↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
208/259

災害級という名の危険トランポリン

 星氷神城《アストラルグレイシア》に、メルトがやってきてから数日。


 三メートル級の災害級スライムという、とんでもない存在を従魔にしたはずなのだが、城の中ではすっかり馴染んでいた。


 特に仲が良くなったのが、クオンとレオン、シオンの三人だ。


「メルトー!」


 中庭に、クオンの声が響く。


「ぷる!」


 メルトは嬉しそうに身体を揺らした。今日は三メートルの巨体のまま、庭の中央にどんと座り込んでいる。周囲の魔力を吸っているのか、身体は淡い水色から紫、そして少しだけ桃色へと変化していた。


「すごい!」


 レオンが目を輝かせる。


「色が変わった!」


「魔力で変わるんだって!」


 シオンもメルトの周りをぐるぐる回る。


「じゃあ、僕たちが近くにいたら何色になるかな?」


「やってみよう!」


「ぷる?」


 メルトが三人を見る。


 そして。


 ぷるん。


 少しだけ身体を低くした。


「……?」


 クオンが首を傾げる。


「メルト?」


「ぷるぷる!」


 次の瞬間だった。


 ぼよんっ!!


「え?」


 三人の身体が、一斉にメルトの身体へ吸い込まれた。


「わぁぁぁぁぁ!?」


「うわっ!」


「きゃっ!?」


 ずぶんっ。


 まるで巨大なゼリーに飛び込んだように、三人の姿がメルトの中へ消える。


「……」


 中庭。


 静寂。


 たまたま近くにいた千乃が。


「…………」


 固まった。


「メルト?」


「ぷる」


「今」


「三人」


「飲み込んだ?」


「ぷる!」


「元気よく肯定しないで!?」


 真銀も立ち上がる。


「クオンたちは大丈夫なのか?」


「たぶん……」


 千乃がメルトを見る。


 すると、半透明になった身体の中で。


 三人が。


「わぁー!」


「すごい!」


「ぷるぷるしてる!」


 普通に遊んでいた。


「……」


 真銀。


「……」


 千乃。


「……」


 ライ。


「……」


 アイシィ。


 そしてララだけが。


「いいなー!」


 とメルトに飛び込もうとしていた。


「ララ、待て!」


 ライが慌てて止める。


「なんで!?」


「お前まで入ったら、話がさらにややこしくなる」


「でも楽しそう!」


「そういう問題じゃない!」


 その間にも、メルトの中の三人は楽しそうだった。


「メルトー!」


「ぷる!」


「もっと動いて!」


「ぷるぷる!」


 ぶるんっ。


 メルトの身体が大きく揺れる。


「わぁぁぁ!」


「揺れる!」


「楽しい!」


「……」


 千乃が額を押さえる。


「これ、どういう遊びになってるの?」


 真銀が答える。


「俺にも分からない」


 そしてメルトは。


 ぷるん。


 と身体を縮めた。


「……?」


 クオンが。


「メルト?」


「ぷる!」


 次の瞬間。


「ぺっ」


「え?」


 三人が。


 まとめて吐き出された。


 ぽーんっ!


「わぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「飛んだぁぁぁぁ!」


「高いー!」


 空中へ放り出された三人は、そのまま落下していく。


「危ない!」


 千乃が慌てて手を伸ばす。


 だが。


 ぽよんっ!!


 三人が着地した場所は、メルトの身体だった。


 しかも、さっきまでの柔らかなスライムではない。


 メルトが身体を平らに広げ、絶妙な硬さに調整していた。


 ぽよん。


 ぽよん。


 ぽよーん。


「……」


 千乃。


「……トランポリン?」


「ぷる!」


 メルトが得意げに揺れる。


「おお!」


 レオンが跳ねる。


「もう一回!」


 ぽよんっ!


「わぁ!」


 シオンも続く。


「楽しい!」


 ぽよーん!


 クオンまで。


「わぁぁぁぁ!」


 見事に跳ね上がる。


「ぷるぷる!」


 メルトも楽しそうだ。


「……」


 千乃はしばらく眺めていたが。


「メルト」


「ぷる?」


「それ」


「もしかして」


「遊具になった?」


「ぷる!」


「返事した!」


 真銀が呆れたように笑う。


「災害級スライムなのに、やってることが完全に子供向け遊具だな」


「いいじゃん!」


 千乃も笑う。


「クオンたち、楽しそうだし!」


 その瞬間。


「主ー!」


 ララが叫んだ。


「私もやる!」


「待て」


 ライが即座に止める。


「今度はお前か」


「だって楽しそう!」


「お前は加減を知らないだろ」


「知ってる!」


「信用できない」


「ひどい!」


 するとメルトが。


「ぷる!」


 身体をさらに大きく広げた。


「……」


 ライが。


「まさか」


 ララが。


「行くよー!」


 ぴょーん!


「ララァァァァァァ!?」


 ぽよぉぉぉぉん!!


 ララがものすごい勢いで跳ね上がった。


「たっかーい!」


「お前は何してるんだ!」


「楽しい!」


 空中でくるくる回るララ。


 そして。


 ぽよんっ!


 再びメルトへ着地。


「もう一回!」


「やめろ!」


 ライが頭を抱える。


「この城にまた危険な遊具が増えた……」


 アイシィがメルトを見る。


「ですが」


「はい?」


「メルトさんは」


「かなり器用ですね」


 メルトは得意げに。


「ぷる!」


 その横で、クオンたちはまだ跳ねている。


「メルト!」


「もっと高く!」


「ぷる!」


 ぼよんっ!!


「わぁぁぁぁぁ!」


「クオン、飛びすぎ!」


「大丈夫!」


「本当に!?」


 千乃は笑いながらも、落下地点をしっかり確認している。


「メルト、ちゃんと受け止めてね!」


「ぷる!」


「よし!」


 そして。


 また三人が。


 ぽよーん。


 ぽよーん。


 ぽよーん。


 と跳ねる。


 中庭は、すっかり巨大スライム遊園地と化していた。


 カミルが少し離れた場所から、その光景を眺める。


「……災害級とは」


 ライが。


「何だ?」


「こういうものなのか?」


「違うと思う」


 真銀が即答した。


「たぶん」


 千乃が振り返る。


「たぶん多すぎない?」


「お前もだろ」


「……」


 千乃は少し考えて。


「まあ、楽しいからいいか!」


「その結論でいいのか……」


 メルトは今日も。


「ぷるぷる!」


 と楽しそうに身体を揺らしていた。


 災害級。


 硬さ自由自在。


 魔力で色まで変化する、とんでもないスライム。


 そんなメルトの新しい能力。


 それは。


 ――子供たち専用、超巨大トランポリン。


「メルトー!」


「ぷる!」


「もう一回!」


「ぷるぷる!」


 そして。


 千乃の中庭に。


 また一つ。


 規格外の日常が増えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。