


「ぷる!」


 メルトが元気よく返事をした。


「まさか」


 アイシィが。


 恐る恐る近づく。


「メルトさん」


「ぷる?」


「汚れを」


「落としているのですか?」


「ぷるぷる!」


 ぐるぐるぐるぐる。


 メルトの身体の中で、洗濯物が回転する。


 しかも。


 周囲の水分と魔力を絶妙に調整しているらしい。


「……」


 アイシィが。


 一枚の服を取り出した。


「……綺麗です」


「え?」


「汚れが」


「完全に落ちています」


 千乃。


「……」


「メルト」


「ぷる!」


「洗濯できるの?」


「ぷるぷる!」


「すごっ!」


 ララが飛び跳ねる。


「メルト、洗濯機!」


「ぷる!」


「名前変える?」


 千乃が冗談半分に言った。


「洗濯の神・メルトとか」


「ぷる」


「嫌?」


「ぷるぷる」


「じゃあ」


 千乃は少し考える。


「洗濯機メルト」


「ぷる!」


「気に入った!?」


 ライが呆れた顔をする。


「災害級スライムに付ける名前じゃないだろ」


「でも便利だよ?」


「便利だけど……」


 その時。


 カイルが。


「……俺の服も?」


「うん」


 柚乃。


「綺麗になりましたよ」


「……」


 カイル。


「……すごい」


「何?」


「俺の服」


「新品みたい」


 メルト。


「ぷる!」


 そして。


 クオンが。


「メルト」


「ぷる?」


「僕の服も?」


「ぷる!」


 クオンが洗濯物を一枚渡す。


 メルトが。


 ぽいっ。


 ぐるぐるぐる。


「……」


 クオンの耳が。


 ぴん。


「……すごい」


 レオンとシオンも。


「僕のも!」


「僕も!」


「ぷるぷる!」


 次々と洗濯物がメルトの中へ。


 ぐるぐる。


 ぐるぐる。


 ぐるぐる。


 千乃は。


 その光景を眺めながら。


「……」


「メルト」


「ぷる?」


「もしかして」


「うん」


「乾燥もできる?」


「……」


 メルトが。


 ぷるん。


 すると。


 中の水分が。


 ふわっ。


 と消えていく。


「……」


「乾いてる」


 アイシィ。


「乾いていますね」


「ええええええ!?」


 千乃が叫ぶ。


「洗濯から乾燥まで!?」


 メルト。


「ぷる!」


 ライ。


「……」


「こいつ」


「城の家事能力を」


「一気に底上げしてないか?」


 真銀。


「確かに」


 千乃。


「じゃあ」


「次」


「畳める?」


 メルト。


「……」


 ぷる。


 洗濯物が。


 ふわっ。


 空中へ浮かぶ。


 そして。


 ぱた。


 ぱたぱた。


 綺麗に。


 畳まれていく。


「…………」


 全員。


「…………」


 千乃。


「……」


「メルト」


「ぷる?」


「もう」


「家電いらないんじゃない?」


 ライが。


「待て」


「それは家電に対する重大な発言だぞ」


 ララ。


「メルト!」


「すごい!」


 クオン。


「メルト、便利!」


 レオン。


「洗濯!」


 シオン。


「乾燥!」


 メルト。


「ぷるぷる!」


 完全に。


 得意げだった。


 そして。


 その日の午後。


 星氷神城では。


「洗濯物ある人ー!」


「ぷる!」


「メルトに入れてー!」


「ぷるぷる!」


 という声が。


 城中に響くようになった。


 災害級スライム。


 メルト。


 その能力。


 色変化。


 硬さ自在。


 三メートル級。


 そして。


 新たに判明した能力。


 ――洗濯。


「……」


 真銀が。


 洗濯物を畳みながら。


「本当に」


「何でもできるな、こいつ」


「ぷる!」


 千乃が。


「次は何ができるか楽しみだね!」


 ライ。


「それ以上便利になると」


「本当に家電が全部いらなくなるぞ」


 千乃。


「じゃあ次は」


「掃除機?」


「ぷる?」


 メルトが。


 首を傾げた。


 千乃。


「……」


「試してみる?」


「ぷる!」


 ライ。


「待て」


 この日。


 星氷神城に新たな恐怖が静かに芽生えた。


 災害級スライム。


 メルト。


 次の用途は掃除機。


 果たして。


 城は。


 無事なのだろうか。

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